信頼している作家さんの一人です。
何を信じているかというと、押羽様の文章はそのものに向き合う熱量があり、
読み手をけして裏切らないからです。
本作の中で、押羽様は「SUVIVE」を、生き残ることとは訳さず、
「もがき苦しむこと」と表現されています。
私たち物書き(作家)にとって、この表現は、そのままひとつの至言だと思います。
迷いましょう。あがきましょう。
見えないところで、それでも私たちは、物を書くのです。
自分の作品を信じられなくなりそうになったとき。
本作の中で触れられている、押羽様の「ワクワク」を思い出すのです。
進みましょう。
それが、私たちの覚悟であり、書き手としての「業」であるのですから。
プロの漫画家という道から降りて小説という新たな道へ踏み出した著者さんが、経験から得たものや飾らない心情を綴ったエッセイです。
人には転機があります。著者さんの場合、それが生きる道までもを転じることになったわけですが――人には適職と天職とがあり、どちらを選ぶかで大きくその先が変わるのだと、著者さんの経験談は教えてくれます。
そしてここが重要。これまで積んできた経験は、けして無駄なものではないのだと。
著者さんは作中で漫画家時代のお話をしておられますが、本当に希有な経験をされてきています。さらにそれが書き手の筆にどう生かされているかも透かし見えてくるのですよ。
エッセイは書かれている“人”の有り様が見えるほどおもしろいものですが、様々な経験を積んだ著者さんの視点や物事の捉え方、それによって綴られる言葉のひとつひとつ、魅せる域にまで達していて美しいのです。
花も嵐も踏み越えて、小説道行く創作者。その背中に魅せられていただけましたら!
(「カクヨム公式レビューをねらえ!」Vol.01/文=髙橋 剛)