終章
終章
夏休みが終わって、新学期がはじまった。また、眠くなるような教授の講義を聞いて、パワーハラスメントのようなピアノのレッスンを受ける日々が開始された。
とりあえず、もう四年生なので、卒業演奏のための曲に取り組むことが通例になっているが、千恵子は、それがいつまでも決定せず、悩んでいた。ほかの子は、大体恒例となっている、ショパンのバラードとか、そういうもので間に合わせるが、どうもほかの子と同じ曲を弾くのは嫌だなという気持ちになってしまう。
そんな中、今日も大学から帰ってきて、コンビニの弁当で夕食を済ませていると、
「松井さーん、宅急便でーす。」
と、配達員のおじさんが、玄関先ででかい声で言っているのが聞こえてきた。千恵子はフォークを置き、急いで玄関先に行った。先日、何げなくスマートフォンを見ていたら、かわいらしい靴が販売されていたので、思わず買ってしまったのである。まあ、若い女性なので、そういうことは珍しいことではない。
急いでドアを開けると、予想していた通り、靴の入った箱を持って、おじさんがたっていた。
「はい、印鑑をお願いします。」
おじさんの指示通りの場所へ印鑑を押す。
「あ、あとですね、これ、余計なおせっかいかもしれないですけど、玄関先に落ちていました。もしかして、大事なものかもしれないので、一緒にお届けしておきますよ。」
というおじさんは、一通の手紙を差し出した。なんだかラブレターか?とからかっているような節がある。
「違います。あたしは、ラブレターをもらうような美人ではありません。」
千恵子は急いでそういったが、
「まあ、ゆっくり読んでくださいね。」
とまだからかっているような顔をして、おじさんは次の配達先へ行ってしまった。
とりあえず、新しい靴を箱から出して、玄関先に置いた。画像で見たより高級そうな靴で、普段学校に履いていくにはちょっともったいない気がした。なので、どこかコンサートに行くときとか、そういうときにしか使えないかなと思った。もしかしたら、良い買い物をしたのかもしれない。
で、おじさんが、ラブレターと勘違いした手紙を、改めて手に取ってみる。確かに郵便番号と住所があっていれば手紙というものは確実に届く。それは間違っていないし、宛先もちゃんとまついちえことある。でも、おかしなことに、ほとんどカナ文字で、大人というより、小学校の低学年の子供が書いたのか?と思われるほどだった。自分の親族に小学校低学年なんているはずがないな、では誰だろうと思いながら、まあとにかく封を切って中身を出してみる。
すると、中から紙が二枚出てきた。最初の一枚は、レポート用紙に書かれていたが、ほとんどカナ文字で、誤字や当て字も多数あり、中には句読点と読点の使い方を誤っているなど、日本語の文法的な間違いが多数みられ、こんな間違いは小学校低学年でもしないなと分かったので、おそらく外国人が書いたのだと分かった。もう一枚は、和紙を利用した縦書きの便箋に書かれた非常に流麗な行書で、書道の師範にでもなれそうな人が書いたものだった。
その流麗な行書の文書から、この文書を書いたのはマークで、和美の命令により、覚えたばかりのひらがなで書いたのだが、あまりにも間違いが多く、内容が理解できないのではないかと心配なので、一応翻訳しておいた、という筋書きが理解できた。たぶんこの翻訳をしたのは、水穂さんだろう。
一応、翻訳を頼りに間違いだらけの日本語を読んでみると、和美の肝臓がん摘出手術が無事に終わり、抜糸も済んだため、ドイツへ帰ることになったと書かれていた。そうか、もう帰ってしまうのか。それはなんだか寂しいなと思った。なんか、ああやって少年を励ましてくれる人が、もうちょっと日本にいてくれてもいいのになと思わずにはいられない。ああいう存在が一人か二人くらいいてくれたら、若い人がもうちょっと楽に生きられるのではないだろうか。
そんな思いで続きを読んでみると、富士山に登って楽しかった、また日本にくるようなことがあれば、今度は夏の登山シーズンに、頂上に行ってみたいと思っている、なども書かれていた。お土産としてブッチャーの下で買ってきた着物を、妹の誕生日にプレゼントする、かわいらしいデザインなので喜ぶと思う、という記述もある。そして、短い滞在であったが、いい思い出になったよ、ありがとう。という言葉で手紙は締めくくられていた。
翻訳した文句と同時に、註釈と書かれていて、そこからは水穂さんの主観がつづられていた。読むと、マークが書いてくれたお礼の文句よりも、こっちのほうがものすごく衝撃的であった。それによると、マークが購入したこの着物、実は日本では長らく差別的に扱われたものであるので、それを妹にプレゼントすると文書で初めて知った水穂さんは、非常に困惑してしまったようなのだ。それでもブッチャーが、マークさんは、妹に強くなってほしいという意味を伝えたくて、買ったのだということを一生懸命説得して、やっと納得することができたのだという。本人からしてみれば、何百年も続いた人種差別の象徴のような着物を、外国人が買っていくなんて、とんでもないことだと思っていたようだ。でも、人間であれば人種差別とか、いじめというものは、多かれ少なかれどうしても生じてしまう現象であるから、結局は自分が強くなるしかないのだということを、マークさんは感じたのだと考え直して、返品はさせるなというブッチャーの説得に渋々応じた。さすがに、自身が同和地区の出身者であると明かす記述はしてない。でも、具体的な名称などはとっくに忘れてしまったが、江戸時代に農民とか町人よりも低い身分とされた人がいたことを、千恵子はなんとなく学校で習った記憶がある。つまりそういうことだったんだと思う。それなら、とにかく険しい難易度を誇る曲をやらないと、乗り越えることは難しい。今日の米代のためにゴドフスキーを弾いたというのも、そういうことだったのかと納得はいく。
やっぱりあたしは、そんなことも知らないんじゃ、教員なんて絶対無理ね。とまたおかしな感情が生じてしまった。
最後に、もう二度と会うことはないだろうが、どこかで幸せに暮らしてくれ、という文句で手紙は締めくくられていた。同時に、これを翻訳したことは、他言しないようにという注意書きもあった。
よし、それなら、と千恵子も考え直した。スマートフォンの楽譜販売サイトでゴドフスキーの楽譜を検索し、最短で送ってもらうことにして購入した。翌日の午後には楽譜が届いたので、すぐにピアノに向かって、挑戦してみたが、あまりの演奏困難さに目が回り、倒れそうになった。女性の演奏者が、ゴドフスキーにトライすることは危険すぎるといわれたこともあるが、まさしくその通りであるほど難しかった。もちろん、作曲者の名前は知っていたけど、ここまで難しいとは予想外だった。水穂さんも、こんなものを散々演奏してきたんじゃ、文字通り体も壊すよなと、納得がいった。卒業演奏に使ってみようと安易に考えていたが、それも不可能であった。
この作戦は失敗したので、ほかの作曲家の作品にするしかないのだが、やっぱりありふれたものは演奏したくない。なんだか、製鉄所で経験した時のことを生かせるような演奏がしたかった。ほかの人がやっている曲をやってしまうと、それが全部だめになってしまうような気がした。
千恵子は途方に暮れた。もちろん、ショパンを否定するつもりではない。でも、ああいうおしゃれなメロディは、何か飾りが多く、底が浅い。かといって、古典派の曲をやってしまっては、楽をしたいのかと教授から叱責されるだろう。古典的かつ見せ場のある曲というと、そう簡単には見つからなかった。都内であれば、すぐに楽譜屋さんに行って、ネタ探しをすることもできるが、ここはそうではない。ネタを探しに行くにも、中央線で2時間近くかかってしまう。なのでどうしても楽譜販売サイトに頼らなければならない。そこが地方で音楽を学ぶ不利さだった。
