【小説】『ミウ -skeleton in the closet-』を読みました。ある意味入門的な作品かも

2018年11月29日




 前回の『BEATLESS』(著者:長谷敏司)は上下巻合わせて1200ページほどある超大作であり、読み終わった後に「次は短い小説が読みたい……」と切実に思ったため、今回はページ数重視で読むものを選びました。


 タイトルは『ミウ -skeleton in the closet-』。ページ数は200少々。なのですが、中身をペラペラと捲ってみると、章と章の間といいますか、各章のタイトルレイアウトが贅沢に見開きページになっていまして、これ多分本文だけなら200ページあるかないかくらいではなかろうか。というよりそもそも書籍なら本文の前後に無駄なページ(本扉とか出版情報とか)があるので、これはいよいよ200ページ切っているのでは⁉



 というわけで、今回はページ数で気になったこの作品について。






  書籍情報



  著者:乙野 四方字


 『ミウ -skeleton in the closet-』


  講談社 講談社タイガより出版


  刊行日:2018/09/20



  あらすじ


 就職を前に何も変わらない灰色の日々。あたしは何気なく中学の卒業文集を開き、『母校のとある教室にいじめの告発ノートが隠されている』という作文を見つける。それを書いた元同級生が自殺したと知ったあたしは、その子のSNSのパスワードを暴いてログインし、その子の名でSNSを再開した。数日後、別の元同級生が謎の死を遂げる。灰色の日々に、何かが始まった――。





 この作品の作者は乙野四方字という方で、以前ここで紹介しました『僕が愛したすべての君へ』『君を愛したひとりの僕へ』を書いた作家さんです。



 以前読んだ作品がとてもよくて、また200ページという少ないページ数によって興味を持ちましたが、しかしなによりもこの作品の評判が購入のきっかけでした。




 購入前にネットで調べてみたところ……とのレビューが!!



 しかも表紙は制服姿の女の子が手をつないでいる⁉



 青春百合なら……読むしかないでしょッ!




 というわけで事前にあらすじとか全く読まずに読み始めましたが……青春百合じゃなかった……。大学卒業二十二歳の大人百合だこれ……。まあでも、これはこれでナイス百合かもしれん。





 まあ百合以前にミステリーなので、まずはミステリーの話から。



 あらすじの通り、主人公が亡き同級生のアカウントを乗っ取ってみたら周囲で不自然な出来事や事件が発生していき……と、ここだけ読むとホラーテイストですが、物語が進むにつれて情報が整理されていき、クライマックスで真実が明るみになるという、まあ王道なミステリーです。


 200ページという尺の都合もありますが、必要最低限の登場人物と、シンプルなトリックや真相により、ミステリーとしての概要だけを見ていくと実にあっさりめといいますか、薄味気味なところがあります。ただ作中には多くの伏線が登場し、またそれらの伏線を綺麗に回収していく展開になっているため、体感としては程よく濃厚でしっかり読み応えのあるストーリーだったと思います。意外と予想できなかった真実もあったりしたので、ライトミステリーとしては十分面白い内容だと感じました。






 で、本題(?)の百合についてです。



 前半部分はとくに百合要素とかなく、百合を期待して読み始めた身としては若干の肩透かし感がありました。ですが途中で今作の探偵役が登場した辺りから少しずつ百合の気配を感じてきました。ちなみに厳密には探偵役は二人で、主人公も一部分で推理していくのですが、まあ主人公ともう一人とで真実の解明をしていく中で距離が縮まっていく、みたいな感じです。主人公とは過去の出来事によって疎遠となっていまして、その分離れた関係からのスタートということもあり、実にスロースタートな百合です。



 加えてこの小説が200ページほどということもあり、百合的なオチとしては一歩踏み込んだ関係になって終わるというものです。そのため百合作品といえば百合作品ですが、しかし百合要素としては実に優しい味付けになっている印象です。


 百合作品に多い過度にスキンシップをしたり、妙にイチャイチャしたりといったシーンはありません。精々オチとして歪ながらも親密になったという程度です。それこそ以前紹介しましたガールズラブ作品『あまいゆびさき』みたいな酷い作品(百合的にいい意味で)に比べれば、実に可愛いものです。『あまいゆびさき』がフサフサの剛毛だとすれば、この作品は精々一本だけ生えた産毛程度の百合です。




 でもですね、だからこそ、のです。




 話的には二人が親密な関係になる内容で、加えて二人がいい感じに歪んだ性格をしているものですから、百合妄想をしやすい掴みやすさがあります。さらにミステリーとしてもいくらでも話が作れるような終わり方をしていますので、これシリーズものとして続編とか出てもおかしくないかと思います。女性二人のバディカップルで奇妙な出来事を推理していくシリーズ、みたいな。で、シリーズが進むにつれて徐々に濃厚になっていく百合描写……とか。


 まあ作品を読んだ感じですとシリーズ展開するほどインパクトのある内容でもありませんが、個人的にはアリかもしれないと思う気持ちもあります。


 そういう事情も含め、多分……というか絶対続編とか出ないだろうと割り切って、一読者として物語のその後を勝手に妄想して勝手に楽しみます。




 ただそもそも、百合もの(あとBLも?)って、受け手が勝手に楽しんでいる節があると認識しています。別に百合作品BL作品として売り出していない作品なのに、結果として同性カップリングしやすいが故に百合としてBLとして人気が出てしまったケースがあると思います。

 なんなら、今期見ているアニメだって、某スパイスキメてる作品とか某ゾンビアイドル作品とかは、作品そのものとしては百合売りしていないけどこっちが勝手に百合妄想して楽しんでいる部分もあります。ちなみにサガでは純愛カップリングが個人的にキテます。



 というか百合(BLも?)って、基本そういう楽しみ方ではないですかね?




 そういう方向から見るなら、この『ミウ -skeleton in the closet-』という作品は、女性二人が意味深な関係になるという結末からするに、「百合のお膳立てはしといてやったから、あとは勝手に楽しめ!」という解釈ができてしまうかと思います。


 そう解釈してしまうと、もう百合の下地ができ上っているということもあり、とても百合妄想が捗る読後となってしまうのです。



 よってこの作品は百合入門としてオススメできるかと思います。百合売りしていない作品を一から百合妄想するよりは、一歩百合に近づいた作品から気軽に楽しんでみる、みたいな感じ。




 つまりは百合に目覚めそうになるライト百合作品です!!








 ……と、ここまで百合押しのレビューをしていますが、これ別に公式で百合押ししている作品ではありませんので、ある意味(本当の意味?)では間違った楽しみ方をしているのかもしれませんがね……。まあそこは……てへぺろ(・ω<)

(もしかしたらてへぺろはもう古いかも……)




 ただ百合がどうこう以前に、ライトミステリー作品としてとても読みやすい作品です。ミステリージャンルの入門作品としてもオススメできるかと思われますので、気軽に手に取れる貴重な小説だと感じました。こういう小説たまにはいいよね。


 ミステリージャンルに挑戦してみたい方、あとついでに百合に興味がある方は是非。








 ……あまり関係ないけど、実は講談社タイガって今回が初めてでした。講談社タイガってライトミステリーのレーベルなのかしら? 自分もミステリーを読みたくなったら講談社タイガを漁ってみようと思います。








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18年8月23日公開


【小説】『僕が愛したすべての君へ』『君を愛したひとりの僕へ』を紹介。書籍だからこそできるギミックが面白い!

https://kakuyomu.jp/works/1177354054886711486/episodes/1177354054886774498






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