欠伸

安良巻祐介

 

 人気のない、寂れた神社で、取っ手の取れかけた託宣機を見つけて、何となくクルリと回してみると、金も入れていないのに御神籤が出た。

 運試しという柄でもないが、と心中で苦笑しつつ、黄ばんで皺の寄った八千代紙を解くと、そこには吉も凶も書かれておらず、ぽつりとただ一つ、拙い字で「忘」とだけ。

 自分一人の静寂の中、枯れ葉の積もった手水場、蜘蛛の巣の張った社殿、戸の間から見える倒れた祭壇などを見やって、ふと何か恐ろしくなり、足早に社を後にした。

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欠伸 安良巻祐介 @aramaki88

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