弓より優れた火縄銃なんて存在しねぇ!――もしくは、なぜ戦士達が剣を使ったか

curuss

§

〇まず矢一本の値段を


 ざっくりとした工程を書き出すと――


1 炭用の材木を集める


2 材木を炭へ加工する


3 鉄鉱石を採集する


4 炭を使って鉄鉱石から鉄を収集する


5 集めた鉄を精製する


6 精製した鉄を矢じりへ加工する


7 軸や羽根を集める。時代によっては、当然に糸類も無視できない


8 矢じりを軸と合体させ、尾羽を取り付ける


 でしょうか?

 ……この段階で、すでに材木代と鉄鉱石代を無視してます。気になる方は加味してください。



〇とりあえず矢じりを定義


 色々と考えたのですが、どうにも矢じり一本に使われる鉄の量を決めるのが先のようです。


 狩猟用アーチェリーのだと100gが基準?

 ……でも、和弓だと重くても矢全体で30g未満!

 しかも、お馴染みの矢じり型の他に、キャップ型まであるし!?


 ……作者しばし熟考。


 いままでの研究から考えると、和弓は強弓よりの実用品に近い。

 ただし、ピンキリ。現代弓道のは、強弓に比べると弱かったりする。

 となると結論は――


 現代のアーチェリーレベルな機械式ボウだったら100gの矢じりでもOK。

 しかし、一般的な弓では2~30gの矢を飛ばすのが精いっぱい。


 かな?

 そしてキャップ式は、かなり必要量を抑えられそうです。

 できれば弓に有利な数値で論じたいので、好都合ですら?


 アーチェリーのポイントと呼ばれるキャップ型矢じりは、5g前後だとか。

 まあ、判り易く5gとしましょう。計算もし易いですし。


 ちなみに5gというとパチンコ玉が5.4~5.7gだそうです。

 あの程度の重量が先端について、矢全体では25g前後となる想定で考えていきます。



〇ほぼ無視して構わない作業


 意外なことに鉄鉱石の採取は、手間暇の計上を無視して構いません。

 優秀な鉄鉱石で含有率は、なんと50%超!

 つまり、5gの矢じりを作るのに、鉄鉱石は10gあれば足りるという話です。

 鉱夫が一日にどれほどの鉄鉱石を掘れるか判りませんが、おそらくキロ単位で掘ったと思われます。

 これなら無視しても構わない誤差レベルでしょう。


 そう考えると全ての文明で製鉄技術の確保に躍起となったのも納得です。

 鉄鉱石の山があったら、それはすなわち――


 山半分の鉄がある!



〇値段は?


 悩みましたが、以下の計算論拠を使うことに。


 太古、鉄は金と同等の価値がありました。


 またローマの兵士は、週給金貨一枚=5gといいます。

 だだし、これは衣食住が支給されてだから、実質的な賃金は倍の10g。

 そして週に5日ほど勤務と考えて――


 低所得者層で推定日当は金2g。


 結論1、矢じり一本分で2.5日当分の価値があった。


 しかし、ほどなく鉄は銀と同等程度まで落ち込みます。

 なぜなら技術革新があったからです。

 そして世界的に長く、金1に対し銀は6だったから――


 結論2、矢じり一本分で5/12日当分の価値へ落ち着いた。


※ 長く金1に対し銀は6~ 大航海時代以降に技術革新。以後は1:10強。


※ 日雇い賃金の指針は11,000円だそうで、そこから算出すると現在の価値へと直すと――

 一本 4583円!


※ 加算されていないのは工程7と8なので、一日に26本組み立てられる前提とすれば……ちょうど一本5000円!?



〇しかし、それは新品の値段


 まだ使える矢じりはリサイクルされたでしょうし、問題なければ矢自身もでしょう。

 それらの値段は……ざっくり半値?

 平均して考えると……一本4000円弱で入手可能だった?


 そう考えると戦場稼ぎは、信じられないぐらい儲かります。

 落ちてる矢の定価?は一本4000円! 売値で考えても2000前後です!

 もう千円札が落ちている様なもの!



〇鉄は金と同等の価値を納得する方法


 ずばり動画の『Primitive Technology』をお勧めします。

 これは原始人同然レベルから色々と作る企画で――


 鉄の精製も試されています。


 ……炭用の木材を集めるのに半日以上。

 それを炭とするのに半日以上。

 できあがった貴重な炭を大量に消費して――


 やっと数グラムの鉄が!


 何日もかけて数gの鉄が精一杯ですから、金と同等と納得せざるを得ません。


 ただ、動画を見ればわかることですが、道具は粗末。

 炭窯も使い捨て(その度に作り直す)だったりします。

 また、動画主旨の通りに作業員も一人っきり。


 複数人による共同作業。

 使い捨てから再利用可能な固定式の窯へ。

 道具も石器、青銅、鉄器と進化の余地を残す。


 と、中世前期までで多くの改善点が残っています。

(だからこそ価値が1/6まで下がっている)

 そして――


 鉄が溶けるという事実の発見(江戸末期まで日本人は知らなかった)

 コークスの利用(石炭のままでは駄目。コークスからは飛躍に等しい)

 鋼鉄の量産


 と、中世から近代への発展も残ってたり。



〇ざっくり検算


 新品が一本5/12日当ならば、矢24本は10日で作れることになります。


 工程の1――木材集めに3日

 工程の2――炭焼きに2日

 工程の4――鉄鉱石の精製に3日

 工程の5と6に1日

 工程の7と8に1日


 で10日でしょうか?

(2日とある部分を二人掛かりで1日としてもよい)


 工程の1と2、4はもう少し短くできる気もしますが……捻出できて1日分程度かなぁ?

 まあ、「かけ離れた数字でもない」とはいえそうです。

(相変わらず材料費や流通コストを計上してません。気になる方は加味して下さい)



〇やっと弓によるエリア攻撃!


 千人の弓兵部隊が、5連射をしました。

 掛かった経費はいくら?

 1000×5×4000=――


 二千万円にしぇんまんえん


 ……おうふ。

 でも軍事兵器と考えたら、決して高くはありません。

 しかし、一発二千万円はミサイルレベルの価格帯!


 比べる意味はありませんが――

 RPGで数万円。効果が近いと思われる榴弾で10万円弱。

 ……兵器産業は勤勉だなぁ。



〇そして連撃だ!


 5連射を1セットとして、その戦争を通じて一人につき100本――20セット撃ったとしましょう。

 つまり、弓兵の弾代だけで――


 4億!


 ……ぎりいける?

 でも、勝たなきゃ責任問題!



〇さらに全員で弓兵!


 1万の軍隊を興し、全員に弓を持たせ、平均して100本の矢を撃たせたとします。

 結果、弾代だけで――


 40億!


 これ戦争する意味あるかなぁ?

 ざっくり人口×40万程度を税収として……総人口10万人程度な小国の場合は、年間の総予算が400億ぐらい。

 つまり――


 年間予算の10%を戦争一回分の弾代だけで使い果たした


 となります。

 さすがに無理ww もう勝っても亡国ww


 人口100万の中堅国家でも、年間予算の1%を一回の戦闘でばら撒けません!

 1000万クラスの超大国でも全員が弓兵は、技術力が向上する中世後期まで無理!



〇そして何人の矢職人が要るんだ?


 仮に100万本の矢を作るとして――


 100万×5/12≒のべ41.6万日


 職人一人が年に200日従事したとして2083人!


 人口に対して労働者を1/3程度として――


 総人口10万人なら労働者の6%が矢職人or関連業種!


 さすがに単純すぎる計算ですが、それでも矢ばかりに力を入れすぎでしょう。

 簡単な目安として……人口の10倍に相当する矢は作れない。おそらく人口と同数程度がよいところ?


 これを目安に考えると、人口の100分の1程度が抱えられる弓兵の限界。

 さらに健全なラインは、その半分程度と思われます。



〇でも可能だとして、弓兵だけの軍って意味ある?


 あります。

 全ての武器は――


 より間合いの広い方が尊い


 からです。

 よく剣より槍の方が強いといわれます。

 なぜなら剣より槍の方が、間合いは広いからです。

 当然にイニシアティブを得て、先に攻撃できます。

 そして攻撃を行えば相手は死ぬ可能性があり、死んだ敵は反撃できません。

 闘争において先制攻撃の権利は、絶対の有利といえます。

 

 しかし、その槍より弓は間合いが広く!

 また回避不可能攻撃の研究で、近接距離の弓は回避不能と!

(簡単にいうと攻撃の起こりを察知しない限り、避ける試みすら不可能)


 つまり、パイクで横列組んで前進制圧が成立するなら、弓部隊で横列前進も成立します!

 ……まあ、弾数という制限があって駄目ですが(苦笑)


 でも、実際に第二次世界大戦以降、全ての兵隊は飛び道具だけだったりも?



〇テンプレ想定パターン


 人口10万の小国の場合、興せる軍隊は5000人前後。

 内、500人が弓兵部隊。

 ついでにいうと上級戦士は500名。

 騎馬隊は上級戦士と重複しつつ、多くても1000名が限界。


 かな?

 そして弓兵一人につき矢を100本程度しか準備できないので、範囲攻撃に徹したら20回が限界。

 つまり――


 勝負所に備えて耐えに耐え、ここぞという時に!


 でしょうか?

 ……持ち込んだ矢を使い果たす必要もないので、けちんぼだと全く撃たないとかも!?


 仮に2時間の戦いで手持ちを使い果たすペースとしても――

 60×2÷20≒6

 つまり、6分に1回、極局所的に矢の雨が降る。

 ……意外と疎ら? 



〇戦闘機動力を保持したまま持てるのは10本程度


 以前の研究で、腰につける大き目の矢筒で10本というのが判明してます。

 より多く持てなくもないでしょうが――


 その状態で連射できるかは疑問


 です。

 ここで『一射につき6秒で、5連射に30秒。それ以上は息が続かなくて無理』なんて名手揃いの弓部隊を想定します。

 この人達は一度に10本持てるので5連射を2回、無補給で可能です。

 しかし――


 2回目の5連射をした後、弓部隊の全員が弾切れを!


 おそらく大騒ぎになると思われます。

 1人につき1分の補給時間で済むとしても、のべ500分!

 ……50人の補給係アパム君を用意しても、10分かかる計算。


 結果、弓部隊は――


・号令と共に全員で5連射のエリア攻撃


・1~2分ほど激しく乱れた呼吸を整える


・さらに号令で5連射


・再び呼吸を整えつつ、補給を受ける


 となる?

 つまり、1ループに最低12分は掛かります。

 これをレート表現すると6分/回! かなり遅い!

 かといって補給を省略するには、完全に固定砲台化するしかなく……攻城戦の防衛側でもなければ難しいでしょう。

 また、そうしたらそうしたらで矢の消費も早くなりますし。



〇逆に密集隊形での突撃は超リアル?


 第一波を0アワーと考えても、第二波は早くても一分後。

 その後、数分は麻痺するので――


 テストゥド――盾を頭上へ重ねて亀のような陣形で突撃は、普通に合理的かも?


 なぜなら必ず攻撃は途切れるし、それは現代の我々が考えるより長いから!

 重装歩兵ですら、5分もあれば100メートルを移動できます。

 そして100メートルは一般的な弓の限界射程ですから、スタートラインとして何の問題もありません。


 まあ、それを踏まえて途切れを目立たなくしたり、弓兵の護衛を置いたり、棘やら落とし穴やら設置したりでしょうが――

 突撃も『なし』ではなさそうです

 


〇技術レベルによる変化


 要するに値段の大半は鉄です。

 つまり、製鉄を安くできるようになれば、矢も安く――

 はならなかったと思われます(苦笑)


 なぜなら5gの矢じりは憧れちゃうほど謙虚だから!

 重いので100gとか、お値段20倍コース!

 まあ、そこまで酷くなくとも、鉄の値下がりを追いかけるように、矢じりも大型化したと思われます。


 ……意外とロングボウvsクロスボウの時代となったのは、製鉄技術のハッテンで矢が安くなったのも理由だったり?

 矢が安くなると、当然に全軍の飛び道具比率を高くできます。

 また威力も高くなれば、それだけ実質的に安く。

(それまで矢2本で稼いでいた戦果を、1本で済む威力となれば、実質的に半額となる)


 生産費用が半額、威力で換算半額だとコストは1/4であり――それまでの4倍な弓兵を投入できます。

 ……意外と正鵠な気が!


 逆方向の場合、黒曜石が歯止めを。

 モース硬度5ですが、世界各地で石器に使われた実績あります。

 革鎧程度なら、問題なく撃ち抜けるはずです(というかご先祖様達は、これで野生動物を狩っていた)


 製作が大変でも、1日に2つで上出来ならば、十二分に達成可能でしょう。

 さすがに青銅の防具を相手からは疑問ですが、その場合は自分も青銅の矢じりを。


 そして同じ素材を使う限り、絶対に武器は防具に負けません。

 なぜなら――


・武器側は点か線でよいのに、防具側は面を要求される


・武器側は運動エネルギーを加算できるのに、防具側は絶対に不可能


 だからです。



〇いつだか主張した『火縄銃は弾が安いのが優れている』再び


 火薬は硝石と木炭、硫黄で作る訳ですが……一発あたりの必要量は数g!

 1キロの火薬で200発くらい撃てる計算な上、一人あたりの生産量は一日で1キロ余裕という。

(硝石が大変だけど、難しいのは生産量の確保。労働としては軽い)


 飛ばす弾も金属なら大体OKというラフさ。

 ……特に鉛とか、鉄の半額以下かも?

 なんといっても焚火レベルの温度で精製できてしまうのが!?


 鉛の原材料である方鉛鉱の採取に1日。

 精製&成形作業に1日(含む薪集め)

 火薬の調合に1日。


 たった3日で、うんざりするほどの弾が!(驚)

 ざっくり100発分としても――


 一発あたり3/100日当! 矢の約14分の1!ww 一発333円!


 計算適当すぎで、まだまだ安くなりそうなのが……また。

 そりゃ戦国大名もメロメロとなる訳です。

 なぜなら――


 買えば買うだけ全軍の飛び道具比率を高められる!


 さらに弾切れに配慮して休む必要がない!

 体力の続く限り撃たせられる画期的な武器!


 ……ほとんどマジックアイテム?


 長篠の戦いで有名な三段撃ちですが――実情は休みなく撃ってただけかも?

 いくら資金力のある信長といえど、弓を休まず撃たせるのは不可能だったはず。

 しかし、火縄銃だと弾を節約する必要がありませんから、体力の続く限り撃てます。

 それを理屈の分かってない人が――


 のぶのぶって三段に構えて撃っている!

 だから途切れないのだ!


 と驚いてたり?

 ……眉に唾塗っといた方が良いかも!?



〇しかし、だからといって、すぐには弓の廃止とならない


 なぜならエリア攻撃――榴弾的用途は、まだ火縄銃にできないから。


 火縄銃は伝来した頃から弾幕を期待されたし、それこそ史上初の武器。

 どうして『矢幕』という言葉がないかというと、不可能だったから。

 それは『矢を飛ばす』という基本コンセプトの問題なので、ほぼ覆せません。


 ですが、初期の火縄銃に局所的飽和攻撃が出来なかったのも、また事実でしょう。

 なので主目的はエリア攻撃でありつつ、火縄銃のサポートもしていた時期があるように思えます。

 中世ヨーロッパでも混在期があるようですし。


 そして銃器のハッテンにともなって数を減らしつつ……止めとして弓の立ち位置を奪ったのは、おそらく砲撃の分野でしょう。

 砲科の小型化や融通性の向上が、弓部隊によるエリア攻撃と交代したように思えます。



〇そして接近武器部隊のいる理由


 話をテンプレ想定パターンへ戻すと、5000人のうち500人しか飛び道具を使


 内訳


 上級戦士    500

 騎乗兵     500

 弓兵      500

 一般兵    2500

 特殊兵科  0~500 

 補助兵相当  1000


 でしょうか?

(補助兵というのは、戦闘員というより雑役担当。時代や国によって色々変わる)


 そして弓兵以外の戦闘員2500~3000名は、否応なく接近戦用の武器です。

 多少は考えている地方なら投石用の石を持たせて?

(上級戦士を勘定していないのは、彼らだと一式揃っているのが普通だから)

 おそらく――


 ほぼ全員が、できれば弓を使いたかった


 と思われます!

 こんな選択クイズにすれば良く判るはず。



Q 希望する配置場所を選んでください


・軽装パイクマン

 特に荒くれ者を選りすぐるようなポスト。死傷率高し


・騎兵

 騎乗戦闘できなくともよいが、基本的に急襲や突撃がメインの仕事


・重装兵

 そこそこの鎧は支給されるが、常に最前線or突撃での矢面。あと重くて臭い


・歩兵

 機動力を維持できる防具で、とりあえず感覚で投入される。……どこへでも


・弓兵

 基本的に待ち時間の方が長い。劣勢だと真っ先に狙われる



 ……これなら弓兵じゃないかなぁ?

