いろいろと考えさせられました……
人を感動させたり話の転換点を作るために、人が死ぬ設定を安易に使っている小説がとても多いと思います。それ以外の方法を誰も考えなくなってしまっては、良い小説がなくなるようで寂しいです。この小説はありふれた『感動』をよしとする風潮に一石を投じています。本当の感動とは何か、考えさせられました。そして、この話でも人が死んでいます……
万人を感動させる話にするにはどうすればいいか。そう悩む作者も多い。それに対して、真摯に向き合った作品です。
タイトルを見て勝手に思い描いていた評論チックなイメージから一転、ページを開くとそこにはちゃんとドラマがありました。この物語は僕たちの考えを否定はしません。けれども、世間でありふれている『感動』に対し、たしかな一矢報いるような物語でした。悲しみだけが感動を生むのではないと。物語を読み終えて、こんな風に自然と思いを巡らしてしまうこともまた、感動の一つの形ではないでしょうか。
読者の感動を得るために、死を書いていく。違う角度で「感動」を書いている作品でした。「感動する」というのはどういうことか、考えさせられます。そして、私はこの物語を読んで……感動しました。