くるくる
ママンが死んだ。
感情にはいつも躊躇いがあって、これが悲しいかどうかも確かじゃないから、温水プールに行ってクロールしてみたけれど別に楽しくなかった。その日はずっと雨だった。
あなたは世界の色を知っていますか。私は知りません。わかったら教えてください。あなたは愛の形を知っていますか。私は知りません。言葉の意味すらわかりません。もしかしたら先日鼻をかんでくずかごに捨てたアレが愛だったのかもしれませんね。ちり紙とか呼ばれていましたがひょっとして愛だったのかもしれませんね。
夏がくる。太陽が眩しすぎるからうっかり誰か殺してしまいそうだ。
人を殺すくらいなら死にたい。そう願う私の手は真っ赤で、それでもどうか潔白でありたい。他人を消費するのも、自分も消費するのも、もう嫌なんです。何もわからなくたって、それくらいわかります。
ねえ、どうかこの真っ赤な手をひいてくれませんか。青空の下、どこまでも駆けていけたらいいのに。
きっとそれが私の幸福なんだけれど、ママンが死んでも世界が回るように、私が死んでもあなたの赤い手があなたの幸福を握れていますように。
失った人生の細片を指おり数える ささやか @sasayaka
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