パーシヴァル
俺は例の魔法陣のところにいる。
毎日一回の無料ガチャを引くためだ。
もちろんヘスも一緒だ。
昨日、一緒に寝てから無性にヘスのことを意識してしまう。
今も、ヘスの方を見つめてしまっていた。
こんなのでは、主神失格だな。
「では、ヒロ様。合言葉をお願いします。」
そうか。
そうだった。
では3度目のガチャいきます。
「Liberation〈リザレイション〉」
頭上に魔法陣が現れる。
どうかいいのが出てくれ!
俺は祈る。
しかし、俺の願いは虚しく…
魔法陣は無色のまま回転を始め、吸収されてしまった。
ちょっとまてよ…。
無色のまま吸収されたってことは…。
やはりそうか。
俺は、手に入れたスキルをみて落胆する。
『レアリティ☆0
スキル名 幸運[ガチャ]
効果 ガチャの時の運がほんの少しだけ上昇。』
ダブった。
どういう確率だよ。コレ。
しかも、ハズレがダブルとか…。
俺には、ガチャ運はないのかもしれない。
ヘスが口を開いた。
「ヒロ様は運がないわけではありません。なぜならこちらのスキルも、一兆分の一の確率でしか、当たらないからです。」
聞いたことがあるセリフだな。
なんか、腹がたつ。
俺の、今日の一つ目の予定は散々だった。
では、次の予定に期待だ。
二つ目の予定は、クララとグランの冒険者ギルドへの登録だ。
その為に二人を家まで迎えに行く。
ギルドまでの道中でクララに聞いた話によると、冒険者ギルドで登録するためには、ギルドカードを作る必要があり、そのためには、銀貨が一枚必要となるため、ギルドカードを持っている人は思っているよりも少数らしい。
ギルドについた俺たちは、アイリーンさんの方へ向かった。
俺を見て、アイリーンさんの顔が輝いたように見えたが、おそらく気のせいだろう。
俺は、即座に銀貨二枚払った。
「では、誰からやる?」
アイリーンさんが、優しく尋ねる。
「じゃあ、僕から。」
そう言いつつ、グランの視線はギルドカードではなく、アイリーンさんの方へ向いている。
この、変態め。
グランが、アイリーンさんにくっつかないように、見張っておこう。
グランの登録が始まる。
カードが明滅し虹色の光を放つ。
そして、グランのギルドカードはやはり白色だった。
「レベル1 グラン
HP1900 ATK 2400 MP1400」
************************
グランのステータスは獣人ということもあり、人族のレベル1より高いらしい。
特にATKは高いので、遊撃的なポジションもいいかもな。
「じゃあ、次私がやります。」
クララがカードに手をかざす。
カードが明滅し虹色の光を放つ。
白色のギルドカードにステータスが表示された。
「レベル1 クララ
HP1700 ATK1600 MP2600」
うん。
クララは、魔法特化型のようだ。
たくさん魔法を覚えてもらって、魔法少女クララを目指してもらおう。
「そういえば、今日ギルド主催で初心者向けの魔法講座を開催しております。よかったらご参加下さい。」
ナイスタイミングだ。
アイリーンさん。
グッ
君のその笑顔に惚れてしまいそうだぜ。
おっと、そんな馬鹿なこと言ってないで詳しく書かないと。
「アイリー…」
「それって、どこで何時頃やっているんですか?」
クララに先を越されてしまった。
もしかして、自分のステータスを見て早く魔法を覚えたくなったのだろうか。
「午後1時頃から、このギルドの裏で開催予定です。ちなみに、参加費は無料です。冒険者さんたちの生還率が上がれば、ギルドとしても嬉しいので。」
「ありがとうございます。」
クララがハキハキ返事をする。
やっぱり、若い子の返事はいいね。
「クララ、行きたいのかい?」
「はい。早く魔法を覚えて、ヒロさんのお役に立ちたいので。」
…。
なんて素直でいい子なんだ。
あと数年年齢が上だったら、惚れているかもしれない。
「じゃあ、行くか。俺も魔法は覚えたいし。」
そういえば、ヘスは魔法を使えるんだよな…。
「ヘス。魔法を教えることはできるかい?」
「はい。もちろんです。魔法を発動するときは、
体の中の気力の流れをぎゅうーっとまとめてポンって感じです。」
うん。
魔法は発動してヘスの指先から光が出ているが、説明がよくわからない。
まさか、ヘスがマンガによくいる感覚系の人だったとは…。
ていうか、ギルド内の視線が集まってるような…。
「む、無詠唱…!」
グランだ。
「おい、姉ちゃん。無詠唱ってマジかよ。」
「確か、昨日冒険者になったばっかだよな。今まで何の仕事してたんだよ。」
周りの冒険者たちが、口々に聞いてくる。
でも、まさか神の眷属ですとはいえないし…。
「その話は、また今度お願いしまーす。」
アイリーンさんだ。
「ついてきて。」
アイリーンさんが、俺たちにしか聞こえないくらいの声でささやき、ギルドの端の方にある扉に向かって行く。
俺たちが、アイリーンさんに続いてギルドの奥の通路を通り、ある扉をくぐると、応接室的な部屋があった。
「ちょっと待ってね。」
アイリーンさんがそう言ってさらに奥にある扉に入っていった。
グランとクララは何が起こっているのか飲み込めず、うろたえている。
ヘスは、いつも通り微動だにもしない。
俺は、というとニヤニヤがとまらない。
だってこれ、あのギルド長との対面っていう、定番イベントでしょ!!
