俺達の証明
くそが。お前が今飲んでいるコカ・コーラは美しく透明に黒。ああ、そうだな。さぞかしうまいんだろうな。
マクドナルドのハンバーガーよりもチープな人生を生きている。大衆性の一言では片づけられない複雑さが、連なって連なって、タータンのように織り成してほしいとか思っている。
俺達が死にたいと願いながら座っている椅子は、未来あふれる誰かが希ったものだって知っているけど、だからなンだってんだよ。ああ、死にてえなあ。ラーメンでも食いてえなあ。人間の価値競争をおっぱじめるなら、俺はもう失格でいい。
別に自分がまともだとか立派だとか価値があるとかそんなこと思っちゃいないけど、俺は俺でしかないから、どんなに嫌ってもどんなに駄目でもそれしかないから、自分を消費しちゃいけないと、それだけを自分に言い聞かせて、人間あふれる店をぬけだす。
まるでお遊戯の発表会のように誰もが人生を証明したがっている。俺だって例外じゃなくて。でも。きらびやかな青春だけが人生の証明だけじゃない。通り魔に颯爽と立ちはだかることだけが人生の証明じゃない。三十歳までに結婚して子供を作ることだけが人生の証明じゃない。そう信じて繁華街をぬけるための裏道をどこまでも歩いて、だけどずっとひとりだったよ。
曇天の昼下がり、児童公園を通り過ぎるとき、ベンチに座るホームレスが手をあげたんだ。俺は笑って手を振り返した。
これが証明なんだって、俺達、きっとそう感じたんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます