第284話 和解?
カーテンを閉め切り、上映開始のベルが鳴る。
その音はもちろんメジェドが鳴らしているのだが、清宏は完全にツッコむ気力とヤル気が無くなったのか、リリスの隣でポップコーンを食べている。
先程まで清宏が監視していた水晶盤には順調に進んでいる天照の姿が映っているが、まさか神である自分の存在が忘れ去られているなどとは考えもせず、勝ち誇ったように笑いながら上を目指して快進撃を続けているようだ。
「なあ清宏よ、今から始まる映画はどんな内容なんじゃ?」
「内容はネタバレになるから言えないが、怨霊系の怖いやつだな」
「こ、怖いのか・・・」
「魔族のお前にとっちゃお仲間みたいなもんだろうが・・・」
怖い内容と聞き唾を飲むリリスを見て、清宏は呆れてため息をつく。
二人が小声で話をしていると、ついに映画が始まり皆がスクリーンに注目した。
開始からしばらくし、最前列にいた清宏が背後を振り返ると、そこには、建物に、乗り物に、そして清宏の居た世界の人々の生活に、映し出される物全てに皆が驚愕し、困惑しているのが見てとれた。
清宏はそんな仲間達の反応を見て嬉しさと可笑しさで小さく笑いスクリーンに向き直る。
「はっはっは!やっと戻って来たぞコンチクショー!これからが妾のターンじゃ・・・って、えっ?皆んなして何しとるんじゃ?」
清宏が再度映画に集中しようとしていたその時、広間の扉が豪快に開き、ほぼ半裸の天照が勝ち誇った笑顔で駆け込んできた。
天照は状況が理解出来ずに立ち尽くしていたが、皆が映画に集中していて自分に全く気付いていない事を理解し、その場に崩れ落ちる。
「い、今までの妾の苦労は何だったんじゃ・・・順調に進んでおったのが、まさか存在すら忘れ去られていたからであったとは・・・」
天照が俯き涙目になっていると、頭にタオルを被せられた。
それに気付いた天照が顔を上げると、そこには清宏が立っていた。
「ちったあ反省したかよ?」
「ほ、施しなど受けん!」
「あんまデカい声で騒ぐなよ・・・皆んな集中して観てんのに、邪魔しちゃ悪いだろ?
本当ならまだまだお仕置きしてやりたいところだが、あいつらが楽しんでるのに免じて今回はこのくらいで許してやるよ」
清宏が小さな声で話しかけると、天照は鼻を啜ってタオルで涙を拭い、恨めしげに清宏を見た。
「何故ゲームは駄目で映画は良いんじゃ・・・」
「そりゃあお前、ゲーム機なんてこっちの技術で再現出来ないからに決まってんだろ?
モニターやスピーカー、プロジェクターはまだ良い、こっちにも水晶盤みたいな便利な道具はあるし、精度は低いが遠距離通信の出来る魔道具もある・・・それに、それらに似た物なら俺にも造れるからな。
だが、ゲームは連続した静止画像を連続投影する映画とは違って、プログラミングやら色々と複雑すぎて再現が出来ないんだよ・・・現実に存在しないモニター内のキャラクターや物を、コントローラー一つで思い通りに動かすとか無理だろ実際」
「ぐぬっ!?た、確かに貴様の言う通りかもしれん・・・。
相分かった、今回は全面的に妾に非がある事を認めよう」
清宏はやっと素直に非を認めた天照に安堵のため息を漏らすと、座り込んだままの天照の手を引いて立ち上がらせた。
「なら良かったよ・・・まあ、正直俺も調子に乗っていたのは事実だから申し訳なくは思うが、まさか俺の住んでた国の主神様が引き篭もりのゲーマーとか聞いたら腹が立っちまったんだよ・・・そこは理解してくれたら助かる」
「おおぅ、本当に貴様は容赦なく抉ってくる奴じゃな・・・まあ良え、これからは妾も少しばかりは控えるとしよう。そうでなければ可愛い我が子達に愛想を尽かされてしまうかもしれんし、何より次に貴様に会った時が怖いからのう」
天照は先程拳骨を喰らった頭頂部を手の平でペシペシと軽く叩きながら苦笑する。
清宏は呆れてため息をつき、新しいタオルと浴衣を取り出し天照に優しく放り投げた。
「お前はさっさとそのずぶ濡れの身体を洗って来い」
「妾がずぶ濡れなのは全て貴様の所為なんじゃけどな・・・」
「原因を作ったのは誰だっけ?」
「行って来るのじゃ・・・」
口では敵わないと判断したのか、天照は新しいタオルと浴衣を持って風呂場に向かって歩いて行った。
ロリ魔王に召喚された俺は、トラップで魔王城への侵入者を排除します。 コロ @korotas
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