第5日「これ、年号押しできるやつですか?」

「ホンドタヌキと?」


「エゾタヌキ」


 顔を合わせた途端、復習が始まった。


「ウサギ科と?」


「ナキウサギ科」


 お返しにもちゃんと答えてくる。

 「さしすせそ」は正直どうでもいいし、こんなもんだろう。


「はい。よくできました。それじゃあ今日の分始めましょう」


 <10. 1086年に白河上皇が始めた、天皇に代わって上皇が政務を取り仕切る政治形態を何というでしょう?>


「院政だよなあ」


「これ、年号押しできるやつですか?」


「いや、俺に聞くなよ」


 1086年でググって、重要なトピックが出てこなければよい。

 ふむ。


「一応『後拾遺和歌集』があるみたいだぞ」


「なんですかそれ」


「いや、八代集だし、覚えようぜ。選者は藤原通俊ふじわらのみちとしだって」


 俺も若干怪しいけど。

 そういえば、八代集って、出るとしたら多答かピンポイントで答えさせるかって感じで、あんまり名数型で出ないよなあ。

 時代順だと新古今和歌集に落とさざるを得ないし、やっぱり8つもあると作りづらいよなあ。


「八代集ってなんですか?」


「なんなんだろ?」


「先輩、しっかり」


「だってねえ、なんか有名な、和歌集?」


 Wikipediaによると、「勅撰」であることが重要らしい。ほー。


「多答とかで結構出るから覚えとけ」


 そういえば、日本史の教科書にも出てた気がする。


「古今和歌集、後撰和歌集、拾遺和歌集、後拾遺和歌集、金葉和歌集、詞花しか和歌集、千載和歌集、新古今和歌集、の8つだな」


「いや多すぎますって! こんなの覚えられないですよ」


「こきんごせんしゅういごしゅういきんようしかせんざいしんこきん。ほら文字数減った」


「先輩だって、読み上げてるだけじゃないですか!」


「そうだな……」


 スマホをちらちら見ているのがバレた。


「ここまで増えると、語呂より理詰めじゃないか?」


「理詰め?」


「さすがに古今和歌集は知ってるじゃん」


 百人一首とかにもいっぱい出てるし。


「まあ、そうですね」


「古今があれば新古今もあるじゃん。最後じゃん」


「まあ、それもいいでしょう」


「これで2つ消えた。あとはなんだ……古今作ったらもう一個作りたくなっちゃって、でも丸っきり新規の顔するのも変だからつけたのが後撰なんじゃね?」


「適当……」


 語呂というか暗記法なんて適当でナンボだろ。覚えればいいんだ、覚えれば。


「あとはまあ拾遺集も聞いたことある気がするけど」


「『宇治拾遺物語』と混ざってません?」


「ぐっ。まあいいじゃん。拾遺集があって、その後継の後拾遺集もある。サン・ムーンに対するウルトラサン・ムーンみたいなもんだろ」


「いつの時代も一緒なんですねえ……」


 あっちはこっちほどスパン短くなかっただろうけどな。まあいい。


「まあこれで5つ消せたから、あとはごり押しでいけるだろ」


「残り、なんでしたっけ」


「えーと……金葉、詞花、千載」


「金曜日に歯科に行ったら洗剤もらえた、ってことで」


「明日、俺歯医者の予約入れてるんだよな……」


「しかも金曜じゃないですか」


「これは洗剤に期待ですね」


「いや、ないでしょ」


 人生何が起こるかわかりませんよ? と、彼女はウインクする。


「もしもらえなかったら、私があげますから、安心してください」


 金曜日に歯科行くんだけど、洗剤もらえそう。どうしたらいいんだろ、俺。



【今日のまとめ】

・1086年→院政の開始or『後拾遺和歌集』

・八代集→古今和歌集、後撰和歌集、拾遺和歌集、後拾遺和歌集、金葉和歌集、詞花しか和歌集、千載和歌集、新古今和歌集

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かわいい後輩と歩き始める、クイズ大会予選突破への道 兎谷あおい @kaidako

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