アイディアスケッチ
家郎
オレキャライダーVSオリキャライダー
海辺の公園。珍しく人がほとんどいないのは、不穏な風が吹くのを察知したからだろうか。
「これで最後の1人、ですね」
少女の声。その視線の先には、白と水色の――そう、クレヨンの絵を2次元化し、3次元に落とし込んだような――別の少女がいる。
「かばん、だったかしらね。残念だけど、あなたには消えてもらわなくっちゃ」
「オレさん、あなたは流行りすぎたんです。僕には生き残って平和になる権利がある」
2人の腰にはそれぞれ違ったベルトがある。かばんのものは細い何かを2つ刺せるように、オレのものはカードを上から刺せるように、特殊な形状をしている。
オレはふっと微笑み、懐のケースからカードを1枚取り出した。
「オレもそう思います……! 生き残る権利は誰にでもある。もちろん、オレにもね」
一呼吸置き、そして。
「変身!」
取り出したカードをベルト上部から刺し込む。ベルト前面にオーラが広がる。
『カメラ!』
オレの背後に巨大な一眼レフカメラが現れ、シャッターが切られた。オレを激しい光が包む。
光が引いた時、オレの姿は変わっていた。胸には大きなレンズ、左手首にはダイヤル。全身が闇のごとき黒に包まれるその姿は、「オレキャライダー」である。
「あなた、ごめんね。これが『宿命』だから……」
「分かってますよ、オレさん。こっちもやらせてもらいます」
ベルトの周りには「雑賀メモリ」が沢山刺さっている。左右からかばんは1つずつ抜き、ベルトに差し込む。
「変身……!」
『≪A≫
『≪M≫
可視のオーラがかばんを包み込む。オーラはかばんの元に収束し、周りを取り囲うように変形していき、やがて新星のように輝くスーツとなった。首周りには無造作に千切られたような包帯が巻かれ、吹き荒れる風を思わせる。彼女の変身したライダーこそ、「オリキャライダー」だ。
かばんは全速力でオレのもとに向かい走る。しかしオレは微動だにせずに待ち構えている。かばんは疑問に思ったが無視し、突き進んでいく。その時。
オレが、手首のダイヤルを回した。
『ピンボケ!』
オレのベルトが音声を発す。
……次第にかばんの視界がぼやけていく。像は2重に結ばれ、目に映るもの皆がまともな形に見えない。
視界が戻った時、オレはもうかばんの向かった先にはいなかった。くすくすと笑うオレ。
「フフッ、これが『カメラ』の能力。ダイヤルに合った力を現し、あなたはそれにただ踊らされるだけ」
そしてオレはカードを抜き、また異なるカードを刺し込んだ。
『シザース!』
紙がオレの周囲を囲う。するとどこからともなく現れた鋏が紙を切り裂き、真紅と金属的光沢が形作るフォームに変身したオレが姿を現した。
「そういうことだから。じゃ、さよなら……!」脚部に格納されていた刃を飛び出させ、オレはかばんに襲い掛かった。
――だがかばんはそこまで馬鹿ではない。左手をオレの方に突き出し、「
常人であれば失明しかねないレベルの光とともに、オレが吹き飛んだ。その隙を見て、かばんは雑賀メモリを取り換える。
「≪M≫モスコミュール」、「≪K≫
『≪U≫
『≪K≫
黒々とした水に覆われるかばん。その水がはけたとき、そこにはこれまでの明るい姿の対極に位置するかのような、黒光りした姿があった。サメを想起させる力強い大顎が両腕についている。
「もう……終わりにしましょう」
≪U/K≫の最大の特徴、それは驚異的な身体能力である。スピード、ジャンプ力、そして何より攻撃力。
オレの手から飛び出す刃にも引けを取らない鋭い牙。その根源たる強靭な顎が刃に喰らい付き、そして鈍い音と同時にへし折った。痛みにうめくオレ。すかさずかばんは攻勢を続ける。一旦退くと、
『≪R≫
『≪A≫
かばんがスチームに覆われる。オレからは姿もよく見えないその中から、火のついた細い筒――タバコ、に見えなくもない――がオレのもとに飛んできた。しかも10数本。当然その全てをかわせるはずもなく、狼狽えるオレ。間もなくかばん本人が走って来て、右頬に超高温の拳を見舞った。オレの体が、拳から伸びた炎に包まれる。
倒れ込んだオレの顔の周りに、先の筒が突き刺さる。かばんが哀れみの目でこちらを見つめていた。
「本当ならこんなこと、したくないんです。でも、でもっ、『宿命』だから……! さようなら、オレさん」
『≪L≫レモン!』
『≪H≫フレスヴェルグ!』
神々しい翼に隠されたかばんの体は、やがて眼を刺すような黄色が散りばめられた碧いフォルムへと変貌した。手のひらからエネルギーの剣が現れる。今にもオレに突き刺さんとした、その時。
時が、空間が、止まった。
「『仮面ライダーマイン』、そして『仮面ライダーオリジナル』ねぇ。争いは何も生まないよ……。まったく、こんな無意味なことして何のためになるんだろうね。さあ、2人とも行くよ。もうすぐこの世界は滅びるんだ」
2人のライダーを引きずり、耳としっぽのある少女――いや、どうやらコスプレのようだ――が海に向かう。洋上には巨大なロボット。
「君たちが戦ったせいで、この世界はなくなる運命なんだよ。その罪を雪いでもらわなくっちゃ、ね」
3人を乗せたロボットは、時空の狭間へと消える。その瞬間、時が、空間が、動き出した。
2分後。
突如として出現した超巨大隕石が、地球を粉々に砕いた。
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