1LDKAI
子山妙
プロローグ
「和子」
「……ん?」
「難しい顔をしてる」
「……」
「何か難しいことを考えてる?」
「……ううん」
「そう」
「……」
「…………」
通い慣れた静かな居間で、私達は隣合って座っていた。土色のカバーに包まれたソファの上に、人間の形をした体がふたつ。大きさはそれほど変わらないのに、片方だけ明らかに深く沈み込んでいる。
「太った?」
「はい」伴子は、幼稚園児の姪っ子に話し掛けられたときのような、どんなことを言ってくれるのか楽しみで仕方がないといった表情ですぐに応えた。まるで私の言葉が問い掛けではなく呼び掛けだったかのように。
「太らないでしょ」
「いいえ、太りました。確かめてみますか?」
そう言って伴子は私の手を自分の腹部へと導く。私はその手に抗うことができない。
1LDKAI 子山妙 @myokoym
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