探偵部
夏蓮
第1話
「財布が、盗まれた?ですか?」
「はい。そうなんです。私の財布がなくなってしまったんです!!」
そう僕に、いや、僕が質問し、その質問に返事をしているけれど、おそらく彼女の本心としては、僕のすぐ後ろで、優雅に紅茶片手に、読書を読んでいる少女に話しをしたいと思っているだろう。
「………じゃあ、まず、盗まれた時の状況を教えてくれますか?」
僕の目の前にいる少女の完全にえ?あなたに話す理由ありますか?という顔をしていた。
それは、仕方がないことであり当然の反応でもあった。
何故なら、ここに来たということは、先ほども言ったように僕の後ろで優雅に紅茶を飲んでいる少女に用事があってきているのだから。
「え、えーと、あれは、私がトイレのために席を立った時でした───」
そして、少女は、仕方なしに、僕に話すのだった。お金を盗まれた時のことを。
****
財布が、盗まれた。
そんな話は、僕の周りでもよく聞く話だった。
よく起こってはいけないことなのだろうけれど、なんせこの学校。瑞浪高校は、生徒数がとても多いのだ。
どのくらい多いのかって?聞いて驚くだろう数だ。
なんと、全生徒数は、1万人。どうだ。驚いただろ?
だから、お金を盗みむなんてことは、もっといえば、なにかが盗まれることなんていうものは、日常茶飯事のことなのだ。
………と、こんなことはどうでもいいか。
少女の話は、こんなのだった。
1:盗まれた場所は、教室であったこと。
2:トイレに立った時は、盗まれないように、机の中に教材とともに綺麗にしまっていったこと。
3:教室に出ていった時には、誰も教室にいなかったこと。
こんな感じだった。
1、3については、特になにも言うことなどないだろうが、2については、少し不思議というか、彼女の性格が出ているようにも見える。
机の中に綺麗に教材と共に入れる人なんてそうそういないだろうから。
僕は、彼女が、部室から出って行ったすぐに
「…………で、どうします?……受けますか?それとも受けないませんか?」
僕は、そう聞くのだった。
「…………どうしようかなー………財布盗みなんてありきたりだし、なんの面白みもないから…………うーん、でも、やってみてもいいかな?とは、思うかな?」
少女は、そう言った。
何故、僕が、彼女にこの依頼を受けるのかの是非を聞いたのかというと、それは、この部活の決まりだからだ。
部長に決定権はあって、他の物に決定権などなくそして、否定する権利すらないというルール。
とても部長に全ての権利が行っていてよくないように見えるかもしれないけれど、僕は、別にこのルールがおかしいとは、思ってはいない。むしろ、このルールは、あるべきものだと考えている。僕が、人の下につくのが好きだとかそういう理由はない。
ただ、部長に全ての権利を与える。それは、裏を返せば、もし不祥事が起こった場合にも、その不祥事を起こしたのは、部長によるものだと説明することだってできるからだ。
つまりは、あれだ。自分の身を守るためだ。
そして、この部活。探偵部の部長である
それは、当然のことであって、別に可笑しいことでもない。
これが、もし、きちんとした法人団体なのだとしたら、そんなことをしたら、駄目なのだろうけれど、今僕達が、三神稲作という少女が行っているのは、部活であり、いわば、部活とは、遊びなのだ。
遊びというと言い方は、悪いかもしれないけれど、でも、僕は、この例えは、とてもあっていると思う。
だって、失敗したって、なにかを失うわけでもない。
信用を失うかもしれない?確かにそうかもしれない。けれど、別に信用を失ったところで、なにか、僕達の生活に影響なんてないのだから。
「そうですか。なら、受けてみてもいいじゃないですか?」
「…………じゃあ、そうする………」
三神先輩は、そう言うとまた手元の本へと視線を落とすのだった。
****
「あのー、丸山さんは、いますか?」
僕は、今2年生の教室にきている。
ちなみに、僕は1年生である。
丸山さんとは、あの時、探偵部へと依頼をしてくれた少女の名前だ。
