筑前筑後が語る、魅力的な男性キャラ 5つのポイント(加筆修正版)

筑前助広

本編

 僕は、魅力的な男が好きだ。

 いや、ホモ的な意味ではなく、憧れとして好きである。

 映画や小説で、魅力的な女より男が出ている方が嬉しいし、痺れる。

 そうした僕が考える、魅力的な男とは何なのか?


「魅力的な男は、女より美しい」


 と、思う筑前が語ろうと思う。



① 哀しい男である事


 これが全ての根底にあると言っても過言ではないほど、大前提になるポイントだ。

 哀しい男。すなわち、哀しみを抱えた男である事。

 家庭的に恵まれ、仕事も順調で、悩みも全くございません! という男に、僕は惹かれない。

 ドラマも無いし、哀愁も覚えないからだ。

 ※もちろん、そこに至るまでのドラマがあるなら別


 では、この哀しみとは何なのか?


「喪失」である。


 喪失感でもいい。何か、取り返しのつかないものを失った哀しみこそが、男に深い翳りを与え魅力的にする。

 その喪失とは、色々あるだろう。

 愛する女。家族。仲間。それだけではなく、志や信念、正義でもいい。

 失うという経験、そしてそこからの苦悩や孤独が、皮肉にも男を輝かせる。


 また、その喪失感とどう向き合っているかも、大きなポイントになっている。

 前を向き、必死に足掻くのもいい。

 思い出と共に生きる道を選ぶのもいい。

 ただ、漠然と自堕落に自己哀憫に陥るのはNG。


 僕の作品にも、多くの哀しい男が登場する。


・愛する者の為に、愛する者を殺さなければなかった男。

・愛する者の為に働いたが、藩から捨て駒にされた上に、愛する者を奪われた男。

・愛する者から、愛する者を殺せと命じられた男。

・愛する者に愛する者を奪われ、そうしむけた者への復讐の為に、かつて自らが唾棄した権力を志向していく男。

・愛する者に本当の自分を打ち明けられないまま先立たれ、死なないからという理由で生きている男。


 などなど。


 こう並べてみると、僕の作品の根底には「愛」の喪失があるようです。

 これは僕の生い立ちに深い関係があるのですが、関係ないので省略。


 これを踏まえた上で、語っていこう。




② 孤独である事


 全く誰も信頼できない。親友が一人もいない。というわけではない。

 そんなコミュ障に、僕はあまり魅力を覚えません。


 この場合は、「魂の孤独」或いは、「潜在的な孤独感」と言うべきか。

 仲間はいる。だが、一人が似合ったり、ふとした横顔に、孤独感が漂ったり。

 或いは、哀しみ故に孤独を抱えていたりと、物質的な孤独に魅力を感じなくもないが、この場合は精神的な孤独と強調したい。


 北方謙三「ブラッディドール」に登場する藤木がまさにそうだ。

 信頼できる仲間はいる。だが、どうしようもない、誰にも癒しがたい孤独の中で生きている。

 それを感じるのは、彼の部屋。無機質で何もないのだ。その部屋で、一人拳銃を抱えて自分を殺しに来る刺客を待つだけの藤木は、孤独であり痺れてしまう。



「哀しい男」と「孤独」である事は僕の中で大きい。



 この二つで、浮かぶ男を紹介したい。


 笹沢佐保原作で時代劇で爆発的なヒットになった「木枯し紋次郎」だ。


 親に間引きされそうになり、それを姉に救われるという過去を持つ。

 そのトラウマから人間不信。口癖は「あっしには関わりのねぇことでござんす」で、他人を拒絶する。

 拒絶するが、姉に助けられた事もあり、人の温もりや絆も恋しくなり、人間を信じないけど僅かな絆に縋るように助けていく。


 哀しみを背負い、孤独で、かつ抗おうとする男の典型ではないだろうか。




③ 顔


 男の経験は、顔に出る。出ない人もいるが、化粧をしないだけに出やすいと僕は思っている。

 厳しい局面に多く立った男は厳しい顔をしているし、甘ちゃんな人生を送った男は、甘ったれた顔をしている。


 で、僕の趣味はというと、鋭い顔と野性味あふれる顔に弱い。


 イーサン・ホークやポール・ベタニー、バリー・ペッパー、ヴァンサン・カッセル、佐々木蔵之介や若い頃の仲代達也、近藤正臣。或いは、ブラット・ピット、レオナルド・ディカプリオ、山田孝之、若い時の三船敏郎もいい。

 孤独という点においては、マーロン・ブランドやアラン・ドロン、若い頃の三國連太郎もいい。


 小説でこうした顔の表現は難しいし、ビジュアルは読者の想像に一存しているので美醜以外は詳しく書かないのだが、書いている時は意識している。




④ こだわり


 こだわりを持っている。これも魅力的な要因の一つだ。

 例えば、葉巻はキューバ産だけと決めていたり、拳銃はマテバと決めていたり、ジントニックを作る時はソーダと同時に入れたりなど。


「キザだな!」


 と、思うかもしれないが、僕が描いているハードボイルドという流派は、キザ過ぎるぐらいでちょうどよく、それが好きだからこそ、ハードボイルドを書くし、読者もそれを選ぶのだ。




⑤ ギャップ萌え


 クールな奴が仲間を思って戦ったり、皮肉屋が実は正義感が強かったり。

 巷の女子同様、男もギャップは本当に萌えるものである。


 例えば、ドラマ「ウォーキング。デッド」で、ダリルというヤンチャな皮肉屋が、シリーズを重ねていく内に熱い奴になっていく。見かけは全然そうではないのですが、そのギャップにキュンとしてしまう。


 僕もそうした人物を登場させています。


 それは、「狼の裔~念真流血風譚~」の第三章に登場する鏑木小四郎という男。


 シニカルで冷笑家なのですが、


「武士が刀を持つ理由は、民を守る為じゃないですか」


 と、大真面目に言う。


 更に


「俺は拗ね者ですが、武士の義務からは逃げようとは思いませんよ」


 とも。


 このキャラは、民の為に主人公と共に賊徒の巣窟を襲い退治します。最後の最後まで飄々としていますが、熱い男でした。




 以上の5つが魅力的な男性キャラの要素で、あとはエピソードの積み重ねになります。

 そのエピソードが、作家の腕次第になるのですが。



 御清聴ありがとうございました!

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筑前筑後が語る、魅力的な男性キャラ 5つのポイント(加筆修正版) 筑前助広 @chikuzen

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