 もしくは――



Q 装備を選択してください


・片手武器と盾

 そうそう壊れない。使用回数制限なし。接近戦最弱説あり。盾が持てる


・両手武器

 そうそう壊れない。使用回数制限なし。接近戦最強説あり


・飛び道具

 使用回数6。常に先行。回避不能

 命中しても倒れない場合や盾に無効化される可能性あり



 やはり飛び道具……かな?

 ……ゲーム脳で考えると『常に先行かつ回避不能』ってやけくそに強い気が!?

 思っていたより片手武器が魅力的! ただし自動的に歩兵か重装兵という。


 でも、弓兵は人気ポスト!

 希望したからって就職できるわけじゃねーから!

 

 ……一般人の9割は、渋々に接近戦ポストを割り振られて!?


 徴用されて火縄銃の練習させられるとか、超大当たりなのかも?

 以後は経験者として自動的に火縄銃だろうし。


 盾持ち ≧ 弓 ≧ 両手武器 ≧ 盾持ち――

 と三竦みループが!?



〇さらに冒険者などの場合


 駆け出しの冒険者が50匹のゴブリンを倒した。

 わりと日常茶飯事なイメージですが――


 全員が必中必殺の可能な名人だったとしても、50本の矢が必要!


 そして50×5÷12日当で――


 金に換算すると約21g! 金貨だと4~5枚!


 でも攻撃が外れたり、耐えられたりもあるだろうし……戦闘終了時に少しは余っていないと問題あるし……実際には倍から三倍とすると……つまりは150本分!?

 終了後に多少はリサイクルできたとしても、討伐開始時点で用意しておく必要があります。


 また、一回の戦闘で撃てるのは人数×10本が最大値ですから――

 正々堂々と会敵した場合、冒険者側も5人の射手が!

 しかも、これは必中必殺前提だから殺害率50%で10人! 33%で15人!

 ……もう冒険者というより、地方領主が引き連れてきた兵隊?


 しかし、そう考えると辺境村のゴブリンが無視されるのも納得?

 領主にしてみれば最低でも50人は兵士を動かさざるを得ず、それだけで金貨50~100枚の予算が必須となります。

 しかし、外注――冒険者が金貨30枚程度で引き受けるのであれば、それはそれでありでしょう。


※ 最下層労働者が週給金貨2枚の世界観において

  6人パーティだと一人当たり金貨5枚であり、半月分の収入に相当する


 ……まあ総予算金貨30枚だと、矢だけに金貨15枚――150本分は使えなくなりますが。



〇弓sagesageじゃねぇか!


 実のところ違います。

 さすがに高コストで継戦能力も著しく劣ると言わざるを得ませんが、銃器のない戦場にて最強でしょう。

 なぜなら――


 ご先祖様達は欠陥だらけな弓を、万難を排して採用してきたから


 です。

 むしろゲームなどでは、メリットデメリットを正しく適用するべきかも?


☆メリット


・回避できない

 5メートルぐらいの距離だと、生き物の反射神経では避けられません。

 つまり、攻撃側が判定に成功したら命中確定。

 救済処置を残すとしても……危険感知的な判定に成功して、やっと回避判定の権利を得る程度でしょうか?


・イニシアティブを得る

 優先攻撃権を持ちます


・カットインできる

 映画や漫画などでよくある――

 『味方へ斬りかかろうとした敵兵に当てて怯ませる』

 『呪文を唱えてる魔法使いの邪魔』

 などが可能でもおかしくないでしょう。


・もちろん遠距離攻撃できる

 当たり前だよなぁ?


・即死

 世界観やゲームシステムによる。

 ただし弓矢で即死があり得るのなら、他の手段でも起こり得るべきで……


・全弾発射

 ゲームの場合は、システムに拠ります。

 ラウンド制で1ラウンドが1分などだったら、手持ちの6本全部を撃ててもよいでしょう。

 ほとんど切り札に等しく、当然に使用後の弾数もゼロとなりますが!(苦笑)

 


★デメリット


・一度に6本ぐらいしか矢を所持できない

 荷物として持つのはありでも、矢筒へは6本前後でしょう。

 つまり、その戦闘中は補給できないか、非常に難しい。


・矢が高い

 ファンタジックな素材であっても、結局は同じ事です。

 産業革命が起きるまで、矢は高コストであり続けるでしょう。


・矢が壊れる

 高価な上に、使う度に壊れたり行方不明となる可能性があります。

 これは近接武器の刃こぼれや破損と比較になりません。

 ……非常に貴重な魔法の矢とか無くなったら、もう呻くしか!?


・盾が苦手

 天敵ではありませんが、アンチ防具なのは否定できません。

 少なくとも機械式クロスボウレベルの威力がないと、盾抜きは不可能と思えます。


・誤射がありえる

 こればっかりは否定できません。

 まあ、これを踏まえても有効だったから、太古の昔から中世末期まで使われたとも?


・超接近戦を挑まれると詰む

 しかし、組み付かれても使える武器というのは、実のところ非常に少ないです。

 一応、欠点は欠点ということで。


・バフが厳しい

 まだ制限するべきと考えるのなら、これでしょう。

 「武器強化系魔法は矢にかけるのじゃよ!」とするのなら、一本一本へかける必要があり、かなり不利となります。


 ――な感じ?

 冒険者レベルの少人数の戦いでは、以上のメリットデメリット。

 特に攻撃魔法や手投げ武器との差別化は必須でしょう。


 攻撃魔法でカットインしたかったら「みんな大好き『詠唱破棄』と『モーション省略』が要るんじゃよ」とでもする。

 あと「手投げ武器は逆立ちしても『回避不能』属性は無理」など。


 そしてマス・コンバットでは、文明レベルを問わず容易に準備できるエリア兵器であり、遊撃へ回しても期待がもてる。

 極度に未開な文明では、両陣営が弓だけで戦う場合すら!

 まさにエース!

 しかし――


 人数×値段×連射=破産力ぅ!


 な諸刃の刃。

 集めりゃ良いってもんでもない。


 ――以上が作者の考える『現実と擦り合わせながら、弓をゲームや創作で扱うガイドライン』かなぁ?



〇補足


 ……うーん? ちと計算苦しくない?


 などと思えた時は、矢の値段を半額で考えて下さい。

 一本2000円でも、頭痛くなるほど高いですから! 話の辻褄だって、おかしくはならないでしょう。


 ただ半額化は、おそらく無理です。もう全ての工程が最終形になっても、不可能と思われます。

 ……産業革命の起きる前は。

 でも、技術革新後は、銃器が台頭しちゃいますし?


 そして産業革命前は、何もかもが高い訳で……矢が一本4000円というのも、数字のインパクトほどではなかったり。

 古代から中世とか、食パン一斤相当が1000円する世界観です。

 しかし、逆にいうと、それを作る小麦も凄い高価となります。

 粉屋で倍、パン屋で倍、流通で倍として……農家の取り分は1/8?

 食パン一斤分で小麦粉を250~300gといいますから……収穫した小麦を1円/gで売ってるわけです。

 ……日当の全額で小麦を買っても約10kg! 相当高い!



 参考までに現代の小麦粉は0.25円/gでした。

 小麦→小麦粉で倍としても……ざっくりと現代価格の倍から三倍でしょうか?


 よく一般衣服一式が月収並といわれますが、それって現代の価値で20万円前後となります。

 これを1円/gのレートで直すと小麦200kg。

 つまり小麦200kgと物々交換できたわけです。

 しかし、0.25円/g換算だと5万円。

 ……一般衣服一式にしては高いけど、あり得ない数値でもありません。

 現代社会は、何もかも安くなっているので感覚が狂いやすく?



 ようするに見た目上の数値で騙されない――


『いくら現在の価値に換算しようとも、産業革命前は何もかもが高い』


 のを常に意識する必要があります。

 他の言い方をすると――


『とにかく物がなかった! 加工品なら尚更!』


 です。

 ここ100年の方が異常で、何もかも高くて当たり前! だって全てが貴重品だから!

 感覚歪んでいるのは、我々の方ですから!



〇結論


 火縄銃と弓は、全くの別物。

 なぜなら基本コンセプトが違うから。

 それを比較検討するのは、スプーンとフォークを「形が似ていて同じく食器だから」と比べる様なもの!

 よって優劣もつけようがありません。

 ただ――


『現代銃器は先割れスプーン的器用さがあり、火縄銃と弓の両方を駆逐した』


 そして火縄銃のない頃は、弓を多く使おうにも――


『ランニングコストが高すぎて、軍勢の弓比率を上げることが出来なかった』


 と思われます。

 ようするに弓での戦争を考える段階で、かなりのセレブ? 実際、農民一揆などは投石でしたし?

 もしくは――

「戦争は金だよ、兄貴!」

 がFAでしょうか。

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