大学一年生の土橋桂介は、人生最後のモラトリアムと言われる大学生活をなんとなくやり過ごしていた。しかしそんな彼の運命は、同じく大学一年生の風岡香子と彼女の運んできた一件の事件によって急展開を見せることになる。
本作品はその名の通り、大学生の活躍するお話となっております。(タイトルが『風岡香子のモラトリアム』なので風岡さんが主人公なのかと思ったら、主人公は土橋桂介くんだったのはつっこんだ方が良いのでしょうか?)
緩やかに進んでいく日常パートと、ある事件に関わってからのスピード感の緩急が素晴らしく、とても引き込まれました。
日常パートでは東京に一人暮らしをする私立大学生の生活が子細に至るまで描写されており、資料としても興味深いです。
本作のメインともいえる事件の方のパートでは、犯人の特定、そして如何にして犯人を捕らえるかまでを現代の時流に即した解法で解いていくのが大学生らしくていいなと思いました。
登場人物の個性も強いので、シリーズ化したらさらに良くなっていく作品だと思います。
面白かったです!
大学生活……
人生における4年間のモラトリアム期間。
モラトリアムは運が良ければ楽な職場でも味わえるのかもしれないのだが、長時間拘束、残業、休日出勤が当たり前の会社員としての苦労を味わう事なく、バイトが嫌になったら直ぐにやめていいというイージーな場所。
そりゃまあ、勉強は辛いかもしれないがコツさえ掴んでしまえば大した事なくできる。
私は勉強ができずに専門学校に逃げて、ブラック企業に入社のお決まりコースだったが、退職して別の職場に行った今、大学生活を送っておけばよかったと後悔している。
この物語は、人生の猶予期間の中で起きた時間を主軸に物語が進んでいく。
全てを読み終えたわけではないのだが、その物語を読み終えた瞬間に、私の心に爽やかな風が通り抜けていくと確信している。
大学生でなく、社会人、特に大学に行くことができなかった人達に読んで欲しいと思う作品です^_^