第15話 おっさん多すぎ問題

 蛇愚地山羊人(じゃぐちやぎと)は地図を拡げ、まだ見ぬ世界に思いを馳せる。

 ヤギトは道の駅でノムラ峠のパンフレットを回収した。

「あれっお客さんもしかしてノムラ峠とか行っちゃう系っすか」

 声をかけて来たのはレジバイトの兄ちゃんだった。

「そうさ、あの峠を越えてナントカって街に行くのさ」

「あ~それはヤバイっすね、マジで。お客さん達ガイドとかいない的な?」

「ガイドって?スマホとかあるし俺」

 圏外。

「あっ駄目か」

「なんかここの峠ってマジでヤバイらしいんすよ。だからガイドを連れていくって決まってるみたいな」

「ほう、それはすげぇな」

 とりあえず峠がヤバイらしい。

「じゃあちょっとガイドの人呼んで来るんで、ちょっと店の前で待っててくださいね」

 と言い残してレジバイトの兄ちゃんは去って行った。



 ヤギトとオカキは店の前で相撲の練習をしていた。そこに通りかかったのは中高年の男。首元から背中へ矢が貫通していることから、この男が歴戦の猛者だとわかる。

 その男が鋭い目でヤギトを捉え

「君ィ、好きなソフトクリームは」

「醤油味かな」

 どうもその問いが合言葉だったようで。

「君達が依頼人だったか。私が案内人のイガメンヂだ。さっそく行こうではないか」

「おう、よろしくだぜ」



 さて、その五分後。道の駅の前にいたのは謎の二人組。

 一人は身なりとガタイのいい紳士。両手に持っているソフトクリームが美味しそうだ。

 そして、もう一人は金持ってそうなブロンドのお嬢様的な人、ソフィア・T・なんとかだ。

 どうも二人は仲間だったようだ。

「まったく、お嬢の買い物は長すぎですぜ」

「ごらんなさい、妖精の剣が売っていましたわ」

 とソフィアは嬉しそうに、観光地とかで売ってるドラゴンとかのついた剣のキーホルダーを見せた。

「今回の任務が終わったら、俺はお嬢の教育係を降りますぜ」


 そんな何気ない会話をしていた二人の元に、レジバイトの兄ちゃんが探検家的な格好のおじさんをつれて来た。

「やぁ僕がネイチャーガイドのおじさんだ。バイト君、この二人でよかったんだよね?」

「あっそっすね(多分)」

「じゃあ早速出発しようか」

 ヤギト達が出発した五分後。この謎多き三人も峠へ向けて歩み出したのだった。

 さあ、楽しいネイチャーツアーの始まりだ。

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伝統的フリースタイルファンタジー コウベヤ @KOBEYA

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