ディストピアたこ焼き

馬西ハジメ

第1話

「ほら、見てみ。満点の星空やで。」


ウチは宇宙ではじめてのトモダチと一緒に幾億もの煌めきを見上げていた。


「な、キレイやろ。」



この子から見て、いまのウチがどう映ってんのかはわからん。けどちょっとはお姉さんっぽくなってたらいいなっておもう。


「&@◎▽●※&▲!?」


「ははっ。全然なにゆーてんのかわからへんわ。」


真っ赤な顔してまだなんかぐちゃぐちゃ言ってる。やかましいなって少しおもったけど、またすぐに頭上の星空に心を奪われた。


「これな、ぜーんぶ“偽物”やねんで!」



得意気な調子でわざと明るく言ってみた。けれどもウチの声はどこにも届かず、母艦の暗闇に飲み込まれていった。ドーム球場のように広い母艦のなか。ウチは丁度その真ん中で膝を抱えている。隣のトモダチくんはさっき黙らした。おりこうさんや。


ウチが背中を委ねているのはキノコみたいな大きな装置。これはウチが地球から持ってきたお土産のひとつや。この装置から放射状に光が放たれ、母艦は満点の星空を宿したのだ。



「プラネタリウムっていうねんで。」



訊かれてもないのに、ウチはまた口を開いてしまう。


「…大好きやってん。」



それはウチがまだ地球人日本町大阪番地に住んでた頃のはなしや。地球、海と大地と生命の星。ウチの人差し指と親指に摘ままれた空間のどこかにそれはあったのだ。


「アンタの星はどこにあんの?」


隣のトモダチくんにおもむろに訊ねた。八本の手がニョロニョロとグロい感じに北北東を指した。


「そっか。」


ウチは片目を閉じて人差し指と親指の間に出来た僅な空間に目を凝らす。


「ウチな、」





またおしゃべりな口がいらんことを言い出す。







「ウチな滅ぼしたってん、地球。」

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