日記
康 忠功
四月七日「桜を見たとき」
ソメイヨシノの桜が、草土に乗せた石段の道の先々にまで並んでいた。それは怒涛ながら謙虚で、謙虚ながら立派だった。しかし、桜が持つ本当の美しさは、そういった大部分ではなく細部に宿っているものなのである。私は一番近くにある桜の花を見た。
一つ一つの花々は余すことなく純白で、純白の中にほのかなピンク色を染まらせている。中心にはあっさりした黄色を見せた。そして、その小ぶりな花々を、苔を生やした黒茶色の木々は静かに対照させ、より一層華やかにさせた。その姿はまるで自らに与えられた美の役割を理解しているようで、決して目立とうとせず、ひっそりと、当たり前のようにそこに佇んでいた。
枝が風にゆらゆらと揺れるたび、桜はいたいけな少女のように小さく踊った。木はそれをじっと眺めているばかりである。私もそれに同様で、じっと桜を眺めるばかりであった。
日記 康 忠功 @yasutadakatu
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