第7話 親父にも殴られたことないのに!

「しゃ、しゃべったー!!!!」


 犬畜生がしゃべっただと?!


 あまりの衝撃に頭が追いつかず、愕然としているとダックスフンド野郎がまた話し始めた。


「なんやお前、失礼なこと考えとらんか?

 いやてか、お前も喋っとるやん」


 え?


 いや、だって猫は喋れないよ?

 いつかの鞭使いの女王様だって話しかけたけど聞こえてなかったみたいだし…。


「犬畜生が喋るなんて…は!まさか、これは、夢?!」

「なわけあるかい!!って、誰が犬畜生やねん!」


 犬?が喋るなんてあるはずがないため夢だと考えたのだが、考えた途端犬?がツッこんできた。


 まさか、こいつエスパー…なのか?


「戦々恐々としとるとこ悪いが全部口から出とるで」


 …。


 おっと、これはわざとだ。空気を和まそうとした私なりのジョークだよ、ジョーク。ハハッ!




 気を取り直して。


 まさか喋れる動物がいたとは驚いたな。


「なんかクールに仕切り直てるとこ悪いけど、なかったことにはならんからな?」


 うるさい!お前はなんも見とらんし聞いとらんのや!喰らえ!怒りの制裁猫パンチ!


「むふぁ!いきなし何すんねん!」


 ふぅ、悪は滅びた…。


「なんなんなやお前?よぅわからんなぁ。

 てか、なーんかやりきった感出しとるとこ悪いが、お客さん来とるで?」


 お客さん?私の後ろになんかいるのか?

 夜も近いし、なんかモンスターが来たのか。

 私の後ろを取るとはやるな、だが甘い!我が栄光の右手の餌食となるが良い!

 ふんす!


 …。


 何もいなくね?


「ぎゃはははは!はっはっ、ひーっ!お、お前、ぷー!騙されてやんのぉ!!ぎゃはははは!!」


 こ、こいつぅ!もはや和解の道はなくなった!生かして帰してなるものか!

 喰らえ!ねこぱんち!


 我が怒りの鉄拳が犬畜生の顔面に炸裂した。


 勝ったな!ふっ、私に逆らうからだ!

 地獄で後悔しr


「ぬぉ!やんのかおらぁ!んなへなちょこパンチなんか効かねぇわ!」


 んぎょぉ?!


 痛?!何か知らんが思いっきり吹っ飛ばされたんだけど!HPめっちゃ削れたし!こいつ許さねぇ!

 親父にも殴られたことないのに!


 不意打ちの一撃で3割ほどの体力が一気に削られた。

 受けたダメージ量からして、恐らく丁技を使ったのだと思うが、発動の瞬間が分からなかった。

 優に1m以上吹っ飛ばされたことからかなりの威力だったことが分かる。


「軽いなぁ?まるでワタボコリみたいやのぉ?あ、毛玉埃の間違えか?ぎゃっはははは!!」


 煽りやがって犬畜生が!!この恨み、はらさでおくべきか!てかお前だって毛玉だろうが!

 うぉぉぉぉぉああああ!!!


 力では負けている可能性が高いと判断し、周りの木や岩を足場に高速移動で常に狙いを掴ませないよう動く。


 しゅ、しゅしゅ!

 見よ!しゅっ!我がしゅっ!華麗なるしゅしゅっ!立体機動術しゅっ!


「おーおー、なかなかに早いのぉ。でもそれくらいなら、」


 背中が隙だらけだぜ!


 丁技【伝説の右手】!


 もらったぁ!!!


「捉えられんこともないの」


 丁技【タックル憤怒フンド


 くるりとこちらに向き直った犬畜生の体が赤く光ると急発進し、俺の右手を迎え撃つように衝突した。


 な?!


 なかなかの速さの俺を捉えたこともそうだが、威力が完璧に乗り切る前の右手に丁技をぶつけられた事で、ダメージを相殺されてしまった。


「ほー!それなりに痛いやないか!でも…まだまだやな?」


 弾かれた体を空中で何とか立て直し、木の根に着地するも、弾かれた右手の感覚がおかしい。まるで鉄の壁を殴ったかのようだ。

 後出しの上、弾かれただけでまたもかなりの体力が持っていかれたことから、力は確実に向こうに分があると判断せざるを得ない。

 単純な力、高速移動が通用しないとなると、選ぶべき残りの手は随分と限られてくる。


 こいつ、見た目キモイくせにかなり強いぞ。


 鶏の体にダックスフンドの頭という間抜けな姿のくせにその容姿からは想像もできないくらい能力値が高い。

 いかに作戦で読み勝つが勝負の分かれ目になる。私は自分に何ができるのかとかんがえていると、


「あんさんな、キモイとか言うなよ。傷つくだろうが!そんなことよりも、あんさんーーー





 ーーーまだ進化前の一段階目やろ?」




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猫の気まぐれ ゆずスらいむ @haru_asaka

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