第4話手紙
稲子おばちゃんちには子供がいないそのせいかおじちゃんもおばちゃんも私を本当に可愛がってくれた。
お婆ちゃんのお仏壇にお線香をあげていると稲子おばちゃんが後ろから
「今日は泊まっていくんでしょ?」
っと声をかけてきた。私はおばちゃんに甘えるように「お願いします。」っと頭を下げると
「桃ちゃんが来てくれると家の中が華やぐから嬉しいのよおばちゃん達は」と微笑んだ。
お世辞にでも華やぐなんていってもらえて私はなんだかくすぐったいような恥ずかしいような気分だった。
会社での嫌な思いもここに来て少し薄れていくのが分かる。
「そういえば、この前お婆ちゃんの硯箱の中から桃ちゃん宛ての手紙が入っていたんだわ」
そういっておばちゃんは仏壇の引き出しから白い封筒を出して私に渡した。
お婆ちゃんから私に手紙?思いもよらな事に私の手は静に震えていた。
縁側に座りお婆ちゃんからの手紙を開く。
桃子へ
突然こんな手紙を受け取ってしまってさぞ驚いていることでしょう。
桃子は信じられないかも知れないがお婆ちゃんは桃子が私の死後そう遠くない時期にこの手紙を手にする事がわかっていました。そして
お婆ちゃんはどうしても桃子にお願いしたい事があるのです。それは
桃子でなければ出来ない仕事なのです。
お婆ちゃんが私に仕事を頼む?
私じゃなきゃ出来ない仕事?
とりあえず続きを読んでみることにする。
桃子に頼みたい仕事とはね
介護施設での仕事です。ほら桃子は福祉系の短大に行って資格も取った。なのに全く関係のない保険会社に就職してしまったでしょう、それがいけないって事ではないの桃子が選んだ道だから、でももし介護の仕事が嫌ではないのなら一度顔を出してもらいたい施設があります。
住所と電話番号を書いておきます。赤沢月子の孫だと言えばすぐにわかるはずだから、決して誰かを誘ったりせずひとりで行って下さい。
月子
手紙にはそれだけが書かれていた。
確かに介護職員の不足は叫ばれているが私じゃなきゃってワケでもないだろうに。なんて大袈裟にお婆ちゃんは仕事を紹介してくるんだろう?
しかも私がこの手紙を読む事を予見してたなんて言ってまで
介護かぁ~なんとなく気乗りしないが、お婆ちゃんの遺言みたいだし面接だけ行って断ってもいいかっと考えてながらとりあえず手紙をバックにしまった。
しばらくすると稲子おばちゃんが
「これから真田の温泉に行くけど桃ちゃんも一緒にどう?」っと嬉しいお誘いを受けた温泉なんて久しく入ってない気分転換にはもってこいだと私は子供みたいに
「行くー」っと大きな声で返事をした。
実家ではなく上田のお婆ちゃんの家に来て正解だったっと私は思うのであった。
手の中にあるもの 千未子 @azaka87
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