終章 ここまでを原点とするならばこの先は

Ex.胎動

それは暗闇から目を覚ました。


数刻ほど前に感じた、人が持つにはあまりにも多い魔力の量を思い出し、微睡みの中から覚醒する。


混じりあった魔力から一際強く香りを放つ、まだ染まりきっていない魔力。


遥か昔、世界の始まりを思い出すと懐かしさに目を細める。


四散した魔力は地へと落ち、龍脈を伝い流れ込んだ魔力からそれは世界の情報を読み取った。


(──甘美な魔力と共に、臭い魔力も流れてきおったか……)


気が付けば辺りは暗闇から、赤い光と熱に包まれていた。

原因は一つ。自分が目覚めたからだ。


もし人がその場に居れば既に灰すらも残らない程の熱を心地良さそうに欠伸をして見せる。


そして、咆哮を上げる。


『──────────!!!!!』


人に感じ取ることすら不可能なその声は大地を、空を震わせながら確かに、各地に眠る同胞に届く。


(さて……勇者は、ここまで来れるかの?)



マグマの中から紅い瞳を輝かせ、静かに待つ。






────それから数日後、世界のとある海域で巨大な渦潮が現れ。


広大な砂漠の何処かに全てを飲み込む流砂が生まれ。


神に最も近いとされる浮遊都市に稲妻が絶えず降り注ぎ。




そして、とある山が噴火した。

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始まりの勇者/序 紅葉 @krehadoll

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