第24話 砂場のオバケ
episode 24 砂場のオバケ。
ひどいイジメだった。
だって殺しちゃったんだもの。
「まさか、死ぬとは思わなかった」
なんて、三人ともいってるけど。
うそだ。
何回もあんなイジメをやっていれば、なれてくる。
どこまでやれば、失神する。
これからさきに進めば、死ぬ。
そんなことわかっていたはずだ。
アイツラには快感だった。
イジメラレル生徒には、死の恐怖だった。
アイツラは死の恐怖でクラスを支配していた。
怖くてだれもイケニエの子を助けられなかった。
みてみぬふりして、ぼくらは、クモの子を散らすように逃げた。
だから夕暮れどきの校庭にはだれもいなかった。
イケニエは砂場に連れていかれた。
みんな二階の教室からそれをみていた。
「殺されちゃうよ」
とはだれもいわなかった。
ただ、だまって恐怖にふるえながら砂場をみおろしていた。
あらかじめ掘って置いた穴にイケニエは埋められた。
頭まで砂をかぶせられた。
アイツラは、たのしそうに、その作業をしていた。
「おいでよ。こっちへおいでよ。あそぼう。いっしょに、あそぼう」
ソンナ声が砂場でする。
何人もの生徒がソレを聞いた。
でもそれを聞いた生徒のほとんどは――。
砂場に顔をおしつけて死んでいた。
だから生き残っている生徒の口から。
「こっちへおいでよ」
という声を聞いた。
……と告白されるまでは、だれもそのことをしらなかった。
砂場から声がする。
「こっちへおいでよ。いっしょに、あそぼう」
学校の、いまは伝説となっている。
殺された生徒のリベンジがはじまったのだ。
「こっちへおいでよ」
呼ばれるのがイジメッコではなく――。
二階で死の遊戯を目撃していた生徒だった。
なにもしないで、見ていただけ――。
友だちを助けないで――。
殺されるのを、見ていただけ――。
二階から見ていただけの子が呼ばれていた。
殺すより、罪が深かったのだ。
ただ見ていて、イジメッコの死の遊戯を黙殺した。
ほくもその目撃者だった。
そのことが恐怖をさらにつのらせた。
なにもしなかった子が、呼ばれてつぎつぎと死んでいく。
友だちが殺されるのを黙認していた者が――死んでいった。
じゃ、イジメッコはどうなったのか。
ある朝、砂ダンゴを口いっぱいに詰め込まれて死んでいた。
砂場に川の字になって、三人きちんと並んで死んでいた。
もちろんあの子と同じように窒息死だった。
いまでもあの砂場はアル。
でも砂場にはだれも近寄らない。
砂遊びする子もいない。
ぼくらの学校の都市伝説だ。
「こっちへおいでよ」
とある田舎町の学校の怪談 麻屋与志夫 @onime_001
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