サッポロ・クラシックがまずくなった
ネコ エレクトゥス
第1話
若い頃に飲んだ北海道限定生ビール、サッポロ・クラシックがとにかくうまかった。「うまい!」という言葉しか出てこないほどうまかった。口の中にウワッと広がる芳醇さ、文字通り喉に引っかかるんじゃないかというぐらいの喉ごし。「ビールってのはこんなにうまいんだ」ということを教えてくれたのがサッポロ・クラシックであり、僕の中でのビールのうまさの基準であり、今まで飲んだ最高のビールでもある。そのサッポロ・クラシックがまずくなった。北海道出身の酒好きの知人からも同じ言葉が返ってきた。
では何故まずくなったのだろうか?幾つか理由が考えられる。
一つ目。こちらの味覚が変わった。つまり舌が肥えた。それならしょうがない。諦めるしかない。
二つ目。時代に合わせてビールの味を変えた。これもあり得る話でしょうがないのだが、前出の知人や僕のようにまずくなったと思う人間がいるのにわざわざ味を変えるだろうか?
三つ目。財政上の理由などにより製法や原材料を変えた。製法が変わってうまくなるなら分かるが何故まずくなるのだろうか?原材料については麦芽100%なのでそんなに変わりようがないと思うのだが。
四つ目。昔サッポロ・クラシックは北海道内でしか飲めなかったのだが、今は輸送法や保存法が確立され全国に出荷されている。これがまずい。本来生ものであるビールはその場で飲むのが一番うまいはずだ。いくら技術が確立したからといって、東京でそれを飲もうと思えば何か無理な力が働いているはず。個人的にはこれが一番怪しいと睨んでいるのだが、皆さんはどう思うだろうか。
ではサッポロ・クラシックがまずくなったと嘆いている人たちは一体どうすればいいのか。答えは簡単。北海道に行けばいい。そこにはうまいビールが待っている。考えてみれば楽して東京でうまいものにありつこうという考え方そのものが間違っているのだ。
東京に来てうまいと思う鮨を食べたことがないのだが、向こうでうまい魚を食い慣れていれば当然の話で、東京の鮨はまずい魚を何とか食えるようにするための涙ぐましい努力のようにも思える(かつてロンドンでまずいテムズ川の水を飲めるようにするため紅茶が発達したと言われているのと同じように)。全く同様の理由で東京でうまいラーメン屋を見つけるのは難しい。
ああ、うまいものが欲しくなったら、北海道に行こう。
サッポロ・クラシックがまずくなった ネコ エレクトゥス @katsumikun
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