第14話 黙示録、あるいは創世記

 とうとう世界に人間は、私と彼の二人だけになってしまった。この間まではもう一人いたのに。そのうえ彼はしばらく前に旅に出て、きっとすぐに帰ってくると思っていたのに五年が経った今でも帰ってはこない。


 私はいつもたくさんの亡霊たちに囲まれて暮らしている。たまに会話を試みて、ちょっとしたやりとりを楽しんでいるつもりだけれど、本当に会話が成り立っているのかどうか私には分からない。



「いつか本当に死にたくなったら俺が殺してあげるから」


と言ってくれた彼との約束は果たされそうにない。亡霊たちを除けば、本当はもうこの世界には私しか存在していないのかもしれない。


 そろそろ、もうおしまい。さようなら。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

REPRISE Cécile @snegurochkaaujapon

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