第3話 このままでは心臓が持たない

 一ノ瀬さんの妄想がやばい。リアルすぎて本当にやばい。

 危うく俺は妄想の中とはいえ、敷島さんのあらぬ姿を見てしまうところだった。というか、当分敷島さんの顔はまともに見ることはできないだろう。

 せめてニッコリ笑顔を浮かべてる敷島さんだったら、非日常だったのに、あのいつもの不満げな表情でスカートをたくし上げるのはない。


 それに、他の人はせいぜい強く考えたことが文字で見える程度なのに。

 どれほど強く心? いや頭の中? にイメージしたらあんなことになるんだ。


 とにかく俺は一ノ瀬さんを知ることにした。




 俺は一ノ瀬さんを探した。

 てっきり優等生だからまっすぐ帰るのかと思ったら、一ノ瀬さんはコンビニに前にいた。

 俺、勇気を出せ。告白するわけじゃない。ちょっと、どんな子か知るだけだ。声をかけろ。

「一ノ瀬さん」

 声をかけるとゆっくりと一ノ瀬さんは振り向いた。

「佐藤さん、どうかしましたか?」

 一ノ瀬さんはゆっくりと振り返った。腰まである長い黒い髪がサラリと流れる。

 そして、なんとも自己主張の激しいおっぱいが……とか考えている場合ではない。

 中庭ストリップ事件の映像がよみがえる。彼女の指がゆっくりとシャツのボタンをはずしていく。中にはキャミソールを着ているから下着が見えることはないが大きな胸の谷間がってまた考えていた!


「佐藤さん?」

「あっ、コンビニ寄る? 俺も一緒に行ってもいい」

「えぇ、コンビニは私のものではありませんから。ご自由にどうぞ」



「あのさ……。この前中庭にいたじゃん。何してたの?」

 俺は最大の疑問をぶつけた。

「中庭……、あぁ、あの時は今日は暑いなと思ってたくらいで特に何かしていたわけでは」

 暑いからか、だから自らここで服を脱いだら涼しいかもとでも思ったのか?

「そっか」

 話はすぐ終わった。



 コンビニには、雨は降っていないのに、ビニール傘がたくさん置いてあった。

『濃い下着は透けるかしら』

 またも見えた文字。どこにそんなことを考える要素があったというのだ!


「佐藤さんどうしました?」

 コンビニの入り口で立ち止まったせいで、音楽が何度も鳴っていた。

 俺はすぐにどいた。

「いや、なんでもないよ」

 顔の前で何度も手を振った。

「佐藤さんは何を考えているかわかりませんね」

 不思議そうに小首を傾げて一ノ瀬さんはふわりと笑った。



 俺は一ノ瀬さんのほうが何を突然考えだすかわからなくていつもドキドキしているよと思った。


 一ノ瀬さんは雑誌コーナーに歩き出す。

『雨に濡れ張りついたシャツから透ける濃いピンクのブラ紐……』

 彼女から新たに出た心の声。

 さっきの疑問まだ続いてましたか……。


 俺は彼女の妄想にまだまだ振り回されそうだ。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

君の頭の中はHなことであふれている 四宮あか @xoxo817

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