第27話 彼らは青春を謳歌する

「津野君達、新しい友達できたかなあ」


 柏原は言う。

 時刻は十時頃、詳しい日程は知らないが、入学式は終わった頃だろう。


「どうでしょうねえ、彼のことですからそこまで心配はないのでしょうけど」


 自分の高校生活を思い出してか、間は少し遠い目をしていた。


「早く帰ってきてくれないと暇なのよねー」


 そう言った幸夜は、何かを察して庭先を見る。


「おや、あなたがこちらにいるとは珍しい」


 そう言った酒坂の方に目をやり、すぐにまた景色を眺めるろうがいた。


「久しぶりに桜が見たくてな」


 ぬらりひょんはそう言い、またお茶をすする。


「はあ、綺麗だ」


 たんそくするように彼は言う。

 さああ、と桜を揺らしながら春風が舞った。

 ふと視線を戻すと、またぬらりひょんはいつの間にやらいなくなっていた。

――相変わらず妖怪とはかくあるものだ。と酒坂は思う。


「学校生活楽しんでくれるかなあ。いじめとか、辛いこととか? ホームシックとか? 泣いて帰ってきたらどうしよう?」


 柏原は保護者のように津野らの心配をしている。


「高校生ですからね、色々としがらみもあるでしょうけど」


――だが、妖怪がこうであるように、彼らも我々の心配を何処吹く風と、そうあるんだろう。


「さあ、どうかは知らないが、そんなモノとは関係なく、彼らは青春を謳歌するのだろう」


 酒坂はそう言って笑った。

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妖怪と青春するには 二月のやよい @february_yayoi

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