御日様虫

安良巻祐介

 

 向日葵の花によく似た虫が、家の壁を這っていた。

 図鑑で調べるとそのものずばり御日様虫と言うらしいが、非常に悪性の毒を持ち、触れただけでも爛れるらしい。

 形状からしてどういう動きをするか分からず、棒などではたき落とすのも気味が悪いので、少し離れたところから冷却スプレーを浴びせたところ、ジリジリジリと音を立てて色が変わり、すとんと地面に落ちた。やれやれ。

 用心しながら改めて見てみれば、まるで金貨のように冷たく光るきれいな黄金色になっている。それはあたかも、生きている現実の太陽が子供向けの絵本のなかに閉じ込められてしまったかのようだった。

 また、これは偶然だろうが落ちたのはこちらから見て西側であった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

御日様虫 安良巻祐介 @aramaki88

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