【エッセイ】フリフリコスプレ細マッチョお兄さん

バンブー

昔々、私は中古のノートパソコンを探してました

 友人と一緒に中古パソコンを買いに、関東のT都T区の電気街……電気街って言っちゃうと、もう凄く有名の場所なので分かってしまうかもしれません。

 全国のオタクが集まる電気街A原です。

 私はそこへ行きました。

 私は楽しみ過ぎて1時間早く駅に着いたので、Tという同人雑誌屋さんで時間を潰していました。


 そろそろ駅に戻ろうかと思った時に、ふと道路を挟んだ右向かいの同人ゲームショップからフリフリのコスプレをした細マッチョお兄さんが現れたのが視界に入りました。

 コスプレなんて、当時のA原ではよく見かける光景なんですけど、妙にその人が目に止まってしまい、とりあえずそのお兄さんが出てきたゲームショップを見に行きました。

 20秒もしない程度でお店の中をぐるりと見て回り、結局何も買わずにそのまま外を出ました。


 ふと、辺りを見ると車道や歩行者用道路が、人っ子一人いなくなってしまいました。

 違和感がありましたが、お腹も空いたので気にせずA原駅へ向かっていると、交差点に人だかりが……

 歩行者天国だったので、何かのゲリラライブだと思い横を通り抜けようとしました。


 しかし……人だかりの中央にはタイヤの痕が付き血を流して倒れる複数の人達が……






 そうです。

 これは2008年6月8日に起きた例のA原連続通り魔事件の現場です。

 私はその現場の数十秒後に居合わせました。

 死体を間近で見たのもその時が初めてだと思います。

 救急車も訪れておらず、心肺蘇生法を行う人達とガラケーで写真を撮る人達や、子連れでぼんやりと現場を眺めている人、携帯で泣きながら「人が轢かれたの!」とか「刺された!」と、もはや話の辻褄が合わない言葉が飛び交っており、周りは混沌としてました。


 私は何か嫌な予感がして、駅へと急いで避難することを選びました。

 とにかく身の危険を感じ、自身の命を最優先にして逃げました。


 A原駅に到着後、すぐ実家に連絡し生存確認を行いました。

 テレビで放送していないかを尋ねましたが、そんな事件やっていないとその時点では言っていたのを覚えています。

 放送されたのは、その事件から30分過ぎた辺りらしく、後で家族から連絡が来ました。




 あの時私がコスプレのお兄さんを気にならなければ、あの惨劇に巻き込まれていたかもしれません。

 本当にありがとう、名も知らないフリフリコスプレ細マッチョお兄さん。


 貴方の目を引くコスプレのお陰で、私は命を救われました。



 本当にありがとうございました。

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