第17話

「はははは、それでどうしたんだい?」


 正三さんがそういってたこ焼きを焼いている。

 正三さんはもう70歳。

 警察はとっくに退職して今は自宅を改装しお店を作りそこで、たこ焼き屋を開いている。

 そして僕はここでバイトをしている。


「そこからはダンマリを決めた」


「ダメじゃない隼人くん。

 そんなんじゃ女の子口説けないわよ?」


 そういったのは正三さんの一人娘。

 夢叶さんだ。

 とてもきれいな女性で婦警をしつつお店を手伝っている。


「口説かないよ。

 なんていうかあの子。

 訳アリな気がするんだ」


「訳アリって?」


「アーム・ロングの手袋してたんだ」


「そうなの?でもま、まだ4月だし……」


「授業中もずっとしてたんだ」


「なにか理由があるんじゃないかな?」


「うん。だから訳アリ」


 僕がそう言うと夢叶さんが笑う。


「そっか、そうだね」


「さて隼人くん。

 たこ焼きが焼けたぞ」


 正三さんがそういってたこ焼きを焼いてくれた。


「はい」


 僕はそのたこ焼きをお客さんに持っていく。


「お兄ちゃんたこ焼ききたよ!」


「うん」


 仲のいい兄妹。

 兄の名前は充くん。

 妹の名前は真子ちゃん。


 このたこ焼きの常連客だ。


「じゃ、ごゆっくりね。

 おふたりさん」


「ありがとうございます」


 充くんが小さくうなずく。


「お兄ちゃん見て!

 色違いのイーブイが出たよ!」


 真子ちゃんが嬉しそうに笑う。

 ポケモン、まだ人気があるんだな……

 そう思うと少し心が暖かくなる。


 いろんなモノが変わる。

 でも、変わらないものがそこにある。


 なんていうかうん、そういうのも悪くない。

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