第127話 かしまし娘たち
「なんだ? それ。師匠からなんか言われてたわけじゃないのかよ?」
楽し気に揶揄ってくるモニカにニーナも合わせた。
「一瞬、確証があるのかと思ったのですが」
二人とも楽しそうな顔でオルレオを見つめている。それを真正面から受け止めたオルレオはそれでも自信満々に言い切った。
「あの人、ダメなときはダメって言う人だからね。それが言われてないってことはそう言うことなんだ」
師匠の態度こそが証拠なのだと胸を張るオルレオを見て、モニカとニーナは少しだけ面白くなかった。
「ふ~ん」
「ほぅ」
二人のちょっといじけた様な呟きに、何か悪いことしたかとオルレオが首を捻ったところで。
「オルレオ~!!」
「オルレオく~ん!!」
そこにオルレオを呼ぶ声が二つ重なった。
「エリー! イオネも!」
オルレオが振り返ったところに二人が駆けて近づいて来た。
「やっぱり来てたのねオルレオ」
「さっすがはオルレオ君。もうギルドに認められちゃったか~」
「いや、俺のは実力ってわけじゃないよ。まだ四等級だし」
ほら、と言いながらオルレオは首にぶら下げた冒険者徽章を取り出した。そこにあるのは鉄でできたものが二枚だけ。
「俺がココにいるのはパーティーメンバーのおかげだよ」
オルレオが話をモニカとニーナの方に振ると、女性陣が顔を突き合わせる形になった。
「今、一緒にパーティーを組んでるモニカとニーナ。こっちはお世話になってる錬金術師のエリーと、鍛冶師のイオネ」
それぞれに名前を伝えたところで、エリーとイオネがギョッとした顔をした。
「……え? もしかして領主さまの娘さん?」
「確か、三等級への最速記録保持者だったよ~な?」
「そ、今はオルレオと組んでる」
「よろしくおねがいしますね」
ニーナが会釈をするとエリーとイオネが慌てて一礼した。完全に出遅れたモニカがちょこっとだけ目礼を投げた。
「そういえば、二人はなんでここに?」
「え? ああ、私もイオネもそれぞれのギルドからここに応援として派遣されてきたのよ。ここではとにかく錬金術の素材を下準備しているわ」
「私は延々と矢じりを作り続けてる~」
「で、ちょうど休憩時間が一緒だったから二人でお話してたら、見たことあるデカいのがいるなって気が付いて」
「ちょうどいいから声をかけたってところ」
「なるほど」
本当に色んな人がウルカ村にいるんだな、と改めてオルレオは思い直した。それと同時に自分たちは本当に色んな人に支えられて戦うことが出来るんだ、と実感を新たにする。
「へぇ~。ってことは、二人とも若いのに実力が認められてんだな!」
横で話を聞いていたモニカが感心したように笑った。
「え!? いや、私なんてまだまだで……」
「そうそう、まだまだ学ぶことの方が多いようなもんだし……」
「それでも、こうして最前線で経験を積ませてもらえることが出来るほどの実力があるということですよね? 十分に誇っていいものだと」
謙遜する二人をニーナも褒めちぎった。
「ニーナの言うとおりだぜ。職人としての知識と技術がしっかりしてて、こういった荒れた現場で足手まといにならないから呼び集められてんだろ? すげーよ!」
ニカッとした笑顔でモニカがそう言うと、エリーとイオネは照れてモジモジとしていた。
「しっかし、そんな若手の有望株がなんでオルレオと……」
「ああそれは、オルレオがレガーノに来た日に……」
「私は、次の日だったなぁ。いつも手伝いしている宿に……」
「ほう! 三人で冒険にも行ったんですか? ちなみにどのような……」
そこからは、オルレオをそっちのけで女性四人だけで随分と楽しそうに話が弾んでいた。オルレオも傍に、というか隣にいたのだけれど相槌を挟むぐらいでしか会話に入れなかった。
というか、エネルギーと勢いが違う。トントン拍子に話は進み、時に脱線し、かと思えば急に本筋に戻るその話の流れにオルレオは全くついていけなかったのだ。
結局、半刻(約一時間)を過ぎるほどに続きに続いた会話を終わらせたのは、鐘の音だった。
「え!? もう休憩終わり!?」
「早すぎる~!! もっと話したいことあったのに!」
あれだけ長話していてまだ!! とオルレオは驚いたが、それを口に出すことはしなかった。
「なに驚いてんだよ? オルレオ」
が、顔に出ていた。モニカが随分と怪訝な目でオルレオを見つめている。
「それでは、また夜に」
「うん。また」
「後でね」
「おう!」
夕食にもう一度会う約束を取り付けて、エリーとイオネはそれぞれの作業に戻っていった。
「いや~、楽しい時間ってホントあっという間だな」
「ですね。しかし、オルレオ。あんなにいい友人がいたならもっと早く紹介してくれればよかったのに」
「それな。“妖精の釜”にも“鐵の鎚”にも行ってみたいしよ!」
二人とも楽しかった会話の影響かちょっとテンション高めだ。
「まあ、魔獣討伐が終わったあとでの楽しみってことで……」
対して、オルレオの方はちょっと疲れたようにそう声をふり絞った。
「お! 良いなそれ!」
「色々買いそろえたり、新しい装備とかも見てみたいですしね」
二人して楽し気に予定を話しているのを見て、オルレオはフッと気が付いた。
(あれ、もしかして、俺も一緒に行かなきゃいけないのか?)
ほんのわずかな間、想像した未来の光景は、騒がしい中なのになぜかほんの少しだけ寂しさを感じるもので、オルレオはどうしたものかと苦々しく口元を歪めた。
アンブレイカブル!! 不破 雷堂 @fuwafuwaraidou
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