「あ、はーい。私です」
そういいながら、手を振ってくるのだった。
そして、こっちに来てと言うのだった。
僕は、入りたくはなかったのだれど仕方がなく教室に入り、丸山さんの席へと行くのだった。
そして、僕が丸山さんの席の近くに行くと。
「あ、こちらが、探偵部で、三神さんの…………えーと、なにかをやっている子です!!」
丸山さんが、少し焦った様子でそう僕のことを紹介するのだった。
……なにかやっている子って。なかなか斬新な紹介だな。
まあ、名前も教えていなかったし、それに、僕がなにをやっているかなんて知らないだろうから仕方がないけれど。
「あ、僕の名前は、
そう僕が、自己紹介をすると、丸山は必死の笑いを堪えようとしていたが、その近くにいた丸山さんの友達であろう人は、爆笑していた。
「それで、丸山さん。依頼の件なんですけど………
僕は、少し間をあける。
丸山さんの表情は、少し暗かった。
………たぶん、断りを言いきたのだろうと思っているのだろう。
丸山さんも盗みなんてよく起こることだって分かっているだろうから。
「受けさせて頂こうかと思います」
「え?」
丸山さんが、間抜けな声を出した。
そして、徐々に目に涙を溜めて行った。
「………それっと本当なの?」
丸山さんの声は、震えていた。
「はい。嘘じゃありません」
「…………ありがとう………」
丸山さんは、感謝の言葉を言うのだった。
勿論僕にではなく。三神に対して。まだ、依頼を完遂しているわけでもないのに。
でも、丸山さんは、財布が自分の手元に戻ってきたように嬉しそうにしていた。
……………三神稲作って自分は、凄い信頼されているんだな。
と僕は、毎回思うように、今回もそう思うのだった。
三神稲作の依頼達成率は、100%だ。失敗をしたことがない。
依頼されれば、絶対成功する。そんなふうに言われている。
だから、きっと今僕の前で泣いている丸山さんは、もう安心しているのだろう。
自分の手元に大事なものが返ってくるのだと。
「では、依頼が、無事成功しましたら、また、呼びに来ますね」
僕は、そう言って教室を出ていくのだった。
そして、探偵部の部室に行くのだった。
****
二日後。
「あ、誠実君、そこの………本取って……」
三神先輩が、僕に、そう頼むのだった。
三神稲作という少女は、とても読書が好きだ。
「わかりましたよ」
僕は、ため息をつきながらも僕は、本を三神先輩に渡した。
それから、僕と三神先輩の間には、しばらくの間沈黙が続いた。
僕は、依頼の件はどうなったのだろうかと思い、三神先輩に聞いてみた 。
「………そういえば、犯人はわかりましたか?」
「……………………うん……………」
三神稲作という人物は、集中すると返事がとても雑になる。
「そうですか。じゃあ、犯人を教えてください。僕が取り返してきますから」
それが、僕の探偵部での役割。依頼されたものを持ち主の手元に戻すために、取り返しにいくという。
僕が、いない時にどうやって取り返していたかのかは、僕は知らないけれど、というか、別に知っても意味がないのだからどうでもいいのだけれど。
そして、三神先輩は、
「……………美香先生………」
と、犯人の名前だけを言うのであった。
そして、USBを僕に差し出した。
「わかりました」
僕は三神が差し出したものを受けとると、自分の役割をしっかりこなすべく探偵部の部室を出ていき、美香先生がいるであろうところに足を運ぶのだった。
****
「美香先生は、いらっしゃいますか?」
「あ、はい。私なら、ここにいますけど?」
美香先生は、僕の顔を見て貴方誰?という顔をしていた。
………まあ、2年生の先生ですもんね。
美香先生は、とても優しいそうな感じで、悪事とは無関係な存在のように見えた。
………人を、見た目で判断するなってやつだよな。
「あ、少しお話がしたいので、お時間宜しいですか?」
「……?ええ、まあ、少しなら」
「じゃあ、多目的ルームにいきましょうか」
「あ、はい」
そして、僕達は、多目的ルームに移動するのだった。
そして、僕は、多目的ルームに入ってすぐにこう切り出すのだった。
