In the rain.

@honeyk

第1話 もう、大丈夫

今日、彼と会ってきた。半年ぶり。

日焼けした肌、少し延びた髭、すこし痩せていた気がした。晴れの予報が夕方から雨。


1年前、私たちは別れた。あの日も雨が降っていて泣きながら雨に濡れて、帰ってすぐお風呂に入り声を潜めて泣いた。

結婚を踏まえて同棲を始めるところだった。嫌いになって別れたわけじゃなくて、ただお互いがお互いを理解し合えなかっただけ。


付き合っていればなんでも言えた。別れてしまったらもうなんにも言えなくなった。不満よりも、好きなのにどうしてこうなってしまったのか後悔するばかりで悲しくなった。


彼と離れてしまっても死ぬわけじゃない。でもすべてがダメになる。


・・・


半年ぶり、普通にごはんを食べてたわいない会話。1時間半くらい。何も切り出さない彼にそろそろ行こうかと私は言った。

車で家まで送ってくれた。車の中で少しまた話したけれど、それはただのたわいない会話で。

私は帰ると笑顔で切り出した。付き合っていた時に彼の家に置いていたものを返してもらった。大きめのボストンバッグ1つ。

悲しくならないように笑って中身を確認しようとして、そんな私を彼は止めて、家でみて?と真顔で言った。


荷物をもって明るく別れをつげて歩きだす。後ろはもう見ない。あの時とは車も違うし、彼はきっと、絶対にもう、ブレーキランプで愛をささやかないから。


部屋に入って荷物を広げる。1年ぶりに見る中身、、、普段つけないような可愛い下着とパジャマ コスメ、、思い出が込み上げて悲しくなるのを必死でこらえる。お金、、二人で同棲に向けて毎月同額ずつ貯めていたお金の半分だった。それを見た瞬間、涙が流れた。毎月はやく一緒に住みたいとコツコツ貯めてきたお金、あの時の自分が自分の気持ちが可哀想で仕方なくなった。

あぁ、これでもう全部終わったんだなぁと心に重い蓋を閉められた気がした。


これで彼とも彼との思い出もわだかまりも全部おしまい。前に進もう。


もう 大丈夫。私はきっと大丈夫。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

In the rain. @honeyk

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