第37話

「そうだよ。そのはずだったんだよ。でもさ――」

 僕の質問に、櫻井は、どこか吹っ切れたような、どこか悲しそうな、その二つが共存しているような、そんな名状しがたい表情を浮かべて答えた。

「賞誇会での日々がいかに楽しかろうと、結局は飽きるんだよ。そうして気がつけばまた無意識の海に呑まれてしまう……賞誇会は賞誇会で変わらない日常を送っているだけなんだから当たり前だ。

 だから、僕は最後に非日常を目いっぱい味わって、賞誇会を抜けた。

 そう、だから、あの半年間、僕が何をしていたのかって言われたら――」

 先に来た三鷹行きの電車に乗り、櫻井はどこか遠くを見つめながら言った。

「夢を見ていたんだよ、インディゴ色の夢を、ね」



 夢をみて夢をみて、インディゴ色の夢をみて、

 そして――夢は覚めた。

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夢をみて夢をみて、インディゴ色の夢をみて、そして―― 桜人 @sakurairakusa

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