8/18漫画発売記念
漫画化記念 後の祭り
「……祭り?」
「ああ、祭りをやらんとな」
城塞都市ダンダムに入城して早3週間、打合せの終わり際にガロスが妙なことを言い出した。
本日の打合せメンバーは、俺、ガロス、エメリーヌの3名で、内政関連の打合せだった。
「やらなきゃいけないものなのか?」
「やらなきゃダメだろ」
助けを求めるようにエメリーヌに目をやると、神妙な顔でコクリと頷いた。
「あなた様、祭りを行ってこその施政者。祭りを行わない施政者は庶民に侮られます」
「庶民にとっちゃあ貴重な出会いの場だしな!」
急にゲスい感じになった。
「……祭りってどんなのだ?」
「土地と先祖に感謝する祭祀と、後はどんちゃん騒ぎだな。祭祀も、祭壇でも用意して適当にやりゃいいのさ」
適当と言われても、櫓太鼓に盆踊り的な純和風な祭りしか思い浮かばない。太鼓ってこっちの言葉だと何て言うのだろうか。
「楽器はあるのか?」
「んぁ? 楽器か? その辺にある物を、適当に叩けばいいんじゃねぇか?」
アフリカンスタイルな感じなのかな。適当過ぎてイメージがぼんやりだ。ヨーロッパの祭りで思い浮かぶのは、牛追い祭りかトマト投げ合い祭りくらいだ。どっちもスペインか。出会いもあるならそういうのじゃなさそうだしな。
「……とりあえず、金を出せばいいのか?」
「そうだな。設営と運営の金か酒を出しときゃ後は勝手にやんだろ」
なるほど、運営委員的なものに丸投げでいいのね。そりゃ商人とかもがっつり刺さってくるだろうしな。
「……出会いはどうやるんだ?」
「あなた様」
ひやりと質量をまとっているかのような重い空気が張り詰める。
「ま、その辺はアレだ。女性主体だからな。奥方に聞いた方がいいだろうよ。じゃあな」
空気に飲まれる前に、風のように撤収するガロス。熟練傭兵の危機感知能力は半端じゃなかった。
「……あなた様」
戦闘能力のないエメリーヌだが高貴な生まれだからか、時たま得体の知れないプレッシャーを発生させる。
「庶民の恋愛事情を知りたかったのだが」
「……そうですわね」
冷ややかだった切れ長の瞳が少し緩む。迷い人なのだから、常識知らずは勘弁して欲しい。決して浮気をしたくて聞いているわけではないのだ。知的好奇心なのだ。ホントだよ?
「普段、女性はあまり外出しません。人目につくと夜這いを誘っているようで、はしたないからなのですが、祭りは違います。女の戦場なのです」
さらっと聞き逃せないパワーワードが盛り込まれているが、話の腰を折るのも良くないので適度に相槌を打つ。
「祭りの混雑の中で気に入った男性がいれば、お尻を掴むそうです。そして、互いに気に入れば……」
「……気に入れば?」
なんか男女逆だが、江戸時代にそんな誘い方していたとネットかどっかで読んだ気がするような……。
蠱惑的な笑みを浮かべたエメリーヌに手を引かれ、立ち上がった俺のケツはガッチリとエメリーヌの魔の手に落ち、別室へと連行されていくのだった。
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明日18日に漫画版ファンタジーには馴染めない1巻がフロンティアワークスさんのFWコミックスより発売になります。
店頭でみつけたら是非お手に取ってみてくださいね!漫画になるとまた面白かったです。
ファンタジーには馴染めない 〜アラフォー男、ハードモード異世界に転移したけど結局無双 nov @9raso
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