「単刀直入に聞きます。貴方は、先日生徒の財布を盗みましたか?」
美香先生は、一瞬だけどどうしてそのことをという顔をした。でも、すぐに悟られまいと、冷静な顔に戻って。
「………えーと、なんのことでしょうか?」
………とぼけるつもりか。
その行動事態は、当然のことである。だって、人間なのだから。
それに、美香先生は、絶対にばれるわけがない。そう思っているはずだから。
「あ、ご存じではありませんでしたか。貴方のクラスで財布が盗まれるということが起こったことなのですけど?」
「え!?そんなことが、あったんですか!?」
………とてもわざとらしい。少し棒読みになっている。
「はい。そうなんです。貴方のクラスで、生徒の財布が盗みまれたんですよ」
「そうなんですか…………じゃあ、これは、その事件を私の知らせるために私のところに来てくれたってことなのかしら?」
先生は、少し余裕が戻ってきた様子だった。
そして、先生はこう思っているはずだ。これで、私は逃げれる。と。
「いえ、違うですよ。さっき僕、言いましたよね?犯人は、先生ですと」
僕は、そう先生に言うのだったが。先生は、
「はぁ?いや、だからね。さっき私も言いましたけど、私じゃありませんし。というか、私は、先ほどまで生徒の財布が盗まれたということ自体先ほど知ったのですよ?」
「……………」
「だから、君は、私にその事実を教えに来てくれたのですよね?」
「……………」
「それに、これは、その財布が盗まれた生徒に対して失礼なことにあたるのかもしれないですけど、財布が盗まれることぐらいこんな大きい学校だったら、よくあることなんじゃないですか?それに、盗まれる方が悪いんですよ」
………盗まれる方が悪い。それは、確かにあっていることだ。
絶対的に盗まれる方が悪いのだ。それだけ自己管理ができてないんだから。でも、それを、教師という立場にある人が言っていいものなのかと思う。教師であるならば、生徒のために動くべき存在であるはずなのだ。
それに、財布は盗まれることぐらい、こんな大きい学校ならよくあることなんじゃないですかという発言。それも、言えている。
これだけ、大きい学校であれば
絶対に、起こりうることだし。それに、その起こったことを全て突き止めて、今後起こらないようにするなんていうことは、土台無理なことだ。でも、教師がそんなことを言っていいものなのかと思う。教師であるならば、これ以上同じようなことが起こらないようになにか対処するべきであるはずだし。することが仕事の一部だと思っている。
なのに、この人は、自分が、盗んでいることを隠したくて、それだけのために、盗みということ自体を正当化している。
………僕は、そんなことは、許せないし、絶対に許してはいけないと思う。
「じゃあ、まだ、私やることがあるから」
そう言って、美香先生は、多目的ルームから出ていこうとした。
「……………貴方は、よくそんなで教師をやっていれますね……」
僕は、とても低い声でそう言った。
この発言は、暴言と取られるものだと自分でも分かっていた。でも、言わなくては、僕の気がすまなかった。
…………証拠だけを提示すれば終わることなのに。
「はぁ?あ、貴方なんてことを言っているのですか!!」
美香先生は、僕に怒鳴りつけてきた。
「なんてこと?僕は、ただ、単純自分が思ったことを言っただけですよ。それが、どうしたというのですか?」
僕は、少し挑発気味そう言った。
「だから、教師に向かってなにを言っているのですかと言っているんです。私は!!」
「なんですか。それは、僕には発言権がないということなんですか?」
「そうは言ってません!!ただ、教師に向かってといったのです」
「教師だから、偉いんですか?いち生徒は先生に発言する許可がいるのですか?」
「そんなことは、言っていません。発言内容自体について私は言っているのです!!」
「はぁ?発言内容にですか。僕は、別に可笑しなことは言っていないはずなんですけど?」
「はぁ?可笑しなことを言っていない?」
