第6話 さばくチホー

アルパカとトキと別れたサーバルとかばんはこうざんを軽く飛び降り、次の目的地であるさばくチホーを目指す。


「そういえばジャパリバスって…」


「動かないよ。こんなとこじゃ」


「あ、やっぱりそうなんだ…」


かばんが寂しそうな顔をする。


「まあ、大丈夫だよ。わたしのジャンプがあればどこへでも行けちゃうから」


「そ、それならいいんだけど、サーバルちゃんは大丈夫なの?」


「へーきへーき。心配しなくても大丈夫だよ。じゃあさっそくさばくに行こうか!!」


「うん。お願いね」


もう恒例となったジャンプワープでこうざんの麓から一気にさばくへ行く。


「さ、ついたよかばんちゃん」


サーバルはゆっくりとかばんをさばくに下ろす。さばくチホーは景色自体は三千年前ととくに変わりはない。元々殺風景だし。しかし、砂漠特有の暑さは無くなっていた。たとえ砂漠だろうと、氷河期の影響はかなり効いているようだった。


「ここは、氷河期で来てかえっていい環境になってるね」


「その分、元々寒い夜中は想像したくもないけどね…」


かばんが身震いする。


「じゃ、さっそくスナネコに会いに行こうか」


「そうだね」


二人は砂漠の砂に足を取られながらも懸命に進む。元々景色がないだけあってかばんのショックも少ないようだ。そして二人はスナネコの家に着く。


「…お?」


入口に差し掛かると同時に中から真っ黒な瞳のスナネコが顔を出した。


「おーかばんじゃないですか。久しぶりです」


「す、スナネコさん…」


「久しぶりに会えたと思ったらこんな変わり果てちゃったさばくで申し訳ないです」


「いや、スナネコが謝ることじゃないよ」


「また会えてうれしいですよ。今ちょうどツチノコも来てますよ。どうぞ上がってください」


「て、ちょっと!わたしもいるんだよ!」


サーバルが声を荒げるが、スナネコは軽くスルー。


「ツチノコ。かばんが来ましたよ、ついでにサーバルも」


「ついでじゃないよ!!」


「ん?かばんだと?」


スナネコの家の奥からツチノコの声が響く。


「おう、久しぶりじゃねえかかばん。三千年ぶりだな」


奥から現れたツチノコも例外なく真っ黒な瞳をしていた。


「ツチノコさん…!」


「なんだよ?」


「だ、だいぶ落ち着いてますね」


「当然だろ。何年経ったと思ってんだよ。もうあのときのオレじゃねえよ」


「ウソついちゃだめですよ」


と言いながらスナネコはツチノコに素早く足払いを仕掛ける。それにまんまと引っかかったツチノコは派手にずっこける。


「アアアアア!!!」


と奇声を上げて。


「ご覧のとおり、ツチノコはいつも通りです」


「て、てめえ、せっかくかっこつけれてたのに…」


スナネコの家の地面に這いつくばりながらツチノコが悔しそうにする。


「まあせっかくですし、ツチノコの遺跡に行きますか?」


「え、いいんですか?」


「…まあ、オレはかまわねえよ。ただもう調べつくしちまったから何もないぞ。遺物も。セルリアンもな」


「それにゴールまでルートも何もかも暗記しちゃってますから、なにも面白くないですよ。だからボクが色々面白くさせるつもりですが」


「おい、だれかこいつをここに縛れ」


三千年経っても相変わらずな二人にかばんたちは思わず苦笑する。


「じゃあまあ、行きますか」


「行ってもいいが、オレに手出すんじゃねえぞ」


そして遺跡出口。


「ホントになにもしないやつがいるか!!」


遺跡の出口でツチノコが声を荒げる。


「お前な…、ここは散々オレを弄ってくるもんだろ。なーんにもしてこねえから遺跡探索シーン丸ごとカットされてんじゃねえか」


「なにいってんですか」


思いっきりメタ発言するツチノコにすっとぼけるスナネコ。


「まあ、何事もなくてよかったですよ。そこは」


「うん、まあな…。でもま、久しぶりにお前に会えてよかったよかばん」


「ええ、ボクも。久しぶりに楽しかったですよ」


ツチノコとスナネコは改めてかばんに向き合う。


「あ、ありがとうございます」


「みんな、かばんちゃんをずっと待ってたんだね」


「そらそうですよ」


「次はこはんに行くんだっけか。がんばれよ」


二人に送られながらすっかり涼しくなったさばくをあとにした。



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