鯨の骨が朽ちるまで

作者 夢見里 龍

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★★ Very Good!!

鯨の死骸のような建物中で、主人公は彼と出会った。
互いに名乗らず共に過ごす夏。

誰もが多少は考えたことがあるだろう。

自分のことを誰も知らない場所に行ってみたい――

だれも彼もが自分のことを知っている。知られている世界で溺れて息が出来なくなったとき、主人公は彼と出会った。

息が出来る静かな世界。終わりは初めから決められていた。
それでも主人公は彼に会うため足を運ぶ。

終わりが来るその日まで。
泡沫の夢の如く。

とても静かな世界観です。
そして、見たことのない『絵』が『音』がまるで目の前に映像として浮かぶほどに丁寧な文章と言葉選びが並びます。
どこの誰とも知れぬからこそ、心が通うこともある。
そっと静かに救い救われることもある。
最後に何が待ち受けていようとも、それが彼との邂逅が夢ではなかったと言う証。
どうかそっと寄り添ってみませんか?

★★★ Excellent!!!

緑に覆われた廃墟で、出会ってしまったふたりの鯨。
頽廃の漂うその場所で、絵を描き続ける少年と、意味ある音を奏でることに倦んだ少年。
孤独なふたりは、意味を与えられることを拒む。けれどふたりの間に流れる、意味のない時間は穏やかで、優しい。

夏が終わるまでの、空虚で、儚い、優しい時間。
繊細な筆致で描かれる、ひりつくような青春の翳のような物語です。
ご一読ください。