第4闇 我は冒険者になったようd
俺、
番号札を受付にいるギルド職員に渡すと、別の部屋へと通される。
「こちらで少々お待ちください」
そういうと、ギルド職員は部屋を出ていった。
「・・・」
「・・・」
俺とアリスはただただ黙って椅子に座っている。正直微妙に気まずい。いや、微妙じゃない。結構。
「おい、アリス。何か喋れ」
「は、はぁ!?なんで私が...」
「...ではこれからやることはなんなのだ?」
「そりゃ冒険者登録に決まってるじゃない」
「はぁ...(これだから脳みそアメーバは)」
まさか酒場に続きここでも同じことを考えることになろうとは思っていなかった。
「な、なによ...」
「俺が聞きたいのはどうやってその冒険者登録をするのかということだ」
「それなら最初からそう言いなさいよばか...」
「何か言ったか?」
「なんでもないわよ!えっと、登録方法だっけ?簡単よ。自分の血を魔鏡っていう魔法の鏡に垂らした後、手を鏡に重ねればいいの」
「そうか」
沈黙が気まずく適当に話を振っただけなので、正直あまり興味がない。適当に流す。
「な、なによ聞いといてその態度は...」
「いや、聞いた限り実際にやったほうがよくわかりそうだ」
「え?まぁ確かにそうかもしれないわね、うん」
などと話していると、何かを抱えてギルド職員が戻ってくる。恐らくあれが魔鏡というやつだろう。
「使い方はお分かりになりますか?」
ギルド職員は鏡を机に置きながらこちらに問いかけてくる。
「大丈夫よ」
「ああ」
「それでは、お願い致します」
そう言って、ギルド職員が少し後ろに下がって待機する。
「じゃあ私からやるわね」
そう言ってアリスは自分の指を口に近づけ...歯で指先を噛み、血を出す。
そして指先から滲む血を鏡の上に垂らす。
鏡に血が触れ、波紋を描き血が広がっていく。数秒して、鏡が発光する。
それを見届けたアリスは鏡に右手を押し付ける。
すると、先ほどよりも強い光が部屋を満たす。少しして光が収まり、アリスが右手を放す。どうやら登録とやらは終わったようだ。
「では、こちらをどうぞ」
ギルド職員がアリスにネックレスのようなものを手渡す。それにアリスが触れると、はめ込まれていた丸い石のようなものが淡い光を放ち、白色になる。
「なんだそれは?」
「これは冒険者であることを示す証となるものです。アリス様は冒険者になったばかりですので、石の色が白になったんです。色についての説明も致しますか?」
ギルド職員に『ああ』と答えようとすると、それをアリスが遮る。今回は喋らせてすらもらえなかった。こいつ...喋らせないスキルが上がっている!?
「大丈夫よ。私から後で説明する」
「かしこまりました」
「アキトはさっさと登録しちゃって」
「わかっている」
まぁ正直、石の色などどうでもいい。アリスの言う通りさっさと登録を済ませてしまおう。
「...っ」
アリスに倣い、俺も歯で指を切る。儀式をする際に何度もやっているが、正直この地味に痛いのは慣れない。
そして、流れてきた血を鏡にそそぐ。すると、鏡が光りだす。が、少々アリスの時とは異なっていた。
アリスの時は明るい光だったのに対し、俺の時の光は黒かったのだ。黒い光など初めて見た。
「おい、これで間違ってないよな?」
「そのはずだけど...」
「...」
アリスの受け答えを聞く限り、俺の行動に間違いはなかったはずだ。ギルド職員に限っては口を開けて呆然としているので判断が付かない。
「ふ、まぁ俺の血から生まれる光が黒いのは当たり前か...我の真名は
そういいながら、ポーズをとる。
「いいから早く手を付けて!」
だんだんと黒い光の勢いが増しているのを見て、アリスは焦りを感じながら
「仕方ないな」
アリスがうるさいので言う通りにしてやろう。俺は鏡に手を付ける。
「!?」
すると、目の前が黒く染まる。何も見えない。しかし、それは一瞬のことですぐに視界は元に戻った。
改めて鏡を見ると光は収まっていたが、鏡が割れてしまっていた。
「....俺はそんなに力を入れていないぞ」
一応先手を打って言い訳をしておく。
「そもそも普通の人間の力じゃ割れないわよそれ...」
「そうなのか」
どうやら冒険者登録によって俺の腕力はゴリラ並みになってしまったらしい。試しに壁を押してみる。
「...」
「なにしてるのよ」
「いや、なんでもない」
どうやらゴリラにはならずに済んだらしい。
「はっ!?も、申し訳ありません。初めてのことで動揺してしまってえぇ!?鏡が割れてる!?」
どうやらギルド職員の意識が戻ってきたようだ。
「これは弁償になるのか?」
「いえ、そういうことにはならないと思うのですが...すいません、こんなこと初めてで...ギルドマスターにお聞きしたいところなのですが、今は出払っておりまして...アリス様達はこの街に滞在されるご予定ですか?」
「ええ」
「よかった...それでしたら3日後にまたこちらにいらしてくれませんか?ギルドマスターが戻りますので」
「わかったわ」
「有難うございます」
俺を置いて勝手に話が進む。まぁ話に入りたいわけでもないから別にいいのだが。
「そういえば俺にはネックレスはくれないのか?」
「そ、そうでした。すいません。どうぞ」
そういって、ネックレスを渡される。石の部分に触れると、今度はアリスの時と同じように淡い光が石から溢れ、白に染まる。
一応は冒険者登録を済ませることができ、その日はそれでギルドを後にすることとなった。
俺は中二病なんだが、異世界に行くことに成功したので得意の妄想で好き勝手やる めのおび @katamenashi
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