エピローグ
パタン、とつい先ほどまで読んでいた本を閉じると、私はコーヒーカップを持ち上げた。
映るのは私の顔だ。
夢ってなんだと思います?
いつの間に隣に座っていたのだろう。黒髪の大層綺麗な女性が頬杖をつきながらこちらを見て言った。
『夢』
記憶の整理だとかなんだとか、色んなことを言われているけれど。
一体なんなのだろう。
果たして、これも現実なのだろうか。それとも夢の中なのだろうか。
ふわりふわりと浮かぶ思考に私はどんどん引き摺られていく。
まあコーヒーでも飲んで落ち着きなさいな。
大丈夫。夢からは皆、醒めるものですから。
ハッとして隣を二度見するが、そこにはもう女性の姿はなかった。
私もそろそろ帰らなければ。そう思って手の中のコーヒーを口に含んで飲み込む。
その味は確かに苦く私を覚醒へと導くのに、まだ温かなカップからゆらりと立ち上がった湯気はまるで、夢のように不確かだった。
夢七夜 文月六日 @hadsukimuika
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます