俺の思ってた異世界ライフとは全く違うんだが

青葉ラノ

第1話 何故か俺は牢獄にいます

 青空にぽつんと1つだけ、ひとりぼっちに浮かんでいる太陽の光がカーテンのすき間から差し込み、ゆらゆらとかげろうのように揺れて、チリリリリと鬱陶しい夏のセミの鳴き声のような目覚ましの音が彼、立花司たちばなつかさの部屋に鳴り響く。


 立花司は勢いよく振りかぶり時計をとめて、まだ開ききってない目を親指でごしごしと強く擦り、フラフラとしながら起き上がると、カーテンを開き数秒間まばゆい光を浴びまたバサッとカーテンを閉め、フカフカのベットの上へ飛び込む。



「まだ......眠い...」

 枕に顔をうずめ、足をバタバタさせながら声をもごもごとした声を発するとコクリとまた眠りにつく。


 司が眠りについて数分が立ち、またまた目覚ましの音が部屋中に鳴り響くが司は止めるどころか起きることが無かった。


 いや、正しいことを言えば司は目を覚まし起き上がっていた。

 だが目覚ましの音は聞こえていなく、その前にいま現時点、司のいる空間はほんの数分前までに寝ていたはずの自分の部屋ではなく見覚えのない薄暗い部屋いにた。


 そこはホコリ臭く冷たい床、扉は鉄格子で、固く厳重に何重もの鍵がかけられている。


 うえを見上げると微かにろうそくの灯りがともされており、不気味にゆらゆらと揺れている。それを見た司は驚きのあまり声が出ない。


 深呼吸を何度も何度も繰り返し、しばらくして落ち着きを取り戻した司は周りを見渡す。



「っ......えーと......ここはどこ...だ? 見渡す限り暗い、そして臭い! 床は冷たいし錆が目立つ鉄格子と言い......」


 何かを察したであろう司は冷や汗をボタボタとかきながら唖然とした顔で棒立ちしている。


「ここってもしかして......監獄の中ぁぁ!?」

 そう大声で汗とヨダレと鼻水をボタボタと垂らしながら叫ぶと頭を抱え、ブツブツと小さな声をもらし、部屋中をじたばたと歩き回る。



 (いやいや待て待て待て、おかしい…気づいたら牢獄に居たなんかありえるか普通!? 俺はなんの悪いこともしてない善良な一般市民だぞ?だからこんな俺によって牢獄にぶち込まれることなんてまぁあるはずがない。 だからこれは夢なんだ! そうだそうだよ夢に決まっているじゃないか!)


 ぐるぐるとしていると、石で出来ているであろうコケが生え、ヒビがあちらこちらに入っている壁にものすごい勢いで足をぶつける。



「ぎゃぁぁーー!? 痛っ! 」

 その大声はこの牢獄の中に響くどころか建物全体に響き渡り、となりの部屋からうるせぇー! というガタイの良さそうな野太い声とともに、ガシャン! キーンと何か大きな金属を投げ飛ばした音がする。


「ヒィっ!? すみません! すみません! こ...怖ぇ……」


 はぁ...もうこんな変な夢はゴリゴリだ......どうせ夢を見るなら女の子とあんなことこんなことするような夢がいいんだが......


「っくよ......夢ならもっとまともな夢あるだろうがよ! 一体なんなんだ? 俺はなんか悪いことでもしたか? さっきぶつけた小指ジンジン痛いし、ヒューヒュー風が寒いし臭いし、......いや...まてまて、夢って五感じるのか?」

 司は思わずそう声を漏らした。


 考えてみるとおかしな点が多々ある。

まず俺はあまり夢を見ない。そして夢にしては長いし妙にリアルすぎる......。


 もしかして………

 その瞬間バケツいっぱいに入ったマイナス196度の液体窒素を勢い良くかけられたかのように背筋が凍る。






 本当にここは牢獄なのかああ!?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

俺の思ってた異世界ライフとは全く違うんだが 青葉ラノ @akiyom

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