備忘録

作者 御調草子

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★★★ Excellent!!!

丁寧に使い込まれた文房具のような文体とでも言いましょうか。
百貨店で売っているような高級な文房具……万年筆、定規、革のペンケース──そういう物を長年大切に大切に使って、持ち主の手にしっくり馴染んでいる。みたいな文体だなと思いました。
そしてその文体で書かれた物語は堅実で、けれどもその堅実さが重苦しくならないのは、物語の落とし所がとても洒脱なものだったからだと思います。

巧みなのにその巧みさを押し付ける様子が微塵もなく、さらりと物語を畳んでしまうやり方がにくい。

「大人のための小説」というような言い回しがありますが、この小説に関しては、小説自体の佇まいがとても大人という印象でした。

しんみりと沁みて、いつかふと思い出すことがあるだろうと思うような物語です。

★★★ Excellent!!!

筆者とは親しいのですが、本作はあるかもしれない未来の想像であり、祈りの作品だなという印象を抱きました。
主人公の妻に対する想いが眩しいです。それでいて、話の構成はどこまでも客観的で、まったく押し付けがないのが素敵だなと感じました。
お盆という普遍的なテーマをもとに書かれているので読みやすく、普段小説に親しまない方でもするすると入っていくと思います。

★★★ Excellent!!!

余計なものを削ぎ落としたような練れた文体がたいへん心地よく、高齢者の粛々とした日常の描写と調和していて、心が洗われるようでした。
そしてラストのしかけに、パッと目が開かされ、読後ぽっかり暖かくなる。
なにもないけど、確かに「ある」。
たいへん佳い作品でした。