歯車が狂ったのはいつなのだろうか。
幼くして両親を亡くした少女の頼りは、四つ上の兄ただひとり。
彼は彼女と自分の食料を調達せねばならなかった。
12歳の彼にとって、それはまさに地獄そのものだったのだろう。
神経を擦り減らす過酷な状況のなか、必死にもがいて生きていた彼が、空腹で喚く彼女に怒りを表したのは、仕方のないことなのかもしれない。
このことが契機となって、兄妹の仲は徐々に、しかし確実に悪化していった。
果てに、憎しみ、殺しあうまでに。
文章で、物語の暗さが良く表されている。
なぜ殺しあう羽目になってしまったのか、そこまでの過程に浸かりながら話を読んでみると良いのかもしれない。
時折差し込まれる過去の描写がなんとも居た堪れない。
気になった方は是非読んでみて欲しい。
独白という形で語られる、一人の女魔道士の物語です。幼い頃より兄から虐待を受けて育ったチェントは、ずっと兄に怯え、自ら考えることも放棄して生きてきました。しかしある日、敵国にさらわれた彼女の運命は大きく変わっていきます。
ようやく手にした力と居場所、そして誰かを愛するという気持ち。しかし、兄への憎悪の上に成り立つそれは、兄の呪縛から逃れることも出来ず、やがて復讐という形に変わっていきます。
主人公の独白は、事実を淡々と語るだけで、そこに言い訳めいたものはありません。だからこそ、彼女の歪んでしまった人生が深く読者に突き刺さってくる物語です。