みなさんは幼稚園を卒業しましたか?
私は所謂ホイ卒で、こうして初めて幼稚園児たちの生活を垣間見ることになったので、興味津々で本作を拝読しました。
タイトル通りこの小説には幼稚園生の探偵・玲子と怪事件があるわけですが、その小さいながらも重大な事件の描かれ方が本作の見どころです。
楽しみにしていたお昼ご飯を誰かに食べられてしまう、その脅威を大真面目に取り上げて描き切るのは並大抵じゃありません。
作者様の手腕により、事件発生のライブ感から名探偵の玲子ちゃんが場を取り仕切り解決するまで、一連の流れを軽快に描写しつつも情景がパッと浮かぶようなコミカルさで描かれるのは小気味よく、本作を読むことで素敵な時間をすごせました。
アンパンマンパンをかじった犯人とは!?
正義とは何か!?
そんな小さな謎と大きなテーマが同居する、面白い短編小説です。
「事件あるところに探偵あり」とはよく言ったもので、この世で一番事件が起きやすい空間である幼稚園に探偵がいないはずがない。
1日に何件も事件が起こる恐ろしい空間で、どんな事件でも真摯かつスマートに解決する榊崎玲子は間違いなく名探偵(※ただし幼稚園生レベル)だ。
数々の事件(※ただし幼稚園生レベル)を解決出来る彼女には、確実に裏打ちされた知識と経験が備わっている(※ただし幼稚園生レベル)。
事件と彼女を取り囲む登場人物たちは、個性豊かかつ感情豊かに物語を彩る。ここに幼稚園生だからこその自然かつ大きな振り幅が存分に生かされ、ともすれば下に見てしまう幼稚園という舞台に、我々の想像以上の奥深さが生み出されている。
その可能性をいち早く見出だし表現した著者のかぎろ氏の慧眼には驚きを禁じ得ない。
皆様には、同氏が描いた「ドッタンバッタン大学ドゥルルルエンジョイヒィーヤ学部チョモランマタンタラタッタン学科」(※幼稚園生レベルの記憶力)も併せて読んでいただきたいと切に願う。