「はい。そうです。僕は、先生に向かって当たり前のことを言っただけですので」
そう言うと先生は、こっちに向かって歩いてきて僕の胸ぐらを掴んできた。
「貴方、覚悟できてるんですよね。退学するかもしれないということに」
先生は、そう僕に言ってきた。
僕だって、それくらいは分かっている。それに、僕は退学には、絶対ならないと思っている。
だから、僕は、余裕そうな表情をして。
「先生こそ、ご退職の覚悟があって、こんなことをしているのですか?この状況を誰かにみられたら、やばくないですか?このご時世虐待だのなんだのあるじゃないですか?まあ、もしご退職にはならなくても、この状況を生徒に見られたら相当先生は信頼をなくすでしょうね」
僕は、先生のことを挑発した。
先生は、みけにしわをよせて
「……… っへ、そうですか。じゃあ、離してあげますよ」
そう言って僕のことを先生は離すのだった。
「まあ、いいです。とりあえず、今から校長先生のところに行きます。貴方もついてきないさい!」
「わかりました」
僕は、素直に先生の後をついて行くのだった。
****
そして、校長室。
「校長先生、今この生徒が私に対して暴言を言ってきたのでつれてきました」
僕は、その言葉を聞くと。先生は小さい人間だなと思った。
「そ、それは、本当のことかな?」
と、校長先生は、僕に問いかけてきた。
「ええ、本当のことですよ。僕は、この人に対して貴方は、よくそんなで教師をやっていれますねと言いました」
校長先生も本当に言ったのだと思わなかったのだろう。
だから、とても驚いたという表情をしていた。
「………それが、どれだけのことか君は、わかっているんだよね?」
「はい。勿論分かっていますよ。退学もやむ無しそうも思っていますから」
僕の口から退学という言葉が出たことに校長先生は、また驚いている感じだった。
「………そうか。なら、今から退学の手続きをする」
そう言うと校長先生は、校長室から出るようにと僕達に言うのだった。
「あ、校長先生出ていく前に、ちょっといいですか?」
「なにかな?」
「あ、いえ。ただ見てもらいたい映像がありましてね」
「見てもらいたい映像?」
「はい。これが、あれば、僕を退学させた理由についての最も重要な証拠になるでしょうから」
「わかった。じゃあ、出ていってくれ」
「わかりました」
****
いつものように、僕は、友達と一緒に昼飯を食べていると校内放送が入った。
『上崎くん至急校長室までくるように』
と。僕と一緒に昼飯を食べていた友達は、なにお前なにかやらかしたのか?言ってきた。
それに、僕は、なにもしてないはずと返すのだった。
校長室に入ると。
「上崎君、君に謝らなくてはいけないことがあったから、急に呼び出すことになってしまった」
「はぁー、そうですか。あ、それで、映像は、しっかりと見てくれたのですか?」
「ああ、見た。………まさか、あんなことがあっただなんて知らなかった………校長としては、とても残念だと思ったさ」
僕は、校長先生に渡した映像は、美香先生が生徒の机を漁って、財布を取り出す映像だったのだ。
「………あの、映像は、どうやって取ったのかな?」
「さぁ?僕は、知りません。その秘密を知りたいのなら、三神稲作という生徒に聞いてみてください。それでは、失礼します」
そう言って僕は、校長室をあとのするのだった。
****
後日財布は、丸山さんの元に戻った。
丸山さんは、また泣いたらしい。なんでらしいなのかと言うと、それは、僕じゃない人が渡したからだ。
それで、美香先生の処遇についてだが、退職という最悪の事態は免れたらしい。でも、美香先生は、とても大切なものを失うことになった。信頼という大切なものを。
美香先生の動機は、すぐにでもお金が欲しかった。
そういう理由だったらしい。
それで、お金をすぐ手にいれるのは、一番生徒から盗むのが、手っ取り早いと考えたらしい。
それに、絶対にばれないとも思っていたらしいのだ。
………まあ、そうだよね。だって、人がいっぱいいるこの学校で、誰が盗んだかなんて分かりもしないと思うのは、当然なことなだからさ。