仕方なく、家にあるもので済ませようかと考えて、これまでに買ってきた楽譜を整理していると、何年も前に使っていたカバンの中から、一冊の楽譜が見つかった。タイトルを読んでみると、「厳格なる変奏曲」である。確かに、あの時、大学の先生にいきなりこれを弾いてみろと言われて、その通りにしようと試みたが、まったく弾けず、うつ状態に陥ってしまった。そのときは、学校のカウンセリングの先生の取りなしで曲を変更してもらったが、その後、ピアノの先生は、さらに冷淡になった。当時は、パワーハラスメントは間違いで、自分のほうが正しいと思っていたが、今になったら、そうでなかったのかもしれないという気持ちがわいた。
試しに、楽譜をピアノの上に置き、ふたを開いて、弾いてみる。確かに、難易度の高い曲として知られているので、弾くのは結構大変といえば大変である。でも、、、水穂さんが生涯の糧としなければならなかった、ゴドフスキーの曲よりは、簡単ではないか?と思える。事実、そうなのである。確かに最終変奏の部分は、火花を散らすようなところもあるけれど、何とか弾ききることができた。弾き終わると、千恵子の中で何かが変わる。
よし、これだ!
千恵子は確信した。その日は、学生アパートの、練習していいと規定している時間ぎりぎりまで、厳格なる変奏曲を弾き続けた。
その日から彼女は、学校から戻ってきたら、一日中厳格なる変奏曲の練習を続けた。確かに、つまらない授業で受けてきた内容が、時折現れてきた。音楽という学問は講義形式で学んだことであっても、音として実証されるから、頭の中だけで解決するだけでは取得するのは難しかった。でも、具体例がすぐにわかって、そこを考えると、頭にすぐに入る学問でもあった。なんだ、音楽ってすごいじゃん。こうなったら徹底的にやってやる。彼女はひっきりなしに練習した。いつの間にか、パワハラをするという先生も、普通にレッスンしてくれるようになっていた。というより、千恵子がレッスンをパワハラと思わなくなっただけかもしれない。
一日のほとんどをピアノの練習についやし、ほかの講義的な科目は、すべて赤点ぎりぎりでしか考えていなかったので、一応単位を落とすことはなかったが、おそらく教諭としての資格は最悪だった。
まあきっと教員免許をもらったとしても、それを持っていれば何か役に立つのかというと、決してそういうことはないから、千恵子は、教員採用試験にはすぐに応募しないことに決めた。
それよりも、やりたいことはピアノの練習だった。ほかのことはどうでもいいから、彼女はピアノを弾きこんだ。さすがに、水穂さんのようにピアノの絃を切って故障させるということはしなかったけど、一度、調律に来てもらって、大幅に音程を直してもらった。そのときに調律の先生が、ここまで弾いてくれればピアノも喜ぶよ、なんて言っていたことがあった。
もう将来のこととかどうでもよかった。とにかく、やってみた。厳格なる変奏曲は、かなりの難曲であり、練習にも工夫が必要で、演奏技法を得るために、どうしたら得られるかを考える必要もあった。そういうことも、千恵子はノートにメモして記録していた。
しかし、音楽というものはやればやるほど、奥の深い学問であり、そうなると余計なことはやらないで、専念したくなる気持ちが強くなった。でも、もう大学にいられる時間は本当にわずかしかなかった。今になって、ピアノを本格的にやりたいなんて、なんだか贅沢すぎるかもしれないが、まさか教員になって、ピアノを並行して勉強し続けることは、まず不可能だろうし、文字通り、先に行く道がなかった。とにかく今やりたいことは、音楽の勉強なのに。もう、いけないことになってしまう。勉強に専念するのなら、日本では学校に身を置いておくことが確実な方法である。そうなると、大学の上の上級学校に行くということになる。
