誰かを好きになる瞬間って、いつなのでしょうか?
高校時代、グラウンドでピッチングをするソフトボール部の先輩に、強い憧れを抱く野球部の主人公。強くて格好良い先輩を目で追うようになっていくのですが、そんな先輩が泣いている所を見て。話すようになって、気が付けば好きになっていて……
これが今作の流れなのですが、読んでいて非常に引き込まれました。興味、憧れ、恋と、次第に先輩への想いが強くなっていく様がとても綺麗で、これぞ青春って感じの恋愛劇となっています。
途中辛い事や思い悩むシーンなんかもありますけど、それも青春の一ページ。全部が掛け替えの無い思い出になって、未来へ繋がっていくって思える、そんなキラキラとしたお話でした。
特に最後の一文、アレは心に響きます。
この作品を拝読して、いちばんに評価したいと思ったのは二人が出逢うシーンです。
ボーイミーツガール、なんてジャンルの表現にもある通り、この類の物語においてはヒロインと主人公が出逢うシーンがクライマックスと同じくらいに重要で、読者の心を強く惹きつける部分だと思います。
物語の構成や設定は王道とも言えるものですが、何よりも出逢いのシーンの素晴らしさがこの作品の魅力を確固たるものにしています。
「でも、実際の先輩の眼差しは、予想外に頼りなく、僕の心の真ん中をさざめかした」
特にこの精緻で胸を打つような一文によって、主人公のヒロインに対する想いが固まるまでの流れがスムーズに描けている。そんな部分に感服しました。
素晴らしい小説でした、次回作も楽しみにしております。