まあ、先生が運が悪かったとしか言い様がなかった。
三神が、面白そうと思わなければ、おそらくばれていなかっただろうから。
まあ、運命というものは、そんな感じのものだ。
意図しないことが起こるのは、防ぎようのないことだから。
「………あー、疲れたよ………」
そんな声を漏らすのは、我が部室の部長である三神稲作だ。
「………ねえ、誠実君は、…………私のことどう思う?」
「唐突ですね」
「……そうだね?」
「どう思う?とは、どういう意味ですか?」
「ん?普通にさ。君からみた私を知りたくてさ」
「僕から見た、三神先輩ですか。………うーん、面倒くさがりで、僕をよくパシる先輩ですかね」
僕は、少し皮肉気味に言った。
「なに、それ…………それじゃあ、私完全に嫌な先輩じゃないそれじゃあ………」
「はは、まあ、そうかもですね。三神先輩は、嫌な先輩なんですよ。でも、とても凄い人とも思っていますよ」
「とても凄い人?………私のことが?」
「はい。そうです。貴方は、どんな事件でも1日で解決してしまいます。それに、人からの信頼がとても厚いのです。それも、到底僕じゃ及ばないほどに」
僕は、いつも思うのだ。この人は、どんな手を使って事件を1日で解決しているのだろうかと。今回の事件だってそうだ。
教室には、監視カメラなんていうものは、設置されていないはずなのに、あんな映像を用意してしまうのだから。
「………ふーん、………誠実君から見た私ってそんな感じなんだ」
「はい。そうですよ。僕からみた三神先輩は、そんな感じの先輩なんですよ」
そして、僕達の間にしばらくの沈黙ができるのだった。
そんな沈黙を破ったのは、意外な人の声だった。
「………あのー、少しいいですか?」
扉の向こう側からそんな声が聞こきた。
「はい?なんでしょうか?」
そう言いながら、僕が扉を開けると、丸山さんがいた。
「あ、お礼を言いたくて来ました」
「そうですか。じゃあ、少し待っておいてくださいね。今すぐ三神先輩を呼んできますから」
「あ、そのー、お礼を言いたいのは、貴方なんだけど?」
「え?僕にですか?」
「うん」
僕には、全く意味が分からなかった。丸山さんが僕にお礼することなんてないはずなのに。
「あのー、実は、私の財布を盗んだのは、美香先生だっていうの美香先生が自分から言ってきたんだ」
それは、僕も予想していなかった。あの先生のことだからそのままやり過ごすと思っていたから。
「それで、美香先生は、私に、誠心誠意を込めて謝ってくれたの。私も、初めは、驚いたし、どうして?って思った。でもね、私は、先生のことは、嫌いには、ならないと思うの。だって、先生は、私に対して真剣に謝ってくれた。確かに、人の物を盗むことは、悪いことだけど、でも、先生は、自分がしたことがとても悪いことでだってことを分かっているみたいだったから。それに、盗むまれる私も悪いし」
「そうですか」
僕は、別にこの告白になにか言うことはしない。別に僕には、関係ないことだから。
「うん。………それで、本当のありがとうね。上崎君」
そう言うと、丸山さんは、満面な笑みでを作るのだった。
「それじゃあね。…………あ、そういえば、いい忘れるところだった。美香先生がね、ありがとうって言っていたよ」
「はは、そうですか。これからは、財布盗まれないようにしてくださいよ」
「うん、それくらい分かってるよ」
そういうと、丸山さんは、じゃあと言って帰っていくのだった。
………美香先生もしかして、恥ずかしがり屋だったのかな?それともプライドの問題で自分では言いたくなかったのかな?
そのどっちなのかそれともどちらでもないのかは、僕には、分からないけれど、でも、お礼を伝えてくれたのは、嬉しかった。
「………誠実君、そこの本取ってー……」
三神先輩が、いつものようにそう僕に言うのだった。
僕は、
「はいはい、分かりましたよ」
と言いながら、三神先輩に本を渡すのだった。
探偵部 夏蓮 @ennka
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