10.
突然、また声を上げて笑い出した店長。
「兄ちゃん、そこまで李眞のこと好きなんて物好きだな。気に入った。何でも好きなやつ頼め。おじちゃんの奢りだ。坊も嬢ちゃんも頼め」
「それは悪いですよ……」
「会長、大人しく頼んだ方がいいよ。この人に何言っても無駄だから」
現に会長の隣には、ため息を吐いてメニュー表を見る2人。
原価が1番高いやつ、教えてあげようか?
「李眞、3人の注文聞いたら、そのままキッチン入ってくれ」
店長はそう言ってキッチンに戻る店長。
「相変わらず、世話好きなのかお節介なのか」
吐き捨てるように言って、稔はアイスコーヒーのみを注文する。
会長も同じくアイスコーヒーで、藍花はミルクティ。
遠慮してるんだろうな。
遠慮しなくても、私をキッチンに呼び出したんだから注文以外に何か作ろうとしているけど。
マニュアル通りに、注文が終わったらメニュー表を3人から貰い、キッチンへ入る。
案の定、店長はパンケーキを焼いている。
「注文は?」
「アイスコーヒーが2つとミルクティが1つです」
「何だ、少ねぇな。食べ盛りだろうが」
いや、これから夕飯だと思うんですが。
「李眞は坊と兄ちゃんのサンドイッチでも作ってくれ」
「わかりました」
手を洗って作業を始める前に、ちらっとカウンター席を見ると、ホール担当の女子大生たちが会長に話しかけている。
よくおモテるなぁ。
飽きないのかな。
「見てて嫉妬しないのか?」
店長も会長を見ていたらしい。
私の隣に来て、そんなことを言う。
「別に、いつものことですよ」
「だから、モテるから付き合わねぇのか?」
「それもあるけど、ただ気持ちがないだけ。自分のことにすら余裕ないのに、好きになんてなれるわけない」
「そうか」
店長は妙に納得して、もといた場所に戻る。
「少なくとも、あそこの3人はお前の味方なんだから、頼ってもいいと思うがな」
「頼るって、何を」
十分頼ってるよ。
頼りすぎかなって思うくらい。
カウンターに目を向けると、女子大生と話しているはずなのにこっちを見ていた会長と目が合った。
そして、目が合ったことが嬉しそうに笑う。
その笑顔を無視して、私は調理を続けた。
「それ終わったら、運んでくれ」
そう言って、店長はアイスコーヒーとミルクティを入れ始める。
私の調理も終わり、飲み物と食べ物をカウンターまで運んだ。
「お待たせしました」
会長と稔の前にアイスコーヒーとサンドイッチ、藍花の前にミルクティとパンケーキを置くと、会長は「え、頼んでないよ?」と訊いた。
「店長の奢りだって。遠慮なんてあの人に通じないから」
笑ってそう言えば、会長は申し訳なさそうに「いただきます」と言って食べ始めた。
生徒会長の不思議な告白 沢登 @QuietOcean
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