都市伝説クラッシャー
達見ゆう
都市伝説クラッシャー
アタシは美優。SNS映えするキラキラ女子を目指してるの!
でもぉ、キラキラするにはお金かかるの。ブランド品買ったり、海外旅行したり。だから少しでも安いお部屋の引っ越しを考えているの!
でも、ひどいのよ。不動産屋に行って名乗るとみんな、顔をしかめて「うちには紹介できる物件は無い」ですって! ひどくない? いいもん、他にもお店はあるから!
「先輩、今のお客さんになんで物件を紹介しなかったのですか? 事故物件でもいいと言ってたのだから、いくらでも紹介できたのに」
「バカ野郎、それがまずいんだよ。彼女は要注意人物としてブラックリストに載ってる」
「あ、家賃滞納とかですか?」
「いや、ドアや窓の扱いがひどくて必ず壊してしまう。なかなか開かなくなってしまうので毎回修理をしなくてはならなくなる」
「ああ、なるほど。でも窓はともかく、ドアは今や住人が変わるごとに取り替えるじゃないですか」
「あと、あの女は事故物件クラッシャーなんだ」
「へ?」
「彼女が住むと事故物件の原因が消滅する」
「あれですか? 図太過ぎて幽霊が逃げ出すとか? 事故原因が無くなるならクリーンな物件として紹介できるからいいのでは?」
「いや、そんなもんじゃない」
「って、なんですか」
「ほら、都市伝説とされているが、人面犬の話は知ってるだろ?」
「ああ、人の顔をした犬が現れる話でしたよね。呪いでしたっけ」
「ああ、それが出現するという地域に彼女が住んだら現れなくなった。彼女が引っ越した後に、部屋を点検したら、人の顔をした犬が死んでいたそうだ」
「それって……?」
「部屋には捨て忘れたらしいゴミ袋が残っていて、中身はドッグフードの空袋とチョコレートの空き箱が入っていた。意味はわかるな?」
「確か、犬にはチョコは毒でしたよね」
「噂だが、SNSに『飼い犬にも血液サラサラになってもらう』とチョコをあげている画像があって、炎上していたそうだ。まさか飼い犬が人面犬とは思わなかったけどな」
「うわあ……。って、人面犬も犬だったのですね」
「次に住んだ物件は古いアパートでな。天袋には前の住人のストーカーが潜んでいたのだ。住人が引っ越してもストーカーはなぜかそのまま潜伏を続けていた。間もなく次の契約が決まり、彼女が住むことになった」
「それで?」
「彼女は業者のクリーニングやゴキブリ駆除のオプションを付けずに自分で掃除を始めると言ってな。物件を決めた翌日の夜に大量のゴキブリ退治の薬を焚いたのだ。しかも、部屋に一つずつではなく、押し入れにも一つずつ設置という徹底ぶりで。そのまま入居日まで放置してたら異臭がして……」
「もういいです、先輩。言わなくても先がわかりました」
「だから、彼女は『都市伝説クラッシャー』とも呼ばれているが、ある意味被害が拡大するから敬遠されてるんだ」
「その彼女が物件探しをしていると言うことは……」
「ああ、都市伝説をぶち壊したのかもしれない。今の住居は確か、住人に人面蒼が出来て精神が病んでしまうという物件だったはずだが」
「人面蒼って、確かナイフでそぎ落としても出て来るやつですよね。その人面蒼さんはどんな目に遇っているのでしょうか」
「いや、怪異現象にさん付けするなよ」
「話を聞いてたら可哀想に思えてきて」
はあ~あ、疲れちゃった。結局あちこち回っても断られてばっかり! 失礼しちゃうわ。
こんな日はセルフエステするに限るわね。でも、最近肩に変なイボができたの。まるで、人の顔みたいなの! ウケるぅー!SNSにあげたらいいねが沢山付いちゃった☆
でも、コメントには呪いだとか人面……読めないけどイボじゃないって沢山書かれてたけどぉ、よくわかんない。
そういえば、お手製のボディローションを塗ってるのだけどぉ、イボの顔がだんだん嫌そうな顔つきになってげっそりしているのよね。あれって、イボ取りの効き目あったかな? 焼酎の中にお肌にいいけど苦~いアロエを入れただけなのにな。あ、でも、焼酎を切らしてたからおばあちゃんから送られてきたムカデ入り焼酎を使ったからかな? 口みたいなところに塗る度に顔をしかめているような……ま、気のせいだよね☆ 早く帰らなきゃ。
あ、でも、今日はお手入れできないや。これからハワイへ行くの! やっぱりキラキラ女子はハワイよね! 友達の所に預けた荷物を取りに行って合流してから、直行で成田だった。いっけなーい、忘れてた、テヘ☆
俺は逃亡中の殺人犯だ。身を潜める場所を探していたら、この部屋が鍵がかかっていなかった。玄関に置いてあった靴からして主は女みたいだな。しばらく主を脅して潜伏させてもらって、美人だったら楽しませてもらおう、へっへっへ。しかし、この部屋はなんか変だな。殺風景なのはもちろんだが、冷蔵庫以外の家電はいやに高いところに置いてある。
まあ、風水ってやつかもしれないな。女は占い好きだし。
それにしても、さっきから降り始めた雨が激しくなってきた。ずぶ濡れになる前にこの部屋を見つけたのはラッキーだったぜ。じゃ、ベッドの下で凶器を持って待機するか。
「美優、早くー」
「待って、土砂降りでずぶ濡れー」
「もう、飛行機の中で拭きなよ」
「そうするー! ホントについてないわ」
「え、でも美優の住んでいる所に大雨洪水警報でも特別警報出てるわよ。洪水に遭わなくてラッキーじゃない?」
「えー? そうなのぉ?」
「でも美優の部屋は一階だから浸水するんじゃない?」
「うん、大雨が降ると床上浸水どころか二階まで水が来るの。だから訳有り物件で安いんだ」
「えー? そうしたら家電全滅じゃない?」
「大丈夫!家電は中古の安いやつで揃えてるし、全部ロフトに置いてあるし、それでもやられちゃうけどね。でも、保険かけてあるもん。以前、泥棒に入られてからはバッチリ!
あっ! いっけなぁい! カギをかけ忘れてた! 」
「え?! 浸水の前にそれまずくない?! 」
「うーん、ドアも窓もカギが壊れていて、外からは入れても、中からは簡単には開かないの。だから逃げ出せないはずだから警察に通報すれば大丈夫じゃないかな? まあ、こんな大雨に入る泥棒なんていないでしょぉ」
「もう、相変わらずいい加減ねえ、美優」
「えへへー」
都市伝説クラッシャー 達見ゆう @tatsumi-12
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます