第30話
「じゃあ、生田と上京は得意先回りな。先方が、おまえたちを指名して来たけど心当たりあるか?」
は?
何処だ、今日回るのは。
「生田の写真を欲しがっていました。気分悪い会社なんですけど」
おい上京。勘弁してくれ。
「はあ? おまえたちの写真? 強要されたら断れ。うちは枕営業なんてしないから」
「了解しました、行ってきます」
「俺達が出向くなら、そういう扱いになるのか」
今更何だ。上京目当ての取引先は多いじゃないか。
「気を付けろよ、上京」
「お前だ、生田」
社内はどうも、オレが恫喝したせいで上京に一目置いて貰えたみたいだ。雑に扱われなければいい。
「得意先に行く前に、コンビニ寄れるか?」
「ああ、いいよ。またアイスコーヒーか。飽きないな」
「部屋で飲むコーヒーの方が美味しいけどね」
「まあ、上京の入れるコーヒーは美味しいよ。確かに」
いつの間にか桜が咲いて、散り始めていた。駐車場に向かう歩道に踏みしめられた花弁が点々としている。
「花見、行けなかったけど。何か見たいものとかある?」
「そうだな。まあ、部屋でゆっくりしたいかな。生田と」
「そんな安いのでいいの?」
「俺には贅沢だと言っただろ。それ以上望むものは無い」
上京はきっと、オレの気付かない未来まで見えているんだろうな。
その景色がどうか、上京に鮮やかな色彩をもたらせてくれたら。
欲を言えば、それを一緒に確かめたい。
「運転する」
「生田に任せた、よろしく」
おわり
ありがとうございました
同期とねじれて寄り戻す (BL) 柊リンゴ @hiiragirinngo
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