つまり、大学院か。
でも、どうなんだろうなと思う。一応、大学が最終学歴になる人のほうが圧倒的に多い。それに、大学を出て、社会人になったほうが、成長は大きいという人のほうが多いし、大学院となると、大人なのに親のすねをかじって、なんていう人も少なからずいる。
それに、この山梨では、田舎なのでその傾向は強い。明治時代の書生さんであれば、勉強することはみんなすごいすごいと言ってくれるけど、でも、今の時代は意外にそうでもない。
でも、今はもっと勉強したいのだ!という気持ちを抑えられないわけではなかった。
ある日、今日もあのパワハラをしているという先生のもとへレッスンに行った。先生の前でいつも通り厳格なる変奏曲を演奏した。今日も怒鳴られるかな?と思ったが、まあ、ある程度のことなら慣れてしまっていた。
「千恵子さんね。」
急に先生が優しくいったので、思わず拍子抜けしてしまう。あれ、今日は怒鳴らないな、と思っていたところ、次のように先生は言った。
「千恵子さんは、学科試験の成績はよろしくないけれど、演奏技術はすごくあるから、こういう辺鄙な学校にいないで、もうちょっと専門的なところで勉強させてもらったらどうかな。ほら、最近は、特修科とか、そういうところに行く人もいるじゃない。学校の先生として中途半端に働くのもいいけれど、せっかくの技術があるのだし、なんかここで終わらせちゃうのはもったいない気がするのよ。」
でも、そんなこと言っても、安泰を得て、幸せに暮らしていくのが理想とされている社会では、ただの異端児しか見られないだろうなという不安も沸いてしまう。
「でも、もう四年だし。就職しなきゃいけないし。そんな無駄なことやっている暇があったら、さっさと働いてといわれるんじゃないでしょうか。」
正直に本当の気持ちを言ってみる。
「まあ、そうなんだけどね。せっかくさ、ここまで弾けるようになってくれたのだし。なんか、そこで終わらせたくないのよ。私としては。これからもっと勉強すれば、もっと演奏技術や音楽性が開花してくれると思う。だから、そこを伸ばしてあげたいんだけどね、、、。」
こればかりは先生も悩んでいるようだった。日本の大学では、一年生から優秀でないと、次の上級学校に行く梯は提供してもらえないのだ。うーん、できれば、一生勉強したいと思うけど、そういうことは、やっぱり御法度にされて、働かざる者食うべからず的なところがまだある。
こういう風に、何かよさそうだなと思っても、すぐに制度に邪魔されてしまって、あきらめざるを得なくなるのだった。もし、上級学校に行きたいのなら、はじめからそうしていないと、絶対に行くことはできない。
そうなると、あたしはやっぱりだめなのか。
「何とかして、親御さん説得してさ、大学院とか、あるいは東京の音楽大学のディプロマコースのようなそういうところで勉強させてもらうようにしたら?そうしないと、なんだか先生はもったいないというか、残念でならないわよ。」
先生は指導者だからいくらでもそういうことは言える。でも、きっと家族は絶対無理だというだろう。まあ、おばあちゃんだったら認めてくれるかもしれないけど、年寄は、一般的に強くないことが多いし、金を出しているのは親だし、これ以上金なんか出してやれないといわれるのが落ちである。
結局、あたしは、あれだけ厳格なる変奏曲に燃えたけど、それも手放すしか生きる道はない。
そうなると、また親に対して憎しみの気持ちも沸いてくるけど、責任は私なので、私が責任を取らなければならない。
なぜか、自殺しようという気にはならなかった。それが良いのか悪いのかは知らない。もしかしたらこのような状況になった場合、もう、生きていてもしょうがないと諦めて、自殺してしまうという人もいるだろう。でも、なんかそういうことをしてしまうと、水穂さんに申し訳ないという気がしてしまうのだ。理由なんて知らない。でも、そう思ってしまうのだ。それってもしかしたら、知らないうちに彼に思いを寄せていたということだろうか。
