新日常系もの。
ポストアポカリプスな世界観をもとに、少女が自力で生き延びていく話なのですが、しかしながらそこまで悲愴感のある内容でもないです。むしろ新日常系作品といっていいぐらいにスローライフ感がありましたね。というかソロキャン感覚で自活できる女の子があまりにもたくましい! こういう女の子もいいですね!
悲愴感とはまた違うかもしれませんが、後半からは物語的な見せ場が多くなるのもポイント。このあたりは高尚な言い方をすればある意味哲学的なテーマを見せてくれるといったところですかね。とはいえ作品の作風にあわせてゆるーくスローなシーンになっているので難しい話ではないです。個人的にはお気に入りのシーンだったりしますけど。あとラストの終わり方も読み応えがあって個人的に好きでした。
なかなか小説作品で新日常系は珍しいかと。起伏にとんだ刺激的な話というわけではありませんが、終末世界でもたくましく生きていく女の子の日常を是非とも楽しんでください。とてもいいSFでした。
人類どころか、家畜、果てには虫まで(!)絶滅してしまったらしい。そんな東京を、家族ゆずりのキャンプ知識でしっかり生き延びている女子高校生。
自分以外誰もいない、不安で孤独だけどどこかのんびりと自由な世界で、自分のためにおいしいご飯をつくり、苦労してお風呂に入ったりする描写は、それだけでも追体験する楽しさがある。
でも、しだいに明かされていく人類絶滅前夜や、生き残りの彼女を狙う「夜の闇」との奇妙な交流が、この物語を「それだけではない」ものに変えていく。
読者に考える余地を残したラストまで、予測のつかない素晴らしい展開。ぜひ、さらに多くの人に読まれてほしい。