短編なのでネタバレにならない程度に、ホラー好きな方もですが、普段ホラーを読まない方にも受け入れやすいテーマとストーリーだと思います。最後に何を思うかは人それぞれですが、ジワジワと恐ろしさというか、やるせなさというか、モヤモヤ感がまとわりついて離れなくなってきます。
いじめを苦に命を絶った親友は、主人公に頼み事を残していった。「私は対価を支払った、あなたが受け取りに行ってほしい」彼女の最後の願いを叶えるため、主人公は森に潜む魔女のもとへ赴く。魔女から受け取った「対価」が明らかになるとき、親友の真意が顔を覗かせる……。人間の暗い情念に引き込まれるかのよう。ホラー短編の秀作です。親しい者が苦しんでいるとき、何を為すべきかを考えさせられます。
親友を救えなかったすべての人を憎む少女は、深き森に住む「魔女」に親友の願いを受け取りに行く。 ――親友の願いとは?少女は自分が「魔女」から受け取った願いが何なのか、そのときは何も知らなかったのだ……。
ストーリーは作品情報通り、いなくなってしまった親友からの手紙に従い、主人公の女の子が指定された場所に向かい、そこにいた魔女から、親友が託してきた「あるもの」を受け取ります。しかし、それを受け取ったことで、思わぬ事態が起こります。そして、ある疑問が頭をよぎります。「何故」親友が「あなた」に託したのか、その後の魔女が言った言葉をしっかり読み解き、「真の真相」である親友の真意に気づいた時、この作品が表現する本当の恐怖が分かります。お見事です!
ジメッとした森から始まる陰鬱な不安感。親友を喪った主人公の心情と重なり、読み手の心にもじわじわと滲んできます。無駄のない文章が紡ぎ出す極上のホラー。傑作です。