やっぱり、自分はダメなのか。
きっと、私は。
こんな贅沢はしてはいけないもの。
生きなきゃ。
そんなことを思いながら、千恵子は今日もレッスンを受けるのだった。
一方。
「あーあ、本当に夕焼けのきれいな季節だねえ。おい、水穂さんにも持ってきた。どうせ布団に寝ているか、僧都ばかり眺めているだけでは、つまらないと思ったからさ。」
と、ふすまがあいて杉三が入ってきた。そのでかい声で目が覚めて、水穂は布団の上に座った。
「何持ってきた?」
と、聞いてみる。
「いや、マークさんから。こないだのお礼に、紅茶を航空便で送ってきたんだよ。蘭の家に届いたんだが、大量すぎて、全部飲んでたら腐っちゃうっていうので、少し分けてやろうと思ってさ。」
そういって杉三は枕元に紅茶の入ったグラスを置いた。いわゆる冷茶と同じ飲み方で、砂糖も何も入っていない、ストレートというやつだ。
「マークさんの手紙によれば、お茶そのものの味をのんでもらいたいらしく、砂糖も何もつけなかったんだって。」
多分、杉ちゃんの説教がマークさんには強烈だったんだろう。実はあの時の会話、杉ちゃんのでかい声はこっちまでよく聞こえてきた。そのとき、日本茶をのむのなら本物でなければだめと、説教していたよね。それが強力に効いたんだよ。
まあ、このことを杉ちゃんに説明しても、どうせ笑い飛ばすだけだろうが。
「あとこれ。ブッチャーが、毎回こんな風に売れたら、って、涙流して喜んでた。こんな丁寧なお礼状をもらったのは、初めてだってさ。」
と言って、一枚の紙きれと写真を渡した。へたくそな平仮名の文書と、女性の手と思われる、流麗なアルファベットが掲載されている。
「なんて書いてあるのかはわからないが、この写真の女の人、おそらくマークさんの妹だと思う。ほら、見てみろ。これを見て、同和問題の象徴だから返品しろなんて言えるかい?」
杉三からうけとった写真を見ると、一人の男性と一人の女性が並んで映っていた。確かに容姿が似ているので、兄妹かなとわかる。どちらも、日本的な要素は一切ないのだけど、女性が着用しているのは、間違いなく銘仙の着物であった。
「かわいい人。」
思わずそういうと、
「今の感想、変更するなよ。絶対だぞ。」
と、杉三に釘を刺されてしまう。確かにかわいらしい感じの女性なので、この人に、人種差別の象徴だと説明したら、かえってかわいそうだと思った。それにしても、銘仙の着物が欧米人に似合ってしまうのは、驚きであった。
「しないよ。」
答えはそれだけにしておいた。
とりあえず、杉三からお茶をもらって、半分ほど飲み干したが、どうも頭が重たくて、体がかったるい。
「なんだ、もういいのかい?お茶飲んだ感想くらい、マークさんに聞かせてやってよ。」
「結構きつい味だったね。杉ちゃんさ、申し訳ないが、横になったままでいい?」
「いいよ、なれ。」
杉三の答えはそういうときには意外に単純だ。もし、蘭だったらお前どうしたんだとか言って、質問攻めにしてくるだろう。そうなるとかえっていい迷惑になる。
「ごめんね。」
水穂はそういって布団に横になったが、このまま杉三が戻って行ってしまうのも寂しいなという気持ちがないわけではなかった。
「いいよ、気にすんな。姿勢なんてどうでもいいよ。言葉さえ通じれば。」
本当に細かいところは気にしない杉三だが、普通の人から見ればちょっと不安になるところである。
「夕暮れのきれいな季節ってさ、すぐ終わっちゃうんだよね。いやだなあ。」
「まあ確かに秋は短いよね。」
そう不満を漏らす二人に、庭の鹿威しがまさしくと答えるようにカーンとなった。
本篇9、夕暮れ 増田朋美 @masubuchi4996
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