綺麗事だっていいじゃない!

@Norihiro

第1話

あなたが好き。笑う笑顔も、可愛いえくぼも、涙も、くそまずいご飯も、喧嘩したときも、寄りあった時間も全部宝物。二人だったら、どんな壁だって乗り越えられた。この先もずっとそのつもりだった。でも、あなたは、私を残していなくなってしまった。あなたは、どこにいるの?時間は今も止まったまんま。



静かな朝だった。小鳥の鳴き声がしている。まだ、私が小学校に入る前もこんな朝があったような。

「早く起きろー」

お母さんの叫び声が頭の中をこだましてやっと意味を理解した。

ふっと時計を見る。

「っと、止まってるー」

泣きそうな気持ちを抑えながら、階段を駆け下りる。時計を見ると7時57分だった。

やばいやばい。登校は8時15分までだった。こんなに焦ってるのにお母さんは、何をのんきに笑っているんだ!歯磨き、、、はもういいや。

「はー」

よし!臭くない。顔を必死に洗って制服に着替えた。

痛っって鞄なげる親がいるか!まぁ鞄持たないで学校行こうとしてたわけだし、今回は感謝するか。んじゃなくてもう、8時7分じゃん。

「行ってきます!!」

勢いよく扉を吹き飛ばして走り出す。学校までは、徒歩で10分。がんばれ私。

さっきまでと変わって車とセミと私の上がった息がうるさいとばかりに叫びあう。

やっと校門をくぐって教室へと向かう。いつも、チャイム寸前に学校へ来る奥野卓也だ。

ってことは、まだ間にあう。

教室に入ると、仲が良くて大きな黒目が可愛さを物語る佐々木涼音とそのへんの男子じゃ到底勝てない気の強さを持つ本田綾音が心配そうに見つめている。席に座って息を上げているとふたりが寄ってきた。

「だ、だ、だいじょうぶ??」

と、はもりながら言ってきた。続けて涼音が

「ラインも既読つかないし、何かあったのかと思った」

そうだ。朝からスマホ触ってないな。あ。忘れた。家にスマホを忘れた。現実世界に気が付いて急いで返事する。

「ごめん。寝坊しちゃってさ!」

「そうだったんだ。じゃ、またあとでね」

ふと時計を見ると、15分を指していた。スマホを忘れたことを後悔しつつチャイムの音を聞いて、準備する。朝の会とやらが始まったけれど、つまんないから窓の外のサッカー部を見る。

朝の練習が長引いてるらしい。その中でも、ひときわ目立つスタイルでイケメンの赤石優がいた。ニコッと笑った。真剣な顔になった。胸の鼓動が早くなってくる。

「みとれちゃって~」

卓也が、茶化してくる。

「みとれてないわよ」

必死に否定する。

「顔、赤くなってるぞ」

「うるさい!」

このことは、だれにもばれてしまってはいけない。私の厳重秘密事項の第1条だ。

窓の外にいたはずの優が、私の机に少し触れながら通り過ぎていく。汗臭い。でも、男子って感じ。混乱の中でも目ですぐにとらえてしまう。そのたびにドキドキする。これが恋?

こっち見た?




キーンコーンカーンコーン。

やっと、お昼だ。私の通う北海道晴拓実私立学校は、学食がおいしいのが自慢だ。

生徒の人数を考えると少しすくない席を取りに行く。荷物を置いて学食を買いに行く。

今日は、カツ定食にしよう。頼んですぐ出てきた。私の席の両隣にはもう、涼音と綾音がたべていた。席に座り私もご飯を食べる。うん。やっぱり美味しい。

「あのさ、数学の高梨先生今日は7分丈でかっこよさ引き立つよね」

と綾香が、言った。すると、

「そうだよな。俺もあんなにかっこよくなってみたいな」

その声を聞いて、ぞくぞくとする。

「おお!赤石、朝練大変だね」

なんで、優がここにいるの?しかも、卓也と一緒にいるし、ほんとやだ。体中の血が顔へと上がってきて熱くなっているのが、自分でわかる。やばい。そうだ。

「お、お腹い痛くなってきちゃったな。えっとじゃ!」

我ながらいい演技だ。とりあえず、朝ごはんのはずだったサンドウィッチでも、教室で食べよう。

「はぁ」

誰もいないせい?暖かくないから?