************************
扉が再び開いた。
そして、そこからアイリーンさんに続いて入ってきたのはまだ20代のような男だった。
へ?ギルド長との対面じゃなかったの?
あの若僧だれ?
俺は、がっかりしてしまった。
相手にも、落胆したのが伝わってしまいそうなほどだ。
「こちらが、パーシヴァル様です。」
「うむ。アイリーンの紹介の通り、私はパーシヴァルだ。このギルドの支部長を務めている。」
見かけによらず、威厳のある喋り方だ。
てか、こいつがギルド長⁉︎
「それで、ギルド長様がこんな新米冒険者に何の用ですか?」
「うむ。その前にこの喋り方を辞めてもいいだろうか?疲れてしまったよ。」
どういうことだ?
「君たちをここに読んだのは、そこの君。確かヘスペリスだったっけ…?君とそして君ヒロ君たちに言っておかなければならないことがあるからなんだ。」
いきなり砕けた喋り方だ。
威厳がなくなったが、まぁいいだろう。
やはり、定番イベントだったようだしね。
「これは、ギルドカードの裏に書いてあるんだけど、ギルドはこの国の軍の役割も担っていて、冒険者たちはこのシュテルクスト王国を守るために戦わなくてはならないんだ。でも、他国を攻撃とかはしなくていいからね。そっちは、王直属の聖騎士たちが行うから。」
なるほど、ここは普通のラノベなどとは違うな。
だけど、冒険者を統率できるのかな?
「ちなみに、僕はギルド長という役割もあるけれど十二人の騎士シュテルクスト・フォンの第八席・アハトなんだ。ほかの十一人のうち八人が他のギルド支部の支部長をしていて、一人が王都にあるギルド本部の本部長、そして、残りの二人が聖騎士たちを統率しているよ。」
ふーん。こいつ強いんだ。
「しかし、いくら僕でも荒くれ者の多い冒険者たちをまとめられないと最近思い始めて、誰か冒険者たちをまとめ上げられるような強さを持った奴がいないかと探していたんだ。そこに現れたのが君たちだった。僕の、臣下になって共にギルドの冒険者たちをまとめて欲しい。ちなみに、十二人の騎士の臣下は下級貴族くらいの待遇は受けられるよ。あと、十二人の騎士は二人しか生涯臣下を取れないから、臣下になることは非常に名誉なことなんだ。」
まぁ、適当に生きていこうと思ってたからちょうどいいくらいの位だな。
「しかし、パーシヴァル様。私たちのようなどこの誰かもわからない赤の他人を臣下にするのはどうかと…。さらに私はレベルも1ですし。」
あとでやめとけばよかったとか言われたくないしね。
「それは、大丈夫だよ。君たちが悪い奴らではないことは、アイリーンの真実の瞳トゥルー・アイでわかっているんだ。あと、レベル1でも、素晴らしいステータスなのだからいいじゃないか。いつか僕も追い抜かされるかもしれないね。」
へぇー。アイリーンさんそんなスキル持ってたんだ。俺も欲しいな。
「なるほど、それならばいいのですが…。あと、臣下になるのは良いのですが、その後他の街を見て回ることは可能でしょうか?」
「うーん。まぁ2、3年くらいならいいよ。その代わり他国に不審な動きがあったら、すぐに戻ってきてね。」
適当だな。
臣下ってそんな自由でいいんだ。
「なるほど。じゃあ、喜んでお受けします。ヘスはどうする?」
「ヒロ様がお受けするなら異論はありません。」
「よかった〜。じゃあこの聖剣ガルーンに手をかざしてね。あと、俺が問いかけたら誓いますって言ってね?」
俺たち二人は手をかざす。
そして、続いてパーシヴァルが手をかざし。
「ヒロ。そしてヘスペリス。この者らは、我パーシヴァルの臣下として生きていくこととする。汝らはそれに偽りがないことを誓うか?」
「「誓います」」
俺ら二人がそう言うと、聖剣が蒼く光った。
異世界と魔法のガチャ〜ランプじゃなくてガチャを回すと魔人じゃなくて眷属が出てきました〜 OSSU @hikkun01
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