南天人形

安良巻祐介

 南天人形。

 露天でよく投げ売りされているこの種のヒトガタは、四肢のまじないをいい加減にかけてあることが多いため、品用の繋ぎ鎖から外してこちらへ渡されると、もうその時点でくかくかと不格好に手足を蠢かしている。

 そして、家に帰って下足箱や部屋の飾り棚などに置いておくと、勝手に立ち上がったり首を延々前後させたりと落ち着きがないため、家によっては着色雛の類いよりもよほど嫌がられる。

 それでも多くの人々がこれらのヒトガタをついつい買い込んでしまうのは、それらがしばしば見覚えのある顔─それも二度と会えないはずの誰かしらの顔とどこか似た細工をされて、夜店の妖しい灯りの元に晒されているからであろう。

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南天人形 安良巻祐介 @aramaki88

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