美味しくない。

さっきので、よかったんだよね?ああ。もやもやする。どうにかしたい。頭休めようかな。

保健室へと向かう。急などしゃ降りで、花壇整備委員がなにか忙しそうにしている。

保健室へとつくと、お腹痛くて頭が痛いと言って寝た。正しくは寝たふりをしていた。

雨音がどんどんと迫ってくる。朝は快晴だったのに。どこで、間違っちゃったかな。

チャイムの音もする。うるさいこの世界からさようなら。


「起きろ。おい、起きろ」

あ。眩しい。少しずつ目を開ける。

「ん、ん?!ゆ、ゆ、優」

なんで?意味が分かんない。

「お前、全然起きねーからちょっとつかれた」

「ごめん。ってか何でここにいるの?」

こんな事聞きたいわけじゃない。

「俺が来たら下手くそな演技で、どっかいっちゃうから、悪い事でもいったかな?っておもってさ。謝ろうかなって」

無理だ。あなたが好きで恥ずかしかったからいられませんでしたなんか言えない。

え?えええ。同じベットの上に、す、す、座った!また顔が熱くなってきちゃった。

「ん?顔赤いぞ。これから帰るし、一緒に帰るか?」

え?まじ?夢じゃないよね。うれしいけど、、、

「んじゃ帰るぞ、りな」

カップルじゃないし、恥ずかしい、のになんでだろ。体は嬉しさに素直に動いていく。

まだまだ生徒がいるのに、学校一?イケメンな優と一緒にいるなんて。

飛んで突き刺さる。視線の矢。痛い。みんなのあこがれと一緒にいるなんて。

涼音たちの近くを通り過ぎて校門を出た。

「あのさ、今日の5・6時間目のノート貸すから明日返してね」

「あと俺、スマホ買ったからライン交換しよ。でも、今日は、具合悪そうだから明日な」

「あ、うん。じゃあ、また」

混乱しすぎてこれしか言えない。どうしよう。

「あ、ありがとう」

やっと言えた。でも明日も話すってこと?

「あ、明日朝練ないから、一緒に行こう。りなの家を7時50分でいい?」

「うん!じゃね」

何言ってんだ私。朝も一緒に行くってやばくない?はぁ。やらかした。

静かすぎて、時間が止まっているみたい。

家にはいてっも、ずっと優のこと考えてる。

そうだ、スマホ見なきゃ。

え?ラインの通知999+ってなになに?涼音から2件

(大丈夫?遅いね、おーい)8:00

(優と帰ってるー)15:47

ってなんだよ。

【そういう関係じゃないから】

あとは、え?卓也、、、

(照れんなよ!)12:03

(逃げたー演技下手くそ)12:05

(おーーい)12:05

(大丈夫?)12:05

スタンプ12:06

スタンプ12:06

スタンプ12:06

   ・

   ・

【なんなのそんなへただったの?】

【じゃあまた、スタ連禁止ね】

なんだ。演技うまくいったと思ったのに、そうでもなかったのかな?

なんか、異常に疲れた。はやくねよ。

月、綺麗だな。今何してるんだろう。やさしかったなー

今日は、目を閉じよう。おやすみまた明日。私。





やっと気づいたか。よかったよかった。今日一日帰れなくなるかと思った。にしても、一回目声かけてからもう、8分も経つ。朝こいつは、どうやって起きているんだろう。

あ!また寝ようとしてる。

「起きろ。おい、起きろ」

やっと目を開けた。

「ん、ん!?ゆ、ゆ、優」

そんなに、びっくりしなくても。俺、保健委員だし。混乱してる。可愛いな。

「お前、全然起きねーからちょっとつかれた」

「ごめん。ってか何でここにいるの?」

あれ、おんなじクラスなのに、俺が保健委員のことわすれてんのか?まぁ、別な用事もあるし、保健委員だからってだけじゃないけど。

「俺が来たら下手くそな演技で、どっかいっちゃうから、悪い事でもいったかな?っておもってさ。謝ろうかなって」

なんだこいつ。また顔赤くなってきた。熱でも出てんのか?

「ん?顔赤いぞ。これから帰るし、一緒に帰るか?」

一瞬うれしそうな顔したのに、すぐ深海魚みたいな、絶望した顔しやがった。

もう、学校終わったし、一緒に帰るか。準備できたみたいだし。

「んじゃ帰るぞ、りな」

 ほら、みんなりなのこときにしてる。みんなこっち気にしてるけどきづいてるのか。こいつ。真っ赤な夕日が差し込む道を歩く。意外とすぐりなの家に着いた。

「あのさ、今日の5・6時間目のノート貸すから明日返してね」

「あと俺、スマホ買ったからライン交換しよ。でも、今日は、具合悪そうだから明日な」

「あ、うん。じゃあ、また」

ライン交換はしたいけれど、具合悪そうだな。

「あ、ありがとう」

お礼言われた。ちょっとうれしいかも。

「あ、明日朝練ないから、一緒に行こう。りなの家を7時50分でいい?」

「うん!じゃね」

やけに、素直だな。可愛い。

嵐の後の静けさのようなものがある。風の音も、車の音も、この世の中からなくなってしまったみたいだな。少し古い外見の俺の家が、見えてきた。自然と小走りになる。

「ただいま。」

言った声が、消えかかったころにお帰りと帰ってきた。

家に着いたが、特にやることもない。

ご飯をたべてしまってからは、本当にやることがなくなってしまった。

今日は、いろいろあったから。早く寝ようと思う。

カーテンの隙間から見える星は、月の美しい輝きになすすべもなく、たちすくんでいるようだ。気づいてる?この気持ち。こんなに強く思っているのに、まるで気づいてもらえない。

いつかこの思い伝わればいいな。



朝にしてはうるさすぎるスマホのアラーム。仕方がないか。昨日、電池買うのをわすれてしまったことに気づいたのは、明日が今日に変わるころだったから。

時間は6:00を指している。今日の私はいつもとは、違う。これと言っては、何も変わらないが、何かが違う。いつも、へらへら笑っている母も、今日のわたしの気合に驚いているようだ。

6時15分には、ご飯を終えて風呂に入っていた。

だって、もし、私の体が臭かったら嫌われちゃうもの。お風呂用の防水テレビからは、一円玉天気で降水確率は0%で37度を超えるとか。ちなみに、降水確率0%とは、0~5%のことを指すらしい。天気予報が終わって、アジアツアーに若手女性5人組グループ歌手が行っているだかの、ニュース見てから上がった。それからは、あっという間に準備が終わった。

まだ、6時52分だ。優が迎えに来るまでは、結構あるな。今日は、どんなことあるかな?

こんな気持ちは、気づいてもらえないだろうな。きっと、優は私みたいな人間より、月のように輝く涼音とか、どんな人間をも味方につけて魅力をさらけ出す綾香のことを好きになるんだろうな。そして私は何も伝えられずに終わってしまう。小学校の時もそうだった。ホテルを抜け出して散歩に行ったとき。3キロ先で起こったことさえも聞こえてしまいそうな朝。公園で遊ぶ男の子がいた。真剣な目、少し濃い眉毛、高い鼻、日焼けした色。その子に好意を抱いた。目が合ってドクドクするような、体は熱いのに鳥肌が立つような。きっとそれは、恋だったのだろう。

それが私の初恋、ひとめぼれ。そして、高校生になってクラスを見回して見つけた。初めて会う顔が並ぶ中、一瞬で分かった。この人だって、やっと見つけたって。でも、あの時伝えたかった気持ちは、思いは、そう簡単には言葉にできない。

「ピーンポーン」

私の記憶の世界から、急激な呼び戻しを食らって。心臓がとびぬけそうだ。まだ心の準備はできていないが、そんなことなんてお構いなし。スマホ片手に家を飛びだす。重いはずの扉も重いはずの鞄も噓みたいに、軽い。例えるなら、発砲スチロールってところだ。輝く世界は、崩れるという言葉を知らないようだ。

「おはよう。元気だね、りな」

優は、天使のような笑顔でほほ笑んだ。

「おはよう。優。ライン交換しよう。」

うん。やっぱり昨日とは何か違う。今日なら何でも言えそうだ。

「そうだな、フルフルでいい?」

「もちろん!!」

私の夢に着実に近づいている。ラインを開き、本体を震わす。読み込みが出て、(YUU)というアカウントが出た。追加を押し。トークで文字を打つ

【よろしく!】7:51既読

(よろしく。)7:51

スタンプ7:51


ラインの交換が終わった。いろいろ話たいけど現実世界で。

「優って誕生日いつ?」

私にとっては、重要事項だ。

「7月26日」

「あと二日じゃん!17になるの?いいね!」

「だろ!俺、それでスマホ買ってもらったんだ」

そんな会話してたらすぐに学校に着いた。登校時間のラッシュだけれど、昨日みたいにおびえない!視線だってなんだって吹き飛ばしてやる。感じるものがあるけれど、ぶっちぎる。

教室について、それぞれの席に分かれた。涼音と、綾香が一目散に私を囲み涼音がしゃべりだす。

「んでんで、どういうかぜのふきまわし??」

「んーまぁ、いろいろあって。」

説明すると長くなるからはぐらかす。詰まんなさそうに、席へ戻っていった。

卓也飛び込んできてチャイムが鳴る。朝の会が、始まった。実につまらない。

そして今日も、一日が始まった。

事件が起こった。

3時間目のちょうど中盤に、担任が教室にきて廊下に優を呼び出した。1分もしないうちに帰ってきた。朝まで崩れることを知らなかったのに、今にも崩れそうになっている。優の顔からは不安がにじみ出ていた。そしてそのまま早退していった。

3時間目の終わりにラインを送ったけれど、返事はない。優のいない学校なんてつまらない。そう思った。涼音といようが、綾香といようがあまり楽しく感じなかった。あまりに時間がゆっくり過ぎていくから、4時間目の終わりに、保健室のベットで現実逃避した。朝のあの表情を、思い浮かべながら。


「りな!りな!りな!」

父の声だ。焦って目を開ける。単身赴任でなかなか会うことのない父が目の前にいた。

「やっと、起きたか。久しぶりに帰ってきたら、まだ家に帰ってないっていうから学校に電話したら、なぜだか泣いてるし、起きないから来てほしいっていわれてきたんだ」

は!泣いてる。なんで?夢は見た。優が出てきたはず。

父は先生にちょっと謝って

「よし。行こうか」

と言った。

いつもなら、父に抱き着いたり、楽しそうに会話したり、出前を取ったりする。

一応話した。寿司も食べた。でも、つまらなかった、美味しくなかった。いつもと、違った。

スマホ見たけれど、通知は0だ。

「はぁ」

ため息まじりのそのいきは、いくところのないまま消えてった。

ベットに横たわると、昨日より何かがかけた月が出ている。美しいもの、美しい時間。あるべき自分、あるべき姿、あるべき輝き。昨日までの物は、突然崩れてしまう物なのだろうか?

いままで築いてきた全てが、一瞬でなくなることなんてないよね?

男の子に初めて出会ったとき。その時にこんな約束をした。

「今度会ったときは、ずっと一緒にいようね」

記憶の中の輝き続ける大切な約束。そのはずだ。そのはずだった。





「りなおはよー」

涼音はいつも元気だ。でも、私は相変わらず元気がない。天気もここ1週間覚束無い。返事も1週間帰ってこない。

大丈夫なのかな?




「今日は、皆さんに大事な話があります。赤石優君ですが、母子家庭だったんですが、先日お母さまがお亡くなりになられました。明日から学校に来る予定ですが優しくしてあげてください。」




当たり前。当たり前。当たり前。

当たり前ってなんですか?

普通ってなんですか?

父がいて母がいて食卓があって楽しいことですか?それとも、生きていることそのものですか?死にたいと思ってしまったならもう当たり前じゃないんですか?

私の当たり前とは、ただ私がしいとおもうこと。でも、当たり前はすぐに見失う。

全人類はみんなができること、正しいと決めているもの、みんなが成し遂げれるものを当たり前という。ある一部のことを考えもせずに


先生から伝えられてから1週間がたった。

久しぶりに見る顔が私の3メートル前で立ち止まっていた。

「久しぶり。ちょっと色々あってゴメンね。」

確かに優だ。でも、輝きなんて言葉を知らないような気がする。

「気持ちは落ち着いた?」

「ああ。うん」

嘘だ。傷ついたその瞳は簡単に癒せるものじゃない。

「頼っていいからね」

「うん」



帰り際に尋ねられた。

「生きてるってどういうことなんだろうな。俺は、真っ当に生きてるつもりだった当たり前に普通の生活をしているつもりだった。俺、お母さん亡くなる前日のご飯の時無言で食べて、その日はなんも喋んなかった。当日も行ってきますも言わなかった。お母さんが余命宣告されてさ近々死ぬからって葬式代とか全部置いて死んだんだ。俺は、なんもしてあげれてないのに、、、

生きている意味ってなに?」


いつもの優じゃない。心の78パーセントは、薄汚れてる。簡単には、化合しないから汚れもこびりついて離れない。

明日の光さえ失いつつある。

本当は、教えてあげたい。

新しい朝はね綺麗なんだよ!一日の終わりはね美しい。世界の終わりは神秘的。

人生満喫しないともったいないって。これが生きる意味って。

でも、それは全部綺麗事なのだろうか



つづく



著者です!テスト期間があるため不定期の連載という形を取ります